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パワプロ 作者:mituki

第5回   試合開始
試合開始!
「プレイボール!」

4月28日 PM6:00

試合開始の時間だ。
『さぁ、始まりました。オリックスは勝てば2位浮上、逆にロッテは負ければ最下位転落となってしまいます。負けられない両チーム、どういった試合になるのでしょうか?』

『1番、レフトフィールダー、ヨシノブ・ヒッナッター!』
GS神戸独特のウグイスが流れ、それと同時に歓声が一段と大きくなる。
『先攻のロッテ、先頭打者は去年日本に帰国したメジャーリーガー、日向由伸です』
日向は、アメリカの高校を出たあとメジャーのホワイトソックスに入団、昨年日本へ戻ってきた。生まれは日本だが育ちはアメリカという逆輸入選手である。

「神童さん、最初はアウトコースへスライダーお願いします」
進が注文すると、神童は静に頷いた。
『神童、ワインドアップから第一球投げた!』
要求通りのコースにスライダーが入ってくる。
「よし、うまく曲がった」
と、進が思った瞬間、進の視界が遮られた。
アウトコースへ逃げる球を日向が流し打ったのだ。
『打った〜!これは大きい!入るのかぁ〜!?』
日向のバットから放たれた打球は、そのままレフトスタンド中断に跳ねた。
『入った〜!初回先頭打者ホームラン〜!ロッテ一点先制!』
日向が拳を軽く上げながらダイヤモンドを回る。
「クッ、あそこを打たれたらしょうがないか・・・」
神童が苦笑いをし、頭を下げる進にひらひらと手を上げてみせた。
『2番、センターフィールダー、サブロー・オームラ!』
サブローが打席に立った。
初球インハイのストレート、見送ってボール。
二球目、真中低目へのカーブ、これを打ち損じて平凡なショートゴロ。
ワンアウトランナーなしで続く3番は春日である。
『3番、ライトフィールダー、ヒッデッキ・カスガー!』

ベンチで監督が渚と話している。
「渚、調子はどうだ?」
「はい、万全とはいきませんが上々です」
「そうか、だが今日は責任回数は5イニングだ」
「え、自分の後は誰が投げるんですか?」
「今日、一軍に上がったヤツらにやらせる」
「そんな、せっかくの勝ち投手の権利がパァになってしまうじゃないですか!」
「そう言うな、あいつらならやってくれるはずだ」
そんなやり取りをしているとスタンドの歓声が大きくなった。春日、初芝と凡退してチェンジである。
「行ってきます」
「おう、頼むぞ渚・・・」

一回の裏オリックスの攻撃
『1番、センターフィールダー、ミノル・フッカッヤー』
渚が投球練習を終え、帽子を被り直し深谷を見やう。
『さぁ、渚がノーワインドアップから投球に入ります』
渚の身体が沈み腕が鋭くしなる。そして、手から離されたボールは勢い良くミットに収まった。
「ストラーイク!」
『渚、初球から153キロの快速球が咆哮します!』
二球目、アウトコースから鋭く落ちるスクリューは、外れてボール。
カウントが1−1になってからの二球目。
「もらった!」
深谷がそういって速球を打つ。打たれた打球は三遊間を抜けてレフトへ転がった。
ノーアウトランナー一塁。次のバッターの大島がバントを決めて、ワンアウトランナー二塁。
『どうしたんでしょうか、渚らしくありません一回の裏からピンチを迎えております!』
そして打席には、谷が入った。
初球アウトローのストレートを谷が叩くが詰まってファーストゴロに終わった。
『4番、セカンドベースマン、タツヒコ・ムラサメー!』
スタンドの歓声が一際大きくなる。
『さぁ〜、お聞き下さいこの歓声。昨年の全国大学野球選手権で、かの高橋由伸にも勝るとも劣らない成績を残し、容姿も良いというスーパースターの登場です!』
マウンド上の渚は、さも機嫌が悪そうである。それと同じにベンチにいる乾も嫌な顔をしていた。
「なぁ〜にがスーパースターや、カッコええんやったらジャニーズにでも行けっちゅうんじゃ!」
「機嫌悪そうですね、乾さん?」
あおいが茶化したように聞く。
「あったりまえや!高校の時ワイは、3人目のKinKi Kidsと呼ばれとったんやで!」
「ウソくさ〜」
「でも、だったら乾さんこそジャニーズ行けば良かったんじゃないですか?」
「ワイは、容姿以上に溢れんばかりの野球センスがあるからプロ野球選手になったんや」
「あっそ」
あおいと箕輪は飽きれたようにブルペンへ行こうとした時、バットの乾いた音がした。
『打ったー打球はレフト前へ!ランナーは三塁を蹴って本塁突入だぁ〜!』
打球を拾った日向はバックホーム体制に入った。
「レフト前ヒットなのに本塁突入だと!そうそう簡単に点取らせるかよ!俺のキャノンショルダーなめんじゃねーぞ!」

ここで説明しておく。
日本では強肩のことを鉄砲肩と言うがアメリカではキャノンショルダーと言うらしい。
鉄砲と大砲、国のスケールの差だろうか〈電撃文庫・若草野球部狂想曲より引用〉

日向の手から放たれたボールはノーバウンドでキャッチャーのミットに収まり、深谷はタッチアウト、これでスリーアウトチェンジである。

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Novel Editor