気が付いたら、もうすでに夜だった。 風景は何も変わっていない。 少し薄明るかったのが、シャットダウンされただけだった。それだけの事。なのになぜか、見捨てられたような暗さ。閉じ込められた器の中で、呻き悲しむのではなく、ぼんやりと開くはずもない、閉まりきった天井を見つめているだけ。 「風月??」 ハッと目が覚めた。寝ていたわけではないが、何かの空想から目覚めた感じだった。 ふと見ると、目の前にガルドが立っていた。 「どうした??」 「何でいるの??」 呼んだ覚えも、あがらせた覚えも無いのに、なぜかいるはずの無いガルドがいた。最初は、幻覚を見ているのだろうかと思っていたが、そうではないみたいだった。 「何でって。何度も呼び鈴鳴らしてんのにでなくて、ドア開けたら簡単に開いたから。そして何より風月の靴があったから」 「それ私じゃない人の家行って見なさい??泥棒呼ばわりよ??」 「ドロボウ?」 「そうでした。ガルドはここの人間ではないからわからなかったのねドロボウが。」 ガルドは、激しく縦に首を振った。 「辞書を引きなさい・・ では説明しよう。泥坊とかきます。泥は隠していた悪事。といい、坊はその人のことを言います。 それを組み合わせ泥坊。悪事を、隠して行う人のことを泥坊といいます。」 すると、そこでガルドは、恐る恐る聞いてきた。 「ねぇ、」 「何?」 「ジショって何??」 「辞書を引け!!!」 「ジショって何!!」
そんなこんなで、説明は面倒だという風にまとめさせた。 「で??何用でこっちまで来たの??」 「何用って・・別にそんな深い意味があるわけじゃないんだけどな??なんか最近ここら何か悪い事有りそうな気がして結界張りに来た。」 「結界ィ??そんなたいそうなことできんの??」 「俺を舐めないで」 そういいながら、ガルドは風月の部屋を出て行く。おいていかれないように、風月も急いで付いていった。 「人の家勝手に来て何処行くつもりよ」 多少不機嫌が入っている風月。そんな事をお構い無しに、何処に向かっているのかもわからない動きをするガルド。 「ここらへんかな」 茶色のフローリングの上にしゃがみこんだ。 「何するの?」 「結界を家の中心だと思われるところから張るの。」 「へぇ〜」 すると、床に両手をあて、ゆっくりと目を閉じる。 (おかしな気)
風月は、何か感じていた。何かが内側から外側へ走るのが。
ガルドは、心の中でつぶやく。 『疾風の風。遠くの声。響く太陽。この地を守る土・気・空・風。このガルドの名に気付くが良い』
なにこれ
それしか今は言うことができなかった。 内側から大きな風が外側に流れ込むような、強い突風がくる。けれど、物は動かず髪も靡かず。微かな風でいられたかのような風。 「今のが・・結界??」 その言葉に、ガルドは内心かなり驚いた。それを表情に出すまいと心の中で決め付けた。 「結界の隙間が通っただけさ。」 焦る言葉を、ゆっくり落ち着かせる。 「それじゃ・・俺はこれしに来ただけだから。」 礒で帰ろうと、階段を降りていった。 「まって・・・お茶飲んでかない??それとも急ぎ??」 「あぁ・・チョッとまた後でな」 そう言って、すぐに出て行った。 だいたい風月の家が見えなくなるくらいまで来たと思うと、ゆっくり止まった。 驚いた心臓は、すぐにはおさまらないようだ。 「そんな・・はずはないのに・・」 (ヒューンに知らせなきゃ)
「へぇ〜そんなことがありましたか」 椅子にのんびり座り、笑顔で編み物をしている。表面だけは。だが、何か心のどこかに傷を付けられた気分だった。 「絶対おかしいって・・・人間界の奴って・・感じるもんなの??」 「ん〜魔界の人は全員ってところですけど、人間界の方々は、儀式さえ行っていなければ気付かないはずなんですけどね・・・」 「儀式は行ってない!!俺は」 「えぇ。儀式なんて簡単に済むものではありませんしね。もしかしたら・・」 「もしかしたら??」 迎えに座っているガルドは、前かがみになる。 「接しすぎ・・という原因かもしれません」 「接しすぎ??」 「接しすぎると、その人の感覚を覚えてしまうので・・けれど、そんな事滅多にありませんし」 ガルドは少し考えた。 このままでいると、風月にもいろいろ危ない事が襲い掛かってしまう。という事は、俺が少しでも接する事を少なくした方がいいのだろうか。 けれど、できるわけが無い。 結論的にそうなってしまうのがガルドだった。 今まで「友達」という存在自体が無いガルドは、風月も大事な「友達」だった。もちろんそんなガルドだから、恋愛なんてものは知らない。 「ここは風月の運に任せよう」 「接さないということは、考えないんですね」 笑顔のまま額に汗を流す。 「まぁまぁ。」
