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トリガー 作者:城ヶ崎 勇輝

第6回   絶体絶命
 トリガーとチーは死体を踏みつけないように参議院本会議場へと続くドアを押し開けた。と同時に、向こうから銃弾の雨が…降ってこなかった。
参議院本会議場は今までの戦闘すら忘れるほど静かだった。

    〜トリガー〜 絶体絶命

「油断…するなよ」
トリガーが注意を促した。
「そんなもんわかっとるわ!」
チーがムスッと言った。
2人は壁伝いにゆっくりと進んだ。
その時、トリガーは見てしまった…。見て、しまったんです。座席の側に頭の人の頭がちょっと覗かせていたことを…。
即座にトリガーは彼の頭髪をむしるような角度から弾を発射した。
不幸なその人の髪の毛は削がれ、痛さで嘆き、暴れまわった。そして、その暴走を止めるべく隠れていた敵の一人が銃弾を発射し、更に不幸な事に彼の頭は消し飛んだ。
脳片や肉片が辺りに飛び散り、悪臭が漂う中で、戦闘が始まった。
ここでもチーがM24を乱射し、射撃ゲームの如く敵を倒していく。
普通でも紅い座席に紅さが増してきた。更にブニョブニョした肉片が張り付くオマケ付だ。
「やっと調子が出てきたようだな。チー」
トリガーは独り言を言いながら弾倉を入れ替えた。
戦いも終盤に差し掛かったとき、参議院本会議場の両側のドアからクラックエイジの援軍がやって来た。
「アカンで、こりゃアカン!」
2人は急いで座席と座席の間に隠れた。しかし、これも時間の問題だ。
トリガーは急いで司令官に連絡を入れた。
「応答せよ!司令官!」
“ん?君も一緒に紅茶を飲みたいのかね?”
司令官の落ち着いた声がホンワカと聞こえる。
「あいにく私はコーヒーはなんです…って、何くつろいでるんですか!絶体絶命です!逃げ道を!」
“オウオウ…こりゃ全ての扉を防がれたな?ならばこれしか方法はない。城崎のいる部屋へ押し入ろう!”
狭い中、チーは少しでも会話の時間を延ばすために命を顧みずにM24を連射している。
「城崎の…部屋。すぐ側なんですか?」
トリガーは目を丸くした。出口が全部塞がれているのだから…この会議場の中に城崎がいるとでも言うのか?
“いいか。これは一か八かだ。そして、もし失敗したら日本は終わる。成功すれば、日本の未来に光が差し込む”
「プ、プレッシャーかけないで早く方法を!」
“オウオウ…すまんかった。もう時間がないんだったな。良いか、本会議場の議長が座る場所が奥にあるだろ?そこの下に隠し通路があるんだ。そこに行け。健闘を祈る。司令官終わり”
「了解。トリガー終わり」
トリガーは一息ついてチーに今までのことを伝えた。
「なるほどな。じゃあはよ行かんと」
トリガーは身を出し、芋が転がるように階段を転がった。そんな中でも拳銃を発砲し、カンマ単位の標的を撃ち抜く。
チーも同様に、階段の一番下…つまり、議長席の手前まで転がった。
クラックエイジの集団は妙に焦りだし、攻撃を強めた。つまり、城崎のいる部屋がすぐ近くにあると言う事だ。
トリガーは立ち上がるとすぐに議長席の足元に隠れた。そして、城崎の部屋への入口を探した。
チーはトリガーの援護のため、改造M24スナイパーライフルを撃ちまくった。
「ああ〜…これじゃ全然間にあわへん!しゃあない…最後の手段、やりはろか!」
チーはベルトに下げられた手榴弾の安全装置を抜いた。そして、押し寄せるクラックエイジ小隊に向かって思い切り投げつけた。
敵小隊は急停止し、引き返そうとしたが人間急には止まらない、止められない。哀れにも何十人もの人が犠牲となった。
手榴弾の爆発は真っ赤だった。炎の赤ではなく人の血の赤だ。周囲20mに血と肉片と体液と悪臭が飛び散る。
「あったぞ」
トリガーはヒソヒソと言った。
議長席足元のカーペットの下に丸い永遠に続きそうな鉄でできた穴があった。
「じゃあはよ行こ!」
チーが急かした。
トリガーは生唾を飲み、一気に落ちた。
後ろの方でチーが落ちてきた。そして更に上で銃声が聞こえた。上から2人を撃ち殺そうとしているのだ。だが、その銃弾はどこも当たることなく、闇に消え去った。
その間にも、2人は滑り台のようにこの大穴を滑り落ちていった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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