俺はそのあと、少し、その暗い空間を見つめていた。 マキはどこに消えてしまったのだろう。 あの女はなんなのだろう。 暗い空間の中に一つだけマキの部屋で見つけた光のようなものが薄暗く光っている。 おそらくそこは別の世界に繋がる空間なのだろう。二度と元の世界に帰れない。 「・・・こんなことやってても意味ないか。」 俺はその場所に近づいた。 一歩。一歩。踏みしめて。 元の世界に帰れない場所へ。 マキの居る場所へ。 そこは遠くから見たら丸い円のような光っている物体だったが、近くから見ると、光り輝く扉だった。 暖かく光っているのになぜか怖かった。 「よし。」 俺は扉を開け、その世界の中へ。進んだ。
-風の世界- 「ん?」 気がつくと俺は草原に横たわっていた。 「ここはどこだろう。」 近くに村らしきものがあったので行ってみた。 「なんだよここ・・」 そこは廃墟だった。というより、ついさっきまで人が居たのに、いきなり消えて無くなってしまったかのようだった。 「誰も居ねぇ・・。」 人は居ないが、鳥や家畜等は何もなかったように生活をしている。草木や植物も水をたっぷりたくわえている。 「おや?」 誰かがそう言って後ろからやってきた。 「おまえさん、どこから来なさった?」 そう言われても別の世界から来たとは言いにくい。ケイがだまっていると、老人は、 「まぁ、ここにいてもしょうがない。村へ案内するから来なさい。」 「はぁ・・。」 ケイが連れて行かれた所はさっきのような場所だったが、人は居た。 老人が1つの家の中へ入っていくのを見て、ケイも続いて中に入った。 家の中には、猫1匹と、老人の家族らしい人たちが居た。 「お帰り。・・あれ?その人は?」 中に居た、俺くらいの少女が言った。 「あの村で見つけてね。住民とは考えられないからどこかから迷子になったんだろう。それか家出してきたかね。」 「ふーん。で?」 「「で?」って聞かれてもしょうがないじゃない。リリ。」 台所に居たお母さんらしき人が手を拭きながらこっちに来た。 「ちょっと聞きたいことがあるんで、部屋に連れて行くぞ。」 老人がそう言うと、 「はいはい。」 と、そのお母さんらしき人が、 「どうぞ。こちらですよ。」 と、俺を手招きして部屋に入れてくれた。 「ではごゆっくり。」 そう言うと、パタンと扉が閉まった。 「リリが申し訳ないのぅ。」 まず老人が言った。 「はぁ・・。」 「それで、あんたはどこから来なさったのかい。」 俺は隠しても隠しきれないからいままでの事をすべて打ち明けた。 驚くことに老人は目も丸くしないままゆっくりと俺の話を聞いていた。 俺の話が終わると、老人が話し始めた。 「その、マキという少女なのだがね、あの村を滅ぼしたのはその少女なのだよ。」 え?と思った。老人は話し続けた。 「信じがたいかもしれんが、あの少女はもう2つ、村を消している。」 「え?でも、マキが?なぜ?」 「そこなのだがね。滅ぼされた村のどちらもの入り口にこれがはられていた。」 老人は机の引き出しから小さな紙を取り出すと、広げて見せた。 「我 ら は 祈 る こ の 世 界 が 滅 び る 事 を 」 (・・え?) 「私がこの紙を見つけたときは愕然としたよ。いつかはこの村もああなる。なにも悪いことをしていない人たちがなにもなく痛みも感じず消えていくのだ。」 「え・・でも、」 話そうとしたが、老人がさえぎった。 「そこでだ。」 「はぁ。」 「私ももう若くはない。それに、あんたさんは妹を捜しているのだろう?」 「はい・・。」 「私の孫のリリと、あんたと、2人でこれを止めてくれないか。と・・」 「えっ???」 聞こうとしたそのとき、いきなり扉が開いて、老人の孫、リリという少女がでできた。 「おじいちゃん?!なんで?私がいかなきゃいけないの?」 「リリ、おちつけ。話を・・」 「おちついてなんていられないわよ!」 最悪の状況になった。この状況がもっと悪く続かないようにしたいと思った。 「おじいちゃん!」
|
|