とりあえずは、様子を見て。という全体的なまとめになったが、今はまだその状態でいいかもしれないと思った。 ガルドは、部屋に戻りながらも、何かおかしな点があった。なにかを考える。 『修行のために・・・・』 ある日のヒューンの言葉だった。といっても、結局はなぜいかなけらばならないかと聞いた時だった。ということは・・ 「あぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」 ガルドは、ハッと思いつき、思ったよりも大きな声がでてしまった。 強く叩かれる階段の音。そして、強く開けられたガルドの部屋。 「どうしましたガルド様」 ぽかんと口を開けているガルドが、ベッドの上に座っている。何の変哲も無いと思って、ヒューンはガルドの近くに行った。すると、顔がヒューンの方にジロリと見た。口はそのままだった。ヒューンの肩はビクリとした。 「が・・・ルド様??」 「なぁ、もう一つ選択肢が出来ちゃったかもしれない・・」 額に汗がかく。
魔界の者でも、人間界でいまだ生活してる奴らもいるって事だろ?? えぇ〜・・そうですね。 ってことはよ??ここ・・人間界の女(男)を好きになってそのまま結婚しちゃってここにいるってことは、半魔人ってことだよな?? えぇ・・そうなりますね。 魔界のものってここよりも寿命が長いんだろ?? あ・・けどガルドさん??一つ言わせて貰いますけど、結婚してしまうと、運が悪ければ人間界の者のほうの寿命がとてつもなく短くなり、早く亡くなりやすい。もしくは、魔力の緩みで人間界の者のほうが逃げてしまうケースがとても多いんですよ。 「もしかしてガルドさん・・」 「あぁ・・風月には母親が居ない。死んだとさ。産んですぐ・・」 「危ないな・・・調べてみる必要があるな。」
「はぁ〜・・・」 「ガルド・・??カンナリ思いため息ついてるって自分で理解出来てる??」 ガルドの顔を覗くように見る薺。 結局今日は学校に行かなければならない日であった。帰った後に調べようとヒューンと約束したから、きっともって先回りなどをして卑怯な手はつかわないだろうと、前向きな考えのおかげで今に至ってしまうわけだ。 「いや・・うん。理解出来てるようん。」 「??」 「オイこら!!!」 なんだか聞きなれていたが、久し振りに聞いた甲高い声。とてもガルドには気に食わない奴だった。 仕方がないから、ゆっくりと振り向いてあげた。薺と共に。 「何だ。またやってきたよこいつ。」 「ガルド・・お前・・ヤッパリケンカ売るのは得意だな」 「ってかこいつメッサ久しぶりに見たけど、誰だっけ??」 「名前は知らん」 「っていうかこの前ので懲りたんじゃなかったのか??」 「この前やっぱお前なにしたんだよ・・」 「うるさいうるさい!!僕を無視して話を進めるな!!それに僕の名前は春(しゅん)だぁ!!」 怒鳴り散らしてくるガキの声が、やはりガルドの怒りのスイッチらしい。ゆっくりと近づいてガキの目線に目を合わせる。そして、ガルドの爪でガキのあごを上げるようにした。長く伸びた爪。やはり、ガキは頬を伝って汗が流れる。それを確認すると、ガルドはゆっくりと元の体勢に戻った。 「ガルド・・やっぱあんたは何者じゃ・・かなり怖がってるじゃん。」 薺は、ガルドの肩を優しくポンポンッと叩いていった。 「なんつーの?俺の権力っつーの?」 なんだか今の台詞。どっかの誰かさんが言いそうな言葉だった。
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