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笑わない 笑いたい! 作者:

第10回   権力??

 気が付いたら、もうすでに夜だった。
 風景は何も変わっていない。
 少し薄明るかったのが、シャットダウンされただけだった。それだけの事。なのになぜか、見捨てられたような暗さ。閉じ込められた器の中で、呻き悲しむのではなく、ぼんやりと開くはずもない、閉まりきった天井を見つめているだけ。
 「風月??」
 ハッと目が覚めた。寝ていたわけではないが、何かの空想から目覚めた感じだった。
 ふと見ると、目の前にガルドが立っていた。
 「どうした??」
 「何でいるの??」
 呼んだ覚えも、あがらせた覚えも無いのに、なぜかいるはずの無いガルドがいた。最初は、幻覚を見ているのだろうかと思っていたが、そうではないみたいだった。
 「何でって。何度も呼び鈴鳴らしてんのにでなくて、ドア開けたら簡単に開いたから。そして何より風月の靴があったから」
 「それ私じゃない人の家行って見なさい??泥棒呼ばわりよ??」
 「ドロボウ?」
 「そうでした。ガルドはここの人間ではないからわからなかったのねドロボウが。」
 ガルドは、激しく縦に首を振った。
 「辞書を引きなさい・・
 では説明しよう。泥坊とかきます。泥は隠していた悪事。といい、坊はその人のことを言います。
 それを組み合わせ泥坊。悪事を、隠して行う人のことを泥坊といいます。」
 すると、そこでガルドは、恐る恐る聞いてきた。
 「ねぇ、」
 「何?」
 「ジショって何??」
 「辞書を引け!!!」
 「ジショって何!!」

 そんなこんなで、説明は面倒だという風にまとめさせた。
 「で??何用でこっちまで来たの??」
 「何用って・・別にそんな深い意味があるわけじゃないんだけどな??なんか最近ここら何か悪い事有りそうな気がして結界張りに来た。」
 「結界ィ??そんなたいそうなことできんの??」
 「俺を舐めないで」
 そういいながら、ガルドは風月の部屋を出て行く。おいていかれないように、風月も急いで付いていった。
 「人の家勝手に来て何処行くつもりよ」
 多少不機嫌が入っている風月。そんな事をお構い無しに、何処に向かっているのかもわからない動きをするガルド。
 「ここらへんかな」
 茶色のフローリングの上にしゃがみこんだ。
 「何するの?」
 「結界を家の中心だと思われるところから張るの。」
 「へぇ〜」
 すると、床に両手をあて、ゆっくりと目を閉じる。
 
(おかしな気)

 風月は、何か感じていた。何かが内側から外側へ走るのが。

 ガルドは、心の中でつぶやく。
 『疾風の風。遠くの声。響く太陽。この地を守る土・気・空・風。このガルドの名に気付くが良い』

 なにこれ

 それしか今は言うことができなかった。
 内側から大きな風が外側に流れ込むような、強い突風がくる。けれど、物は動かず髪も靡かず。微かな風でいられたかのような風。
 「今のが・・結界??」
 その言葉に、ガルドは内心かなり驚いた。それを表情に出すまいと心の中で決め付けた。
 「結界の隙間が通っただけさ。」
 焦る言葉を、ゆっくり落ち着かせる。
 「それじゃ・・俺はこれしに来ただけだから。」
 礒で帰ろうと、階段を降りていった。
 「まって・・・お茶飲んでかない??それとも急ぎ??」
 「あぁ・・チョッとまた後でな」
 そう言って、すぐに出て行った。
 だいたい風月の家が見えなくなるくらいまで来たと思うと、ゆっくり止まった。
 驚いた心臓は、すぐにはおさまらないようだ。
 「そんな・・はずはないのに・・」
 
(ヒューンに知らせなきゃ)


