プルルルル…プルルルル…ガチャ 「はい、神谷です」 ここは戦場から遠く離れた神谷鳥牙の家。神谷たみは電子音のなる受話器をとった。
〜トリガー〜 連絡
“こちら、シューティング隊司令官。宮本正(みやもとまさし)だ。トリガーの妻であるな?” 「え?なに…隊?あの…どちら様ですか?トリガーって…誰ですか?」 たみは誰かがいきなりよくわからないことを言い出したので困惑した。 “シューティング隊…エリート中のエリートが集う極秘任務を主とする自衛隊のことである。そして、私はそのシューティング隊の司令官、宮本だ。トリガーと言うのは…。あなたの夫、神谷鳥牙のニックネーム、またの名をワーキングネーム、シューティング隊が任務中によういる名前だ” 司令官…そう、電話の主はシューティング隊司令官なのだ。いったいたみに何のようだろうか。 「嘘です。あの人はサラリーマンです。人間違いじゃないですか?それか、シューティング隊自体聞いたことありませんし、あなたが嘘をついているか…」 たみがまさかと言う口調で言った。 “残念ながら、全て真なのだ。給料が思った以上に多いと思わなかったかね?” 「嘘です…あの人が嘘をつくわけがありません」 たみはふと今朝の事を思い出した。今朝は妙にソワソワしてたな…。 “神谷鳥牙は嘘をつかなければならないのだよ。そうしないと、あなたも娘も生きていけなくなる” 司令官はたみにシューティング隊の全容を明らかにした。 「…なぜ、そんなことを私に話されるんですか?」 シューティング隊を知ったたみは尋ねた。 “それは…もうシューティング隊は今回の任務で解散するからだ。今、シューティング隊はクラックエイジと国会で対決している。そして、生存者は2人だ” 司令官の声色には悔しさと憎しみが込められていた。 たみは言葉を失った。 “その生存者の一人に、あなたの夫がいる。もう一人は彼の相棒だ” 「………」 “できれば…娘を連れて国会に来て欲しいのだ。私に作戦がある。私の最後の作戦が。……協力してくれるか?” たみはずっと黙ってから言った。 「…はい」 その声は呆然としていた。 “ありがとう。では、お願いする” 司令官はゆっくりと電話を切った。 「ママ…どうしたの?」 ひょっこりと鳥牙とたみの娘、なみがやってきた。 「なみ、東京に行きたい?」 たみは作り笑いをしていった。 「うん!行きたい行きたい!それでね、東京タワー見に行きたい!」 なみは無邪気に騒いだ。 「その前に、ママ、行きたいところがあるんだけど…パパに会えるんだけど、そこも行く?」 「パパ?パパが仕事してるのに会えるの?大丈夫なの?」 なみが不思議そうに首を傾ける。 「平気よ。パパの会社のとっても偉い人から電話が来て、パパの仕事を見てほしいって言ってきたのよ」 たみはそう言った。 「パパ、クラックエイジと戦ってるのかな?」 なみが無邪気に言った。あまりにも無邪気すぎてたみは驚いた。 もしかしたらこの子はずっと前からあの人の本当の職業を知ってたのかしら…。 たみは一瞬そう思い、なみをつれて外に出て行った。
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