「ホラッおきろガルド!」 ゆっくり目を開くと、いつもの部屋の天井だった。 朝日がまぶしく俺を指す。そして、それの影になるかのように、ヒューンが顔を出してきた。 「あ・・さ?」 「そうですよ!早くしないと学校に遅れますよ??」
(さっきの口の聞き方はなんだったんだろう・・)
ヒューンが敬語を俺に使わないという事は、何かかなり疲れていたということなのだろうか。ガルドは、ずっと考えていた。 「ガルド様??どうかなされました??具合でも・・・」 「大丈夫大丈夫。」 そういいながら服を着替える。もう制服を着るのは慣れたが、何か着心地がいいものではない。 「それとガルド様??上着を脱いでくれたからまだ良かったものの、昨日ワイシャツの背中に二個穴があったんですけど・・」 「許してくださいよぉ〜翼を出した時にたまたま・・」 「たまたまねぇ〜・・・」 「女の人の前でワイシャツを脱げと??」 「仕方がないですねぇ〜」 負けたというように、ゆっくりとテーブルに弁当を置いて部屋を出て行った。 ガルドは、服を着替え終わると、かばんに弁当を入れて、支度をした。
「とうとう今日だな」 急に後ろから薺が言ってきた。 「な・・にが??」 かなり背中がビクついた。鳥肌までもが、かなり大きく出てしまった。 「転校生だよ」 「あぁ。俺が当たっていれば四万手にはいる。」 「何で俺とあいつっていつも息が合うんだろうなぁ〜。」 シクシクと、泣きまねをする。 「オイガルド!!」 「誰だ貴様!!」 声で前のガキだとわかった。ガルドは、即座にそう怒鳴りながら振り向いた。 やはりこの前のガキだった。内心笑いたくなった。自分で言ったあの言葉が、どうも笑いの坪に入りやすいらしい。 「何だ貴様か」 「貴様とは何だ!!」 「はぁ〜話が通じないとすぐこれだ。だからガキは嫌いだ。殺されたくなければ即座に俺の目の前から消える事だな」 馬鹿にするかのように軽く笑いながらガルドは言った。すると、強気な瞳でガルドのことを見てきた。 「お前に俺を殺せるか!!」 その言葉で、ガルドのスイッチが入った。 ガキにかなり近づき、薺に見えないように爪を出す。人間がここまで伸ばしていたらパキッと軽く行く。だが、ガルドは別物だった。内側を舐められるくらい伸びている爪を見て、ガキは少しビクついていた。 その人差し指の爪をガルドは、ゆっくりとガキの首に爪先をペタリとつけた。 「ウッ・・」 ガキの震えは、殺したいという感情にスイッチを押していた。 ガキの額から流れ出てくる汗が、ガルドの爪に当たった。それでわれに返ったのか、爪を戻し、体を起こした。そしてにやりと笑って学校に向かっていった。 「何をしたんだ??」 「べつに何も??」 不気味な笑いで、ガルドは薺に言った。
「転校生を・・・」 先生が、そんなことをいいながら教壇の前にたった。てきとうに紹介すると、女の子が出て来た。 (これで四万獲得)
そんな事を考えながら、空の向こうを見ていた。 「なら・・席はガルドの隣・・そこの空いてる席へ」 先生は、ガルドの席の近くを指差した。それに気付いてガルドはそっちを見る。すると、隣の席にその女の子が座った。 何の紹介も聞いてなかったガルドは、そいつの方を見ていった。 「名前は??」 「風月」 「ガルドだヨロシク」 顔を見たが、すごく普通の女だ。しか考えられなかった。特に変わったこともなさそう。ただなにか、悲しそうだ。 (転校してきたんだもんなあたりまえだな)
新しい友達が出来るか?とかが不安なのだろう。それが人間というものだろうから。
「髪・・綺麗だね」 屋上に風月がいた。ガルドは、隠れて付いていったのだ。見つからないようなところに隠れていった。 風月の髪は、だいたいヒジ辺り。その毛先は、綺麗に内向きになっていた。 「誰?」 「だれってひどいな・・」 ゆっくり顔を出す。ガルドは、少し興味があったのだ。 「ガルド・・外人??ハーフ??」 「ん〜外人にあたるのかな・・」 「ハーフじゃないの??」 「ハーフって??」 ガルドには知らない言葉。外人は習ったけれど、ハーフは習わなかった。 「外人と日本人の間に生まれた子。それがハーフ」 「ん〜多分ハーフではない。」 「あいまい」 「まぁね。髪いつから伸ばしてるの??」 いつの間にやら、ガルドは風月の隣にソッと座っていた。それに気付かれたのか、少し引く風月。 「母さんがいなくなってから」 「居ないの??」 「あぁ。だから二人暮らし・・父さんと。まぁ、居ないようなもんだけど」 ため息をつきながら、空の向こうを見るような眼で言っていた。 「いないようなもんって?」 「父さん仕事好きで、朝とかに帰ってくるから会わないし。」 「へぇ〜大変なんだな」 「さぁ?」 「前の学校は面白かった?」 「べつに」 「楽しくなかったの??」 「べつに」 「なんだよべつにって・・・どうだったんだよ」 「だってべつに楽しくなかったし。」 「ふぅ〜ん。」 「そっちは?外国で学校言ってればよかったのに何でいちいち日本になんて来たの??」 「知りたい??」 「べつに」 「つれないなぁ〜。外国からこっちに来たのは、親の都合。元々は父さんこっちの人だったから。日本人ってわけじゃないけど、外国の両親が日本に来て生んで、そのままこっちで大人になるまでいたの。んで、母さんが・・・」 「母さんが??」 「母さんが・・・外人。」 「何で止めたのよ」 「なんとなく。母さんの顔しらないし」 「エ??」 「死んだ」 「マジで??」 驚いたような顔。驚いたときの顔の印象が強かったかもしれない。なんだか、少し明るくて、何かを見つけてしまったかのような顔している。 「何??」 「いや・・なんか嬉しかったり」 「へぇ〜そっかぁ〜けど。俺なんか風月のこともっと知りたいから。」 ゆっくり立ち上がってガルドは言った。 「だから。これからもヨロシク」 ガルドはそう言ってすぐに屋上から出て行った。
それから何日も経っている。 相変わらずガルドは、日常茶飯事になるような勢いで、風月と話す。そして、日常茶飯事になってしまった、保健室にも必ず寄るようになっていた。
|
|