楽しみは後に取っておくものだろう。 いつだかそんな事を言われた覚えがあった。
ジリジリジリジリジリジリジリジリ・・・・・・
にごり音が部屋中に響き渡るのと同時に、ガルドの中にも響き渡って行った。
ポチッ
なっているへんてこな機械が、プチッと時計の針が止まったかのように止まってしまった。それに気付いたからか、ゆっくりと重いまぶたを開けた。全開には開かなかったが、鉛筆の芯は入るだろう。 うつぶせになっていた身体を横に動かしたとき、スルッと肩にかかっていた布団は、ゆっくりとずり落ちた。暫くすると、肩が寒くなってくる。 「ガルド様っ早く起きてくださらないと、朝ごはんが冷めてしまいますよ??」 (あさ・・?おれ・・え??何時寝たんだろう・・)
寝た事なんて、当の昔のような気がする。 永久の眠りから覚めた感じだった。けれど、思い出せるのは、魔法陣の中に立っていた事だけ。 「ガルド様??」 ポケーッとしている半目状態のガルドの肩を揺すってやった。 「ってガルド様??肩が冷えてますよ??そんなにここ寒いですか??」 心配するところが、何か違う気がするが、ハッと元に戻って、ヒューンはガルドの肩を大きく揺らした。 「あれ??おれ・・何時寝た??」 「魔法陣で、魔法が身体にいきわたったとき、耐え切れなかったのか、気を失われてしまったのですよ。」 失敗したかのように、頭をかいていた。 「そっか・・おれって結構脆い??」 「脆すぎです。けれど、まだ発達しきれていないのです身体が。」 「そっか・・・」 「まぁ、それを強くしようという修行でここに着たんですけどね・・」 「え・・・?あぁ〜!!!!!!!!!!!」 かなり忘れてました。というかのように、勢い欲ベッドから飛び降りた。 「やっと思い出されました??本当の目的が・・ホラッ早くこの制服に着替えてください??」 そういいながら、後ろから制服を出した。 「俺・・どこ良くの??」 「学校です。」 「月光??」 「違います。確かに読み方はだいたい同じですけど、学校です。」 「ガッコウ??」 「漢字変換してください」 「・・・学校!!!??」 「だからそう言ってるでしょ・・」
「なぁにが『ホラッ何事も体験。というかこれが使命なんですよ??いってらっしゃぁ〜い』だ・・アホか」 言った後、なんだか自分で恥ずかしくなってしまった。なぜなら、ヒューンのまねをしたはずが、かなり似てしまったからだ。軽く赤面してしまった。 「よぉ〜ガルド」 左後ろからポンッと左肩を叩かれた。反射的に、左ヒジをそいつの腹部に思いっきりエンピを食らわせてしまった。 ハッとして、振り向いたら、腹を抱えている男がいた。 「さ・・・さすがガルド・・いつものパンチ食らったぜ・・」 「パンチじゃない・・エンピって言うか・・・・ほんと大丈夫か?」 「何のこれしき!!これがないと、一日が始まらん!!」
(オイオイオイオイヒューン。俺の設定どうなってるんだ??)
