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パワプロ 作者:mituki

第7回   初登板
5回の表ロッテの攻撃。
『5番、ファーストベースマン、ヒロオ・イシイー!』
ロッテはこの回で勝ち越さないと渚に勝ち投手の権利を与えることができない。

『さて、先攻のロッテは5番の石井からの攻撃です。ここで勝ち越しておくと後が楽になるはずのロッテ、石井は出塁できるのか?』
神童の一球目スライダーが石井の内角へ食い込む。石井は、これを無理やり打ちに行ったが打球はファールゾーンへ転がっていく。続いて二球目、インハイのストレート。これはわずかに外れてボール。三球目、外角低目いっぱいへ150キロの速球・・・
『石井外角の球を打ちにいった!打球は・・・・・フェアだ!ライト線ぎりぎりを転がっていく!』
谷が打球を懸命に追う、打った石井はファーストを蹴ってセカンドへ向かった。
『今、谷が打球に追いついた。すぐさまセカンドへ!しかし、石井は既にベース上だ!』
ノーアウトランナー二塁。投手にとって一番嫌な場面である。さすがの神童も苦い顔をする。進もマスクを取って汗を拭いた。
「タイムだ!」
ロッテのベンチから山本監督が出てきた。審判に選手の交代を申し出た。その後ベンチからロッテの快速ランナー立川が駆け足でセカンドへ向かう。
『ヒットを放った石井に代走を出してきました。この回ロッテは意地でも勝ち越す気です』
続く酒井が定石通り石井を送りバントで送ってワンアウトランナー三塁となった。すかさず神童が進をマウンドへ呼んだ。
「さて、ピンチになったわけだが、どうする?進くん」
「次はボーリックさんですし、外野フライでも一点取られますしね」
「なんとか内野フライくらいで抑えられるといいんだが・・・」
「なんとかしましょう。神童さんなら大丈夫ですよ」
「わかった、サインは全部進くんに任せるよ」
「はいっ!」
進が小走りでバッターボックスへ戻る。神童もアンダーシャツの袖を捲くった。
『さぁ、オリックス今日最大のピンチです。ここを切りぬけることができるのか?神童・猪狩バッテリー!』

ボーリックが独特のスタンスで構える。しかし、神童も動じない。
神童の足が上がって第一球。外角ギリギリをかすめるカーブをボーリックは平然と見送ってワンストライク。二球目、内角へフォークがくる。しかし、これは外れてボール。カウントは、1−1となった。一息ついた神童が三球目を投げる。ボーリックのバットがその球を捕らえるが・・・・
『ボーリック打った!しかし、打球はピッチャーの頭上だ!』
落ちてくる球を神童が難なくキャッチしてツーアウト一転してロッテは勝ち越しのチャンスが霞んでくる。そして、打席には第一打席で三振の清水が入る。
『ロッテ、勝ち越しのチャンスはこれで最後となるのか!?清水の打席に期待が高まります。神童、第一球を投げた!』
「!」
神童の表情が一瞬驚愕したようになる。手から離れたボールは、力なく進のミットめがけて進んでいった。それを見逃すはずもない清水はその棒球を思い切り叩いた。
『打ったー!清水の打球は左中間へ飛んでいく〜!ランナーの立川は悠々ホームイン!打った清水もセカンドへ』
この日一番大事な場面での失投。神童は悔やんだ。が、そんなことでへこむほど神童は弱くなかった。9番の小坂を三球三振に切って取ったのである。
『ロッテこの回なんとか勝ち越しました。さぁ、この裏でオリックスの逆転はなるのでしょうか?』
しかし、実況の予想はすぐに裏切られることになる。
「うおおぉぉぉぉぉ!」
ズバンッ!
「ストライーク!バッターアウッ!」
『渚が咆える!この回逆転を目指し、意気込んできたオリックス打線、田口・アリアス・猪狩を三者凡退にしました!』

『6回の表、ロッテの攻撃は第一打席にHRを放った日向からです』
神童は日向を意識していた。先ほどのHRのことだけでなく、なにか得たいの知れない雰囲気を放っていたからである。この結果神童は日向に四球を与えてしまい盗塁まで決められてしまった。
『どうしたんでしょう、神童らしくありません。サブローは簡単に打ち取ったもののランナーがまたしても得点圏、次のバッターは春日です』
レフトスタンドでは春日コールと応援歌が始まっている。
《放った打球は浜風を〜切〜り裂いて〜どこまでも飛んでいく〜お〜前のバットが頼りだ打てよ〜打てよ〜春日!》←即興で考えた(笑)
「へっ、任せな。俺には浜風だろうがなんだろうが気にならねぇぜ!」
神童に対して挑戦的な顔をして見せる。
神童は気にする事もなく第一球を投じるが・・・・
『打ったー!打球はレフトスタンドへ!しかしこれはきわどいぞ、切れるか?入るか?』
打球は無常にもポールを巻いた。
『入ったぁ〜!HRだぁ〜!ロッテ追加点!春日、ダービートップの8号HRだ!』
この一発で神童は完全に沈んだように見えたが、後続を進の巧みなリードでなんとか切りぬけたのである。この辺りが天才同士のバッテリーの凄いところだろう。
しかし、このあと球場が凄いことになるとはこの時二人は気付いていなかった。

6回の裏、オリックスの攻撃。
『千葉ロッテマリーンズ、選手の交代をお知らせいたします。ピッチャー渚に変わり・・・アオイ・ハヤカワー!背番号01!』
球場全体が歓声に包まれる。あの平成の怪物「松坂大輔」を遥かに凌駕する勢いだ。

「調子を取り戻した渚を下げるなんて・・・」
「しかも、早川をつかうなんてなぁ」
「あ・お・い・ちゃーん♪」
「山本監督も思い切ったことをしたもんだ」
「ホントに女の子がプロで通用するのかね?」

観客はそれぞれ思ったことを口にしている。
そんな興奮状態の球場にまったく興味を示さないあおいは投球練習をおえ、帽子をかぶり直した。

「プレイ!」
進藤に向かってあおいが投球フォームに入った・・・。


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