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笑わない 笑いたい! 作者:

第5回   怒鳴り込み??
   
              「ふざけないで」

 廊下を歩いてるときだった。ガルドの耳に、ふと声が入ってしまった。本当はそれほど大きな声ではないだろうけれど、ガルドの耳には必ず入る。
 こっそり近くまで行った。すると、そこは、三階と四階の中間のところ。踊り場というのだろうか。そこで女子たちに囲まれている奴を見た。
 「風月・・」
 風月だった。ボケーッとしているのか、何も聞いていないのだろうかという顔をしていた。あまり女子の攻撃に答えては居ない。
 丁度ガルドは、四階にいた。屋上から出ようとしていたときだった。まだ昼休みはたくさん有り余っている。
 「ガルド様に近づこうなんてあんたには早いのよ」
 そういうかのように、睨みつける女子軍団。軍団といっても、今のところは三人しかないかった。
 
(女子ってこえぇのな。けど俺が喧嘩の原因かよ)

 どうするかなぁとかおもいながら、眺める事にしていた。
 ガルドということは、無理にガルドが入ったら、逆に後からが怖い気がしていた。それに、風月もどれくらい耐えてくるのかも気になった。
 「何とか言ったら??」
 「言っていいの??なら言わせて貰うけどね、何であなたたちにそんな事言われなきゃいけないの??私はあなたたちに何かケンカ売るようなことした??」
 「したわよ!ガルド様に近づこうナンテ・・
 「あなた達にガルドを締め上げる権利はないんじゃない??」
 強気で言ったその言葉は、ガルドに嬉しい言葉だった。嬉しい気持ちで聞いていたガルドは、次の行動に目を開かせた。
              
                パシーン・・・

 大きく鳴り響く風月の頬の音。
 女軍団たちのリーダーと思われる人が、風月の頬を引っ叩いたのだ。
 「ガルド様を呼び捨てにするなんて・・
 「だからなんであなたにそんな事を言われなければならないの??私がガルドのことをなんと呼ぼうが勝手でしょ!?自分たちに近づく勇気がないだけなために、私に当たらなくたっていいでしょ??あなた達に良心という心はないのですか??なくてもいい・・けれど今時分がしなければならないことがこれなのかは、私にはわからない!」
 強気だった。強気の心は、女軍団の怒りに油を注いでいた。

                パシーン

 二発目・・けれど、その音は、風月の頬じゃなかった。叩いた本人たちも驚き、風月までもが驚いた。
 「が・・ガルド様!」
 そう。叩いたのはガルドの頬。
 女軍団の手が震えだす。
 「何??三発目は来ないの??なぁんだつまらないの・・お前たちが俺のことをなんと言おうが勝手だ。だがな、それだけのために周りの奴らに妨害を加えるのはどうかと思うが??特にこの女に手ぇ出すとはいい度胸してるな・・殴られたくなければ早く消え去れ」
 叩かれたままの、そっぽ向いた方向。長めの前髪で目がほとんど見えていない。けれど、片方の目が女どものほうを見ている。その目が人間の目ではない。魔界の目であった。
 その目に気付いたのか、言葉に怖がったのか、女たちは震えながら走ってどこかへ消えて行った。
 運よくガルドは、我を忘れていなかった。我を忘れているガルドは、これだけではすまない。
 「ガルド・・大丈夫??」
 ガルドの前髪をソッと退け、腫れた頬に手をソッと当てた。
 「赤くなって・・」
 「風月こそ・・」
 「大丈夫よ私はなれてるから。」
 「俺だって慣れてるさ。これは痛くない・・けど、ごめんな??なんか俺間違えたかな??」
 「ばか。間違えてないよ」
 ガルドの頭を、コツンと叩いた。
 「それに助けてくれたでしょ??それでいいさ。」
 フッと柔らかい表情になった風月の顔を見ると、頬だけじゃなく、耳までも赤くなってしまったガルド。それを少しでも隠そうと、ソッと下を向いた。
 「けど、どうやってここまで来たの??」
 下を向いたまま、四階のほうに指差した。
 「どうやって??」
 「ジャンプした」
 「ここまで??」
 普通の人間では無理だ。少しの加減で、翼を出し、即座にしまう。そういう加減が必要なことだった。
 そんな事を考えていると、風月は走って、ガルドが元いた場所にたった。
 「ここから??」
 ガルドはうんと頷く。
 すると、軽く助走を付け、ジャンプした。
 「バカッ!」

 「いててて・・無理じゃん・・届かない・・」
 「簡単に出来てたまるか」
 ガルドは、即座に助けようと風月の下に入った。そのまま風月はガルドの上に座ったままだった。
 「あのな??もうそろそろどけてくれる気はない??」
 「おしおき。飛べなかったから・・なぁんちゃって。」
 そういいながら、ゆっくりとガルドの上から降りた。
 「じゃ・・ちょいと俺・・」
 そう言って、階段を降りていった。風月はゆっくりと付いていった。
 もちろんガルドが走っているので、追いつけるわけがないが、一回まで降りて言った。足音でだいたい解る。
 曲がった方を見ると、ガルドはいなかったが、保健室の扉が閉まるのがわかった。保健室の中から声がする。

