なんだか久し振りのような気がする通学路。そして、昨日会ったはずのガルド。 久々に一緒に登校。なんだか、昨日の事があったからかとても一緒にいづらい。それに、朝、気が付いてみると、ガルドが座って寝ている事に気づいたのだ。起こすのにもいろいろと大変だったりもした。 最初は軽く肩を揺すった。それではさすがにおきなく、ガルドの名前をガルドの耳元で叫んだ。これで戦うという魔族のものの態度でいいのだろうか。という深い疑問を自分に問いながらも、他の方法を考えた。 次に行った行動が、軽くだが、頭を叩くという行動だった。それでは、ピクリともしなかった。なぜこんなにやってもというほど叩いてもいた。忍耐強いのか、ただ寝たらおきない質がすごいだけなのか。 なかなかおきないので、自分の枕を持ち、思いっきりウリャウリャと叩きまくったりもした。起きやしない。大きなため息と共に、朝の疲れも飛んで言ってほしいほどだった。無論、そんな事では飛んでいってはくれなかったりもする。
最終手段にでよう。
その時に思ってしまったことだった。 先ずは、髪の毛を引張る。頭を叩いてもおきなかったくらいだ。髪を引っ張ったところでおきないというのも、いちお予想済みだった。けれど、けれど悲しいものもあったりもした。 それでもおきないことを確認して、風月は、近くにあった辞書の角で頭を最初は軽く叩いた。 実際風月が思っているところで、これで起きて欲しいというのが願望だった。これ以上を考えると、のこぎりを持ってこなくちゃいけないかな??という考えもあった。もちろんそこまで行きたくない。 悲しかった。それだけでおきてくれなかったことが悲しかった。
軽くやるからいけないんだ。
風月は、悪の心を出した。 思いっきり辞書をもっていうるほうの腕を振り上げ、ありったけのチカラをこめて振り下ろす。そしてその下には、ガルドの頭があった。運よく角は当たらなかった。 「いった・・」 その小さな声でおきたと思い、ふっと息を出した。 けれど、そのときだった。風月は、自分の気持に疑問を持った。
(いった・・・?まってそれだけで終わるの??こんなに力入れて?!)
それもそれで悲しかった。
「いってぇ〜!!!!」
家が吹き飛びそうなほど、大きな声がでる事を予想していたからだ。 ガルドは、ゆっくりと風月のほうを見た。 「あれ??俺・・ねてたんだ・・」 「っていうか頭痛くないの??」 聞きたかった。普通の人間なら死ぬほど痛いはず。
人間じゃないじゃん!!!
風月は、自分に突っ込みを入れた。 そうだった。もうすでに忘れていたが、人間じゃないのだ。魔人だ。魔族だ。殺し屋だ。いや、殺し屋の方がまだ可愛いかもしれない。 「頭??少し痛いかな??って・・俺寝起き悪いから。っていうか寝たらおきないから」 と、軽く流しそうな言葉で言った。 そんな事が朝からおきてしまうと、朝から疲れるのも当たり前でもある。だからこそ、なんだか、ガルドと一緒に登校するのは、いづらい。
クラス内でも、なんら変わって居ないと思っている。それは、ガルドだけだった。風月については、かなり変わっていると。 女子からの目。
きっとガルドと登校してきたのを、きっちりチェックしたのだろう。だからだろうか、かなりみんなの視線が怖い。 けれど、前の事件で、呼ばれることは無いだろうと、風月は暫く安心する事にした。 けれど、心の底から安心していいか。という疑問からは解き放たれてはなかった。
そんな日の放課後。いつもどおりガルドは保健室へと向かった。放課後は、部活と帰宅で、保健室に生徒が来る確率はかなり低い。だから羽を伸ばすには丁度良い場所だった。もちろん風月もつれてだった。 「しっつれいしまぁす」 「心に無いこと言わなくてもいいよー」 入ったとたん、パソコンに向っている先生が言ってきた。確かに心には思っていないが、それが礼儀というものだろう。そう思っていた。 「ならこれから言わないよー」 口調を軽く真似してガルドは言った。いいながらも、保健室のベッドにうつぶせになった。 「こらこらぁ〜悪い子ちゃんがまねするよぉ〜」 「なら悪い子ちゃんができない事するよぉ〜」 そう言って、大きな翼と、大きな爪。異様な瞳を出した。忘れてはならない魔族の残り物。魔族は元々この体制のほうが本当に楽で、魔界の方にいったらこの姿を見ずにはいられない。 見ないですむのは、引きこもりの奴だろう。けれど、結局は自分のものを見てしまう破目になる。 「いつみても派手ね」 「派手なのか??」 先生がそういうと、ガルドはその言葉に疑問を持つ。 風月は、ガルドの隣のベッドに座った。 「ガルドって日本語覚えたの??それとも元々日本語なの??」 「何いってんのこのこ勉強したのよ」 笑いながら言う先生のほうを見る。へぇ〜そうなんだぁ〜というように、頭を頷かせた。頷きながらも、ガルドの顔を見ると、いつの間にか枕で顔を隠していた。けれど、出した耳は隠せれない。
(耳までまっかっか)
心の中で軽く笑うが、それを表情に出さなかった。 「けど、よくそんなんでこれたね。結構すらすら話せるし」 「・・・」 ガルドは何も言わなくなってしまった。 「あのヒューン様に硬く教え込まれたからね。今では無くなった詰め込み学って言うの??ヒューンの・・って考えると、かなり鬼で寒気がするのよねぇ〜」 身体を小刻みに震えだす先生。確かに風月の頭の上には想像がつく。悪魔を通り越して鬼と化したヒューンを。
それから数分した。数分すると、少し楽になったガルドの顔が出て来た。そして、ツバサをしまい・・すべてを閉まった。そして、もう皆が下校する時間。ガルドと風月は一緒に帰った。 下校中。ガルドが不思議な事をいわれた。 「なんかつけられてるような気がしないか??っていうか見られてるって言うか」 「え・・・」 風月は止まり、周りを見回した。特に何もない。とは言い切れない。ここは人通りが多く。すぐそこはゲーセンだ。見られていてもおかしくない。 「風月」 後ろから大きな声がした。そして聞きなれた声。フッと振り返ると、そこにはやはりいた。 「雷・・・」 「だれだ・・?」 耳元でガルドが言ってきた。 「従兄妹だよ。」 「そいつ誰だよ」 雷は、垂直に聞いてきた。もちろんそれが当たり間だろう。風月のことが好きな雷にとって、他の男がいたら気に食わないものだろう。 「同じクラスのガルド君。駄目だった??」 「どういう関係だよ。同じクラスってだけじゃないだろ??」 雷が疑い深く聞いてきた。そのときガルドは、魔力を使う。けれど、その魔力は壮大なものではない。よく、団体活動として暗殺として使うことがまれにあることだ。 (風月・・)
(え・・・ガルド??)