自分に聞いても、結局出てくるわけがなかった。 記憶は、ヒューンが操作しているため、まだその設定は知らなかった。 次は、また後ろから声がした。 「おい!ガルド=ルベニスト!!」 ガルドは、スッと後ろを向いた。 「あいつまたかよ・・」 ボソッとさっきの腹を殴ってしまった男が言った。 見えた先には、小さくこっちに殺気こめている奴だった。 「お前・・絶対俺お前に勝つからな!!」 よくよく見てみると、背中には仲良しランドセルがあった。
(なんだよ。ガキかよ)
さすがのガルドでも、基本的なことはいろいろと組み込まされたから、これでも普通の勉強は出来る。 「いくぞ」 「あぁ・・」 ガルドは、さっさと歩いていった。
「良かったのか??」 教室に入ってから、薺(なずな)という奴は、言ってきた。さっき腹部を殴ってしまった人だ。薺にそういわれてしまった。 「あぁ・・いいと思う。っていうか実際なんだったんだろあれ・・」 「酷いなぁ〜。忘れたの??一回あいつに喧嘩売られたんだよ」 「ソウだっけ??」
ある日の事だった。 雨の中、傘を忘れてびしょ濡れで帰り道を歩いていたときだった。 薺とガルドは、少しふざけながら歩いていると、近くを歩いていたチビにぶつかってしまった。そのとき、びしょ濡れの水溜りに転がしてしまった。 「あ・・悪い」 ガルドはそのとき、大人しく謝ったが、手を差し伸べた手を勢い欲そのガキは振り払った。そのときのガキの瞳。それは、何かを軽蔑するような目だった。 「大丈夫か??」 薺はどっちに言ったのかわからないが、とりあえず言った。すると、意外な言葉を聞いた。 「あぁ大丈夫。」 薺に向かっては、このガキ、いい顔をしやがる。
(俺になにかあるのか?)
そう思っているうちに、そのガキは走ってどこかへ行ってしまった。
「そうだっけって・・忘れるお前もお前だがな。」 「けど、それって喧嘩売られたってことになるのか?」 「まぁ、ソウ深く考えるな」 さわやかな笑顔は、なんだか悩んでるときにはとても気持がいい。今まで、こういう奴らとつるんでいたと思うと、なぜだか、嬉しくなってきていた。
「さて・・私も一仕事しなきゃイケないかな??」 年よりかのように、エプロンをつけ、メガネをかけながら縫い物をしていた。しか も、ロッキングチェアーに座っている。ゆっくり揺らしながらも、立ち上がった。縫い物をしていたものを、近くの台に置き、メガネをエプロンのポケットに入れて、エプロンを脱ぐ。 軽く髪にくしを通し、ニッと笑顔を見せた。多分、側から見てば、かなり異様な光景。というか、ナルシスト??と聞きたくなるようだった。ホストで働いてそうな顔つきだった。 「さぁって。いつもの仕事に行きますか。」 さすがにお金を稼がないで、この世の橋を渡る事なんてできなかった。ヒューンは、スーツに着替え、綺麗な靴を履き、家を出て行った。
「やぁヒューンさん。」 「お久し振りですヒューンさん」 大きな黒く、怪しく光るホスト倶楽部。その中に入っただけで、みんなの人気者になってしまえるヒューンだった。 「やぁ。皆。今日もヨロシク」 ニッコリ笑顔で女を落とすのは、何かの罰を受けさせたくなる。と、言いそうな人はガルドだろう。ガルドにこの仕事をしているところ見られたらと考えるヒューン。考えたら少しもしないで鳥肌が立つ。笑われる可能性大。それに、馬鹿にする可能性までもが大。
「はぁ〜・・・」 大きなため息と共に、少々重いと感じられる扉を開いた。 「めしぃ〜」 そういいながら靴を脱ぐ。けれど、何の返答も来ない。それに、リビングからの電気が刺さってきて居ない。昨日は、テレビの音も合ったのに。 「仕事かな??」 ゆっくりとリビングの扉を開けた。居ないというのを再び確認すると、自分の部屋へと戻っていった。 「けど仕事って言ったって、どんな仕事してるんだ??まさかサラリーマン??」 少しのいい例えとして出たつもりだが、ヒューンにそんな地味な仕事が出来るはずがない。と、自分に言い聞かせ、カバンをベッドの上に投げた。 居るかもしれないという少ない確率の中で、ガルドはヒューンの部屋の扉まで言ってみた。 コンコン・・・
ゆっくりノックしても、何の返事もない。というより、電気をつけている気配すらない。もっと言えば、自分以外の気配が全く感じられない。 もう一回大きなため息をすると、リビングに戻り、何か適当に暗い中を歩き回り、冷蔵庫からウィンナーを取り出した。ウィンナーはなんとなく、しょんぼりしているかのように、フニュッとした感覚だった。
|
|