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パワプロ 作者:mituki

第39回   初打点
『2番、ライト相沢。背番号59』

「しかし、またでかい背番号背負っとるなぁ」

ベンチで乾が鈴原にぼやく。

「仕方ないよ。ドラフト6位で入団してきて今まで2軍にいたからな。實松や波川でさえ40番台つけているのに」

「ま、どこかの誰かみたいに72番付けてるよりマシか。はっはっは〜♪」



「クシュン!」

「ん、どうした?風邪か?」

「い、いえ、誰かが噂しているみたいです」

スタンドでくしゃみをする氷坂だが、まさか乾が背番号のことで笑っているとは思ってもいないだろう。

一方、ロッテ投手陣の若手や新人は若い番号が与えられている。渚は17、乾は22、箕輪は14、あおいは01である。矢部は99を付けているが、エースピッチャーの黒木が54を背負っている時点で驚くような数字ではない。最近は背番号が大きくても活躍する選手は沢山いる。巨人の條辺は57、阪神の赤星は53、ヤクルトの五十嵐も53、ダイエーのエース、田之上は64である。



「ん?なんやあのメガネ?」

ふと日本ハムベンチを見るとなにやら相沢にアドバイスしている背の低い選手がいた。

「CHERRY・・・チェリー・・・ああ、チェリー藤田か」

「ちぇり〜?誰ですかそれ?」

乾が知らないのも無理はない。彼が2軍にいた4月の後半まではチェリーは1軍に登録されていたが、5月になると同時に金子の復帰とチェリー自身の打撃不振によって登録を抹消、2軍送りなっていたのだ。だが、9月10日付で1軍に再登録されている。(しかし、彼は後に入団してくる星空遥によって再び2軍落ちになる)

「なんでもチェリーは打撃理論には定評があるらしく、入団1年目にして打撃コーチ補佐みたいなことをやっているらしい。だが、