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笑わない 笑いたい! 作者:

第8回   しずく

 なんだか久し振りのような気がする通学路。そして、昨日会ったはずのガルド。
 久々に一緒に登校。なんだか、昨日の事があったからかとても一緒にいづらい。それに、朝、気が付いてみると、ガルドが座って寝ている事に気づいたのだ。起こすのにもいろいろと大変だったりもした。
 最初は軽く肩を揺すった。それではさすがにおきなく、ガルドの名前をガルドの耳元で叫んだ。これで戦うという魔族のものの態度でいいのだろうか。という深い疑問を自分に問いながらも、他の方法を考えた。
 次に行った行動が、軽くだが、頭を叩くという行動だった。それでは、ピクリともしなかった。なぜこんなにやってもというほど叩いてもいた。忍耐強いのか、ただ寝たらおきない質がすごいだけなのか。
 なかなかおきないので、自分の枕を持ち、思いっきりウリャウリャと叩きまくったりもした。起きやしない。大きなため息と共に、朝の疲れも飛んで言ってほしいほどだった。無論、そんな事では飛んでいってはくれなかったりもする。

 最終手段にでよう。

 その時に思ってしまったことだった。
 先ずは、髪の毛を引張る。頭を叩いてもおきなかったくらいだ。髪を引っ張ったところでおきないというのも、いちお予想済みだった。けれど、けれど悲しいものもあったりもした。
 それでもおきないことを確認して、風月は、近くにあった辞書の角で頭を最初は軽く叩いた。
 実際風月が思っているところで、これで起きて欲しいというのが願望だった。これ以上を考えると、のこぎりを持ってこなくちゃいけないかな??という考えもあった。もちろんそこまで行きたくない。
 悲しかった。それだけでおきてくれなかったことが悲しかった。

 軽くやるからいけないんだ。

 風月は、悪の心を出した。
 思いっきり辞書をもっていうるほうの腕を振り上げ、ありったけのチカラをこめて振り下ろす。そしてその下には、ガルドの頭があった。運よく角は当たらなかった。
 「いった・・」
 その小さな声でおきたと思い、ふっと息を出した。
 けれど、そのときだった。風月は、自分の気持に疑問を持った。

 (いった・・・?まってそれだけで終わるの??こんなに力入れて?!)

 それもそれで悲しかった。

 「いってぇ〜!!!!」

 家が吹き飛びそうなほど、大きな声がでる事を予想していたからだ。
 ガルドは、ゆっくりと風月のほうを見た。
 「あれ??俺・・ねてたんだ・・」
 「っていうか頭痛くないの??」 
 聞きたかった。普通の人間なら死ぬほど痛いはず。

 人間じゃないじゃん!!!

 風月は、自分に突っ込みを入れた。
 そうだった。もうすでに忘れていたが、人間じゃないのだ。魔人だ。魔族だ。殺し屋だ。いや、殺し屋の方がまだ可愛いかもしれない。
 「頭??少し痛いかな??って・・俺寝起き悪いから。っていうか寝たらおきないから」
 と、軽く流しそうな言葉で言った。
 そんな事が朝からおきてしまうと、朝から疲れるのも当たり前でもある。だからこそ、なんだか、ガルドと一緒に登校するのは、いづらい。

 クラス内でも、なんら変わって居ないと思っている。それは、ガルドだけだった。風月については、かなり変わっていると。
 
 女子からの目。

 きっとガルドと登校してきたのを、きっちりチェックしたのだろう。だからだろうか、かなりみんなの視線が怖い。
 けれど、前の事件で、呼ばれることは無いだろうと、風月は暫く安心する事にした。 けれど、心の底から安心していいか。という疑問からは解き放たれてはなかった。