 「先生〜ヤバイ・・」
 「どうしたの??ガルド君・・」
 「俺・・」
 「っていうか顔赤いけど??もしかして好きな子出来ちゃったの??」
 「バッ!!」
 馬鹿といおうとした。だが、恥ずかしくていえなかったし、本当のことを言われて驚いたりもする。
 「悪いかよ・・」
 「なんもぉ〜?ただ・・魔族も恋するのねぇ〜って思ってさぁ〜」
 「しますよ」
 「どう??少し休んだら??」
 「そうさせていただきます」
 ガルドは、ゆっくりとチカラを抜いていった。すると、鋭い翼。鋭い爪。鋭い牙が出てくる。鋭い瞳はあまり目立たなかった。
 風月は話の内容じゃ、なんもわからなかった。ゆっくりと扉を開く。
 「だれ・・だ・・」
 ガルドが、勢いよく風月のほうを見た。いきなりすぎて、気も抜いていたし、ツバサ等を即座にしまうことは出来なかった。
 「ガルド??」
 「ふ・・・・つき・・」
 ばれた!ばれた勢いで、すべて思っていることが言葉としてでてこなかった。けれど、次の瞬間。ガルドの肩の力はスッと抜けていった。 
 「いいな」
 「は??」
 意外な風月の言葉で、保健の先生の麻美先生も、ガルドもなんだかガックリしていた。風月は、いちお中に入って扉を閉めた。そして、ゆっくりとガルドのほうに近づいていった。
 「ガルド・・あんた何??この翼・・作り物じゃないよね・・」
 ゆっくりと翼に触る。感触といい、今までに触ったことのないものだった。
 「あ・・あぁ・」
 「ってことは魔族か何か??」
 それには答える事ができなかった。
 「教えてよ。ずるいじゃないあなたこんな翼。いいなぁ〜。けど私は要らないなぁ〜」
 「何で??」
 「だって・・ツバサを持っている人に何処か連れて行かれたいじゃない??自分でもっていたら、何かつまらない」
 意外な反応ばかりされて、ガルドのほうも、どういうことを思えばいいかわからなかった。けれど、風月の微笑んでいる顔を、頭に焼き付けておいた。
 「どうしたの??触っちゃまずかった??」
 「いいや・・嬉しくて」
 「何が??」
 「そういう顔見れて」
 赤面する風月。なんだか、その言い方にすごく照れているのだ。
 「うるさいな!ばらされたくないんでしょ??」
 「う・・うん。」
 「だったらちゃんと鍵閉めとかなきゃだめでしょ!反射的に閉めちゃったけどいいの??」
 よくよく見てみれば、カギが閉まっていることに今気付いた。
 「準備の良い事」
 「それが当たり前よ」
 「あのぉ〜ラブラブ中のところ悪いけど・・・私いちお彼氏いないんでぇ〜こういうことされてもぉ〜なんだか嫌味放たれてるような気がするんですよぉ〜」
 少しムスッとした顔で棒読みらしく言った。
 「いるでしょ?」
 ガルドがするりと言うと、するりと返してきた。
 「えぇ・・って風月ちゃんの前で言わないでよぉ〜!」
 焦ったように言ってきた。その顔もなんだか可愛くて、ヒューンが惚れるのも仕方がないような気もしてきていた。
 「いいじゃないですか。そんなパッとした男じゃないんですし!」
 「そんな事ないわよぉ〜もう男らしくって。今日も彼迎えに来てくれるのぉ〜」
 もう目がハートではないだろうか。
 「先生の彼氏ってどんな人?」
 「どんな人だと思う??」
 先生ではなく、ガルドが言った。
 「ん〜細かい事気にしないで、大雑把な人かなぁ〜?」
 「ん〜どれにも当てはまってないねぇ〜」
 「何いってるのぉ〜当たってるわよぉ〜風月ちゃん♪」
 「全然。あぁだこうだうるさいしさぁ〜朝の起こし方荒っぽいし!俺に対して上気取りしてるし」
 「上でしょ?」
 風月がソッといった。そういわれるとたしかにそうだが・・とひるんでしまう。
 「けど、どういう関係なの??先生の彼氏とガルドって・・」
 「簡単に言えば父親だよ。けど先生が母さんじゃないからな」
 「うん。こんな子供要らないわ」
 「ヒドッ」
 「どういう意味??」  
 「だから俺の母さんが死んでて、それで父さんというかお目付け役の彼女が先生ってことさ」
 「金持ち」
 「違うワイ!」
 風月の意外な毒舌(?)に弱まるガルド。ここまで言い合えるのはここの保健室だけかもしれない。
 そんな話を出来るのも、風月の性格のおかげだと思う。だから、ガルドは風月にお礼をしなければならない。


 「どうでした??学校は」
 「なぁ、風月にばれた。」
 「え?」
 「それにばれた事をお前の彼女も知ってる」
 「か・・彼女だなんて・・」
 かなり恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
 「って・・ばれた?!どうするんですか・・全く」
 「大丈夫だよ。ばらさない。」
 「そんな事がいえるんですか・・」
 「じゃあ何で先生には記憶隠蔽しないんだよ」
 「そ・・れは・・」
 「信じてるからだろ??」
 ヒューンは一本取られたと、軽くため息をついた。それに、ヒューンには嬉しかったのだ。こうやって、人を信じたりしてくれることが、昔のガルドではありえないことでもあったのだ。
 「それと同じもんだよだいたい」
 「恋したな」
 「あぁ。わかったか?」
 フッと笑った後、ゆっくり階段を登って行った。

 なんだか久し振りに感じる自分の布団。
 魔界の布団なんかよりも、断然やわらかく、気持がよかった。
 窓を開けて、微かに入ってくる風に当たっていた。すると、なんだかうとうとしてきてしまって、そのままガルドは寝てしまった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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