『報告者 リオン・アイバニー アストログローバル社貨物搬送宇宙艇の爆発事故は、同社が秘密裏に運んでいたヒューマノイドが暴走したものによる』 「こんなもので、上が納得するかしら。特に、あのグルレインのおっさんが」 リオンが作業中のコンピュータの画面を見つつ、ミューズが言った。 「これ以外に報告の仕様が無いわよ」 リオンは、書面をグルレインのコンピュータに送信する。 流石に疲れきった体で本部に出勤するのは大儀だったので、この作業は自宅で行っている。 「まあ、そうよね〜。あ、紅茶、ここ置いとくね」 ミューズが、湯気をたてているティーカップを机の端に置く。 「ありがとう」 リオンが顔を上げた。すると、すぐ傍に瞳を閉じたミューズの顔。そして、唇に柔らかな感触。 「………」 数秒して、ミューズの唇が離れ、リオンは、 「はぁ?」 と間抜けな声をあげる。 「一体何やってんのよ、あんたは」 「いや、あたしの恋愛機能のプログラムをコピーして送ってみたんだけど……どう?」 ミューズは自分の唇を押さえながら、リオンの様子を窺う。 「どう、ってねぇ。私に効く訳ないでしょ、それが」 「そ〜だよねぇ、ツマンナイ。リオンにも、恋愛の楽しさを教えてあげたかったのに」 ミューズは、キャスター付きの椅子を引っ張ってきて、リオンの隣に座る。 「でも、ま、リオンに彼氏とかできちゃって、あたしに構ってくれなくなったら寂しいもんね。これでいいか」 そう言って、椅子ごとくるくる回る。 「恋人ができたとしたって、仕事を放り出す程のめり込みはしないわよ」 「ばっかね〜。本当の恋愛をしたことないから、そんな事言えるのよ」 「ああそうね。はいはい」 「あ、聞き流したわね〜。そういう可愛げのない態度だから、リオンはもてないのよ」 「媚びなきゃなんないような相手にもてたってしょうがないのよ」 「またそんな事言って〜〜〜」 いつもの通りくだらない会話。そうして、2人のしばしの休息の時間は流れていくのであった。
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