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笑わない 笑いたい! 作者:

第7回   介護

 ある日の放課後。
 ガルドたちは、一緒に下校していた。いろんな店によって見たりと、てきとうに歩いて帰るのが日課になってしまい、そこらのカップルみたいに見える行動かもしれない。
 その日、ガルドは、何か違う視線が感じられた。いつもは、何か柔らかい感じでしかなかったのだが、何か凝視されているような気がした。
 悪いことはこの人間界では無いと思っているから、そんな事があっても、あまり深く考えたり追求し無かったりしていた。けれど、何かが引っかかるような気がして、ガルドはフッと振り向いた。
 人がいる気配はある。けれど、こちらを向いてこない。という事は、何か隠れたいという気持があるのだろうか。
 「どうしたの??」
 何か不思議に感じているガルドに気付いたのか、風月が聞いてきた。確かに人間は、聞きたくなることだろう。
 「いや・・誰かに見られてる気がして」
 「ふぅ〜ん。誰だろう・・まだ私にイチャモンつけるひとでもいるのだろうかねぇ?」
 「そんな奴がいたら俺が本気で殴っちゃうよ?」
 「ありゃ気をつけさせなきゃね」
 と笑いながら、家に帰っていった。

 「あいつ・・」
 影で食いしばる歯のきしむ音。その音だけが、ガルドの耳に入っていた。
 「お帰りぃ〜雷ィ〜報酬はあったか??」
 「全然。」
 もうすでに使われていない外れにある、暗い小屋の中。何台かのバイクに囲まれ、何人かが、タバコを吸って座っていた。その中にその男は入っていった。
 「どうしたぁ??いつもの雷らしくないじゃないか?」
 ある奴はそういう。何のことを言っているのかわからず「悪いな報酬無しで」と答えた。けれど、違う答えが返ってきた。
 「そうじゃねぇよ。いつもみたいな雷の顔じゃないっていうんだよ悪いもんでも見たんじゃね?」
 「エ??べつにそんなのないよ?」
 確かに悪いものは見てしまったかもしれない。

 
 その日の夜だった。
 風月は、いつもどおり晩御飯を食べていた。そのとき、ある呼び鈴が鳴った。珍しくなるものだったから、少し身体をビクつかせた。
 「誰・・?」
 ドアを開けないで、ソッといった。
 「俺。雷」
 その声と名前をきくと、ソッとドアを開けた。
 「ヤァ久し振り。げんきにしてたか?」
 優しくそういいながら、中に入って言った。
 風月は、お茶を雷に出す。
 「タバコ・・」
 「あぁ。さっき吸ってるやつのところにいたからな。そんなに匂うか?」
 そういいながら、自分の上着のにおいをかいでいた。
 「吸ってるの??」
 「たまにだけど最近は全然だな。そこまで吸いたいとは思わない」
 「そう。」
 「けど、今日一緒に歩いてた奴誰??」 
 「友達」
 「“男”じゃないの??」
 「ちがう」
 「外人じゃなかった?」
 「外人・・なのかな?」
 「何だよどういう関係だよ」
 ドンドン口調が怒り出すことに、風月は気付いたが、どうしようとも思わなかった。
 「雷に何が関係あるの!」
 どうしようとも思わなかった理由。それは、風月も怒りたくなってきていたからだった。
 「俺はお前の事心配なんだよ!小さい頃から見てたけど、姉妹いないからあんまり周りになれないっていうのもわかってた。だから逆に不安だったり心配だったりするんだよ。」
 「従兄妹なだけのあなたに何が関係あるの?!」
 「お前がすきなんだよ!」
 雷が、大きな声で言うと、そのまま家を出て行ってしまった。そのときの風月は、固まった状態だった。
 雷と風月は、小さい頃から何かと一緒だった。けれど、学校は風月が転校する前の学校は、同じだったが、今は今のとおり違った。だからこそ、「不安」という言葉がこみ上げていたのだ。
 風月の父さんの妹の息子が雷。という、従兄妹にあたる関係である。だから、そういう考えはしていなかった。だからこそ、驚いた。そんな感情が風月の心の中に今ある。
 今助けを呼びたいと思っている人の顔を思い浮かべた。もちろんガルドしか思い出せない。友達なんていない。何時も一人で居ることを作っていた分、ガルドの存在が大きかった。
 「はぁ〜・・」
 軽くため息をした後、オデコに手をやった。
 
(少し熱出て来たかな)