気付いてくれた。風月の頭脳中に、ガルドの意識を無理くりいれた。よく、臨機応変時、対応として使うときが多い。 (こいつもしかしてお前の事が好きなんじゃないのか??)
(よくお解かりで)
「おい?」 雷が、何も言わないガルドたちを不思議に思った。少し二人は焦った感じに返事をした。 (いやなのか?こいつ)
(恋愛感情じゃ見れないの)
(俺が彼氏役してやろうか?)
(そうしてくれると助かるわ)
「あんた名前は・・?」 ガルドが雷に向って怒り口調と睨みでいった。 「雷」 「んじゃ雷って言わせて貰うけど、お前なんで風月につっかかる?もしかして風月のことがすきなのか??」 「は??お前に何が関係すんだよ」
(荒っぽくさせてもらうぜ)
ガルドは、少しむかついたのか、雷の胸倉をつかみあげた。 「好きなんだろ??お前に風月はあわねぇよ。へんに突っかかると俺が黙っていねぇぜ」 違う意味で気を緩ませてしまったガルドは、言葉を言ってから自分の瞳に気付いた。思いっきり素を出してしまったのだ。けれど、過ぎたことを焦ると余計怪しまれる。 すると、ガルドの胸倉もつかまれた。 「それが何かお前に悪さでもするって言うのか??逆にきくけどお前は俺の何??そして風月の何??」 「俺はお前の何でもねぇよ。関係あるのは風月だ。俺は風月の彼氏。お前に太刀打ちできる術(すべ)は無いんだよ」 そう言って、ガルドは雷を投げ捨てるように押しはなした。そして、ゆっくり風月の肩を叩き、家に帰っていった。 軽く振り返ったときの雷の姿は、下を向いていて、とても傷ついているのか、太刀打ちする術を考えているのか。何か思いに思っている形だった。
「大丈夫か??」 ガルドが風月に聞いた。少し下を向いている様子だったから、結構不安になっていた。 「うん。なんか少しスッキリして嬉しいの」 なんとなく雰囲気で今解ったかもしれない。少しスッキリした顔でガルドは、前を歩いて風月の家の前で止まった。 「ねぇ、ガルド??今のお礼したいんだ。御茶していきなよ・・っていうかそれくらいしか出来ないんだけどさ」 「お言葉に甘えて。」
変わった。 最初の風月の印象が、大分変わった。それもそれで、なにか悲しい気もする。けれど、かなり嬉しい。それが俺の役目だから。 けれど、その役目の事は風月には言って居ない。言ったらどうなるか。ナンテは考えて居ない。だいたいの事は気付いているから。だからこそ、今はいえない。笑わすまでは。そして、ガルドも変わりたい。という気持があるからだ。
のんびりとお茶をしていた。 するとそのときだった。鳴り響く呼び鈴が鳴る。ガルドと風月は目を合わせた。 「何かいやだな」 風月がそういいながら、恐る恐る開ける扉。 「雷・・」 下を向き、前髪や髪で顔がきちんと見えなかった。 雷は何も言わないで中に入っていった。すると、堂々と座っているガルドの隣にたった。顔は動かさずに、目だけを雷のほうにやる。 「約束をすれ」 強気な声で言った。二人の瞳は、二人でしかわからなかった。風月の位置からは、必ず見えない位置にいる。 「何を」 「風月を守れと」 それだけを言うと、風月には何も言わずに出て行った。 強く叩かれた扉。その悲しい音が鳴り響く。
少しの時が流れた。しんみりとした空気の中、風月は閉ざされた扉を見つめただけだった。 「なに・・言われた?」 「さぁなんだろうね」 風月がガルドのほうを見てきくと、スッと笑いガルドが答えた。 「なんか楽しそう」 「さぁ?あ・・一つ忠告しておくけど、これから多分あいつ・・雷だっけ??よくここ来るようになるぞ」 そういうと、スッと立ち上がった。 「?」 風月は、何を言って、何をしでかすのかがわからなかった。べつに雷ガ来る事に関しては、悪いことではないと思っている。 「じゃまたあしたな」 カバンを方に掛け、風月に背を向けて顔を少しだけこっとに向かせた。前髪でおくの左目が見えない。そういった後に、すぐに前を向いて家を出て行った。 風月はまだ扉の方を見ている。 誰もいなくなったたった一人しか居なくなったこの家に。たった一人残された。 この悲しさは風月にはわかりすぎている。 風月の頬に、一滴のしずくが通る。
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