 「へぇ〜そんなことがありましたか」
 椅子にのんびり座り、笑顔で編み物をしている。表面だけは。だが、何か心のどこかに傷を付けられた気分だった。
 「絶対おかしいって・・・人間界の奴って・・感じるもんなの??」
 「ん〜魔界の人は全員ってところですけど、人間界の方々は、儀式さえ行っていなければ気付かないはずなんですけどね・・・」
 「儀式は行ってない!!俺は」
 「えぇ。儀式なんて簡単に済むものではありませんしね。もしかしたら・・」
 「もしかしたら??」
 迎えに座っているガルドは、前かがみになる。
 「接しすぎ・・という原因かもしれません」
 「接しすぎ??」
 「接しすぎると、その人の感覚を覚えてしまうので・・けれど、そんな事滅多にありませんし」
 ガルドは少し考えた。
 このままでいると、風月にもいろいろ危ない事が襲い掛かってしまう。という事は、俺が少しでも接する事を少なくした方がいいのだろうか。
 けれど、できるわけが無い。
 結論的にそうなってしまうのがガルドだった。
 今まで「友達」という存在自体が無いガルドは、風月も大事な「友達」だった。もちろんそんなガルドだから、恋愛なんてものは知らない。
 「ここは風月の運に任せよう」
 「接さないということは、考えないんですね」
 笑顔のまま額に汗を流す。
 「まぁまぁ。」 

 とりあえずは、様子を見て。という全体的なまとめになったが、今はまだその状態でいいかもしれないと思った。
 ガルドは、部屋に戻りながらも、何かおかしな点があった。なにかを考える。
 『修行のために・・・・』
 ある日のヒューンの言葉だった。といっても、結局はなぜいかなけらばならないかと聞いた時だった。ということは・・
 「あぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
 ガルドは、ハッと思いつき、思ったよりも大きな声がでてしまった。
 強く叩かれる階段の音。そして、強く開けられたガルドの部屋。
 「どうしましたガルド様」
 ぽかんと口を開けているガルドが、ベッドの上に座っている。何の変哲も無いと思って、ヒューンはガルドの近くに行った。すると、顔がヒューンの方にジロリと見た。口はそのままだった。ヒューンの肩はビクリとした。
 「が・・・ルド様??」
 「なぁ、もう一つ選択肢が出来ちゃったかもしれない・・」
 額に汗がかく。

 魔界の者でも、人間界でいまだ生活してる奴らもいるって事だろ??
 えぇ〜・・そうですね。
 ってことはよ??ここ・・人間界の女(男)を好きになってそのまま結婚しちゃってここにいるってことは、半魔人ってことだよな??
 えぇ・・そうなりますね。
 魔界のものってここよりも寿命が長いんだろ??
 あ・・けどガルドさん??一つ言わせて貰いますけど、結婚してしまうと、運が悪ければ人間界の者のほうの寿命がとてつもなく短くなり、早く亡くなりやすい。もしくは、魔力の緩みで人間界の者のほうが逃げてしまうケースがとても多いんですよ。
 「もしかしてガルドさん・・」
 「あぁ・・風月には母親が居ない。死んだとさ。産んですぐ・・」
 「危ないな・・・調べてみる必要があるな。」


 「はぁ〜・・・」
 「ガルド・・??カンナリ思いため息ついてるって自分で理解出来てる??」
 ガルドの顔を覗くように見る薺。
 結局今日は学校に行かなければならない日であった。帰った後に調べようとヒューンと約束したから、きっともって先回りなどをして卑怯な手はつかわないだろうと、前向きな考えのおかげで今に至ってしまうわけだ。
 「いや・・うん。理解出来てるようん。」
 「??」
 「オイこら!!!」
 なんだか聞きなれていたが、久し振りに聞いた甲高い声。とてもガルドには気に食わない奴だった。
 仕方がないから、ゆっくりと振り向いてあげた。薺と共に。
 「何だ。またやってきたよこいつ。」
 「ガルド・・お前・・ヤッパリケンカ売るのは得意だな」
 「ってかこいつメッサ久しぶりに見たけど、誰だっけ??」
 「名前は知らん」
 「っていうかこの前ので懲りたんじゃなかったのか??」
 「この前やっぱお前なにしたんだよ・・」
 「うるさいうるさい!!僕を無視して話を進めるな!!それに僕の名前は春(しゅん)だぁ!!」
 怒鳴り散らしてくるガキの声が、やはりガルドの怒りのスイッチらしい。ゆっくりと近づいてガキの目線に目を合わせる。そして、ガルドの爪でガキのあごを上げるようにした。長く伸びた爪。やはり、ガキは頬を伝って汗が流れる。それを確認すると、ガルドはゆっくりと元の体勢に戻った。
 「ガルド・・やっぱあんたは何者じゃ・・かなり怖がってるじゃん。」
 薺は、ガルドの肩を優しくポンポンッと叩いていった。
 「なんつーの?俺の権力っつーの?」
 なんだか今の台詞。どっかの誰かさんが言いそうな言葉だった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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