 あるわけのない事を、軽く思ったまま、お茶を入れていた器を片付けた。

 次の日。風邪は馬鹿には出来ないものだ。
 風月は、深々とそう思った。
 ボケェとした目を開け、薄らな視力で体温計を見た。最初は、こりゃまた視力が悪くなったな。ナンテことを考えていたが、よくよく見てみるのと、自分の辛さをフィットさせると、どう思う。何もかもこれは風邪ではないか。
 今日父は、出張で暫く帰ってこない。ということは、一人でどうにかしなければならなかった。そんなときだった。滅多に鳴らない携帯が鳴った。
 『今日どうした?』
 たった一言だったけれど、その人からメェルが来たということで嬉しかった。
 『熱でた。けどガルドどうしたの??急に何で知ってる?学校休んだ事』
 メェル打っているときに気が付いた。今が何時かという事を。学校の時間に表せば、昼休みの時間だった。
 こんなにも寝ていたんだ。
 いつの間にかおきた。という感じだったから、何時に起きたかも見ていなかった。わかったのは、いつもよりも日が刺さっていたという事だった。
 そんな事を考えていると、またメェルが返ってきた。
 『時間的にだよ。今学校サボって行くよそっち。ドウセ親居ないんだろ??』
 馬鹿じゃないの??そう思っているうちに、そうそう付いてしまったのか、呼び鈴が鳴った。
 「ガルド??」
 ゆっくり扉を開けると、少し疲れモードのガルドが立っていた。
 「早かったね。って言うか本当に来たんだ」
 「あぁ看病する人居ないだろ??それに風月のことだ。ドウセ今頃起きたんだろ??朝ご飯食べないでどうにかしようとするのが風月っぽいし」
 すべて当たっている。朝ご飯を食べないでそのまま寝ていようかとも思って意図頃だった。
 中に入れ、すぐにお茶を出そうとした。すると、ソファーに近づくと、すぐにガルドがポンッと風月の肩を叩いた。すると、弱っている風月は、軽くソファーに横になってしまう。
 「少し休んでろ」
 少し悲しげな目と、怒っていそうな目は、風月に発言権はないと自覚した。確かに結構辛かったりもしていた。だからこそ、休みたくもなっていた。
 「勝手に台所借りるぞ」
 言う前からすでに台所を使っていた。なのに聞いてくるとは思わなかった。反射的にうんと頷いた。だが、その位置からは見えないだろうという位置にいた。
 バタンという、冷蔵庫が開く音がした。冷蔵庫の音は、何年も聞いているから、何処を開けたのかすぐにわかる。一番上のところはバタン。真ん中はバタン。一番下は、ガーバタン。最初のガーは、下にあるローラーが回る音だった。
 一番上と真ん中はわからんだろう。だが、この二つはアクセントが違った。
 一番上のアクセントは『タ』。真ん中のアクセントは、難しいだろうが、『ン』だった。今開けられていたところは、『タ』がアクセントだったので、一番上が開けられた。
 その後に、氷を滑らす音がしたので、きっと凍り枕か、氷袋か作るのだろう。今は、それしか思いつかなかった。
 そして、水を何かの盥(たらい)に入れる音がした。
 「なぁ、頭にのせたいんだけどさタオルどれ使えばいい??」
 何をする気だろうか。あまり風邪など引かないから、何をする気かが思いつかない。それに、相手は皆お忘れだろうが、魔族だ。魔族なりの仕方があるのかもしれない。
 そんな事を今考えていても仕方がないと、あまり使っていなかったタオルを部屋から持ってきた。
 「これ・・」
 「あんがと」
 そう言って、ソファーに戻される。と思ったが、違う言葉が出て来た。
 「部屋に行ってて。ソファーよりも寝心地いいだろうし」
 うんと頷き、部屋に戻っていった。だが、戻ってから気付いたのだが、これでもマンションとか、アパートかではない。きちんとした二階建てだった。風月の部屋は、階段を上って一番奥にある部屋。ガルドが解るのだろうか。という疑問も持っていた。

 暫くして、ゆっくりと階段を上る音がした。そして、それからどうするのだろうかと思っていたが、何も迷う足音はしなかった。ただ、まっすぐこの部屋を目指してきた。 そして、軽くノックをして入ってきた。
 「具合はどう??」
 「ん〜」
 「あまり変わりないか。ホレッこれオデコにつけとけ」
 暗くてあまり解らなかったが、持ってきたのは、盥に氷が入っており、その中に水が盥の半分程度入っているくらいだった。それに入っていたタオルをゆっくり持ち上げ、盥の上でギュウッと力強く絞った。
 「あぁ。なるほど」
 心の中で、大きく納得した。
 全くタオルをそう使うという事は、全く想像していなかった。よくよく考えてみれば、ありがちなものだった。
 「ほれ上向け上」
 けれど、こう考えてみると、なんとなくガルドらしくない。というのが、今の素直な風月の気持であった。なぜ学校をサボってまできたのか。
 「ねぇガルド??」
 「ン??何だ??」
 ベッドによしかかって、床にゆっくりと座っていたガルドに話しかけた。
 「何で学校サボってまできてくれたの??」
 「言っただろ??心配だって。どうせお前一人にしてたらまた無理したりするだろうなって思ってな。」
 その言葉だけで嬉しかった。まだ長くいろいろ言っていたのは覚えている。けれど、途中で寝てしまったのか、何を言っていたのかは覚えていなかった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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