 そんな日の放課後。いつもどおりガルドは保健室へと向かった。放課後は、部活と帰宅で、保健室に生徒が来る確率はかなり低い。だから羽を伸ばすには丁度良い場所だった。もちろん風月もつれてだった。
 「しっつれいしまぁす」
 「心に無いこと言わなくてもいいよー」
 入ったとたん、パソコンに向っている先生が言ってきた。確かに心には思っていないが、それが礼儀というものだろう。そう思っていた。
 「ならこれから言わないよー」
 口調を軽く真似してガルドは言った。いいながらも、保健室のベッドにうつぶせになった。
 「こらこらぁ〜悪い子ちゃんがまねするよぉ〜」
 「なら悪い子ちゃんができない事するよぉ〜」
 そう言って、大きな翼と、大きな爪。異様な瞳を出した。忘れてはならない魔族の残り物。魔族は元々この体制のほうが本当に楽で、魔界の方にいったらこの姿を見ずにはいられない。
 見ないですむのは、引きこもりの奴だろう。けれど、結局は自分のものを見てしまう破目になる。
 「いつみても派手ね」
 「派手なのか??」
 先生がそういうと、ガルドはその言葉に疑問を持つ。
 風月は、ガルドの隣のベッドに座った。
 「ガルドって日本語覚えたの??それとも元々日本語なの??」
 「何いってんのこのこ勉強したのよ」
 笑いながら言う先生のほうを見る。へぇ〜そうなんだぁ〜というように、頭を頷かせた。頷きながらも、ガルドの顔を見ると、いつの間にか枕で顔を隠していた。けれど、出した耳は隠せれない。

 (耳までまっかっか)

 心の中で軽く笑うが、それを表情に出さなかった。
 「けど、よくそんなんでこれたね。結構すらすら話せるし」
 「・・・」
 ガルドは何も言わなくなってしまった。
 「あのヒューン様に硬く教え込まれたからね。今では無くなった詰め込み学って言うの??ヒューンの・・って考えると、かなり鬼で寒気がするのよねぇ〜」
 身体を小刻みに震えだす先生。確かに風月の頭の上には想像がつく。悪魔を通り越して鬼と化したヒューンを。


 それから数分した。数分すると、少し楽になったガルドの顔が出て来た。そして、ツバサをしまい・・すべてを閉まった。そして、もう皆が下校する時間。ガルドと風月は一緒に帰った。
 下校中。ガルドが不思議な事をいわれた。
 「なんかつけられてるような気がしないか??っていうか見られてるって言うか」 
 「え・・・」
 風月は止まり、周りを見回した。特に何もない。とは言い切れない。ここは人通りが多く。すぐそこはゲーセンだ。見られていてもおかしくない。
 「風月」
 後ろから大きな声がした。そして聞きなれた声。フッと振り返ると、そこにはやはりいた。
 「雷・・・」
 「だれだ・・?」
 耳元でガルドが言ってきた。
 「従兄妹だよ。」
 「そいつ誰だよ」
 雷は、垂直に聞いてきた。もちろんそれが当たり間だろう。風月のことが好きな雷にとって、他の男がいたら気に食わないものだろう。
 「同じクラスのガルド君。駄目だった??」
 「どういう関係だよ。同じクラスってだけじゃないだろ??」
 雷が疑い深く聞いてきた。そのときガルドは、魔力を使う。けれど、その魔力は壮大なものではない。よく、団体活動として暗殺として使うことがまれにあることだ。
 
(風月・・)

(え・・・ガルド??)

 気付いてくれた。風月の頭脳中に、ガルドの意識を無理くりいれた。よく、臨機応変時、対応として使うときが多い。
 
(こいつもしかしてお前の事が好きなんじゃないのか??)

(よくお解かりで)

 「おい?」
 雷が、何も言わないガルドたちを不思議に思った。少し二人は焦った感じに返事をした。
 
(いやなのか?こいつ)

(恋愛感情じゃ見れないの)

(俺が彼氏役してやろうか?)

(そうしてくれると助かるわ)

 「あんた名前は・・?」
 ガルドが雷に向って怒り口調と睨みでいった。
 「雷」
 「んじゃ雷って言わせて貰うけど、お前なんで風月につっかかる?もしかして風月のことがすきなのか??」
 「は??お前に何が関係すんだよ」

(荒っぽくさせてもらうぜ)

 ガルドは、少しむかついたのか、雷の胸倉をつかみあげた。
 「好きなんだろ??お前に風月はあわねぇよ。へんに突っかかると俺が黙っていねぇぜ」
 違う意味で気を緩ませてしまったガルドは、言葉を言ってから自分の瞳に気付いた。思いっきり素を出してしまったのだ。けれど、過ぎたことを焦ると余計怪しまれる。
すると、ガルドの胸倉もつかまれた。
 「それが何かお前に悪さでもするって言うのか??逆にきくけどお前は俺の何??そして風月の何??」
 「俺はお前の何でもねぇよ。関係あるのは風月だ。俺は風月の彼氏。お前に太刀打ちできる術(すべ)は無いんだよ」
 そう言って、ガルドは雷を投げ捨てるように押しはなした。そして、ゆっくり風月の肩を叩き、家に帰っていった。
 軽く振り返ったときの雷の姿は、下を向いていて、とても傷ついているのか、太刀打ちする術を考えているのか。何か思いに思っている形だった。

 「大丈夫か??」
 ガルドが風月に聞いた。少し下を向いている様子だったから、結構不安になっていた。
 「うん。なんか少しスッキリして嬉しいの」
 なんとなく雰囲気で今解ったかもしれない。少しスッキリした顔でガルドは、前を歩いて風月の家の前で止まった。
 「ねぇ、ガルド??今のお礼したいんだ。御茶していきなよ・・っていうかそれくらいしか出来ないんだけどさ」
 「お言葉に甘えて。」

 変わった。
 最初の風月の印象が、大分変わった。それもそれで、なにか悲しい気もする。けれど、かなり嬉しい。それが俺の役目だから。
 けれど、その役目の事は風月には言って居ない。言ったらどうなるか。ナンテは考えて居ない。だいたいの事は気付いているから。だからこそ、今はいえない。笑わすまでは。そして、ガルドも変わりたい。という気持があるからだ。

 のんびりとお茶をしていた。
 するとそのときだった。鳴り響く呼び鈴が鳴る。ガルドと風月は目を合わせた。
 「何かいやだな」
 風月がそういいながら、恐る恐る開ける扉。
 「雷・・」
 下を向き、前髪や髪で顔がきちんと見えなかった。
 雷は何も言わないで中に入っていった。すると、堂々と座っているガルドの隣にたった。顔は動かさずに、目だけを雷のほうにやる。
 「約束をすれ」
 強気な声で言った。二人の瞳は、二人でしかわからなかった。風月の位置からは、必ず見えない位置にいる。
 「何を」
 「風月を守れと」
 それだけを言うと、風月には何も言わずに出て行った。
 強く叩かれた扉。その悲しい音が鳴り響く。

 少しの時が流れた。しんみりとした空気の中、風月は閉ざされた扉を見つめただけだった。
 「なに・・言われた?」
 「さぁなんだろうね」
 風月がガルドのほうを見てきくと、スッと笑いガルドが答えた。
 「なんか楽しそう」
 「さぁ?あ・・一つ忠告しておくけど、これから多分あいつ・・雷だっけ??よくここ来るようになるぞ」
 そういうと、スッと立ち上がった。
 「?」
 風月は、何を言って、何をしでかすのかがわからなかった。べつに雷ガ来る事に関しては、悪いことではないと思っている。
 「じゃまたあしたな」
 カバンを方に掛け、風月に背を向けて顔を少しだけこっとに向かせた。前髪でおくの左目が見えない。そういった後に、すぐに前を向いて家を出て行った。
 風月はまだ扉の方を見ている。
 誰もいなくなったたった一人しか居なくなったこの家に。たった一人残された。
 この悲しさは風月にはわかりすぎている。
 風月の頬に、一滴のしずくが通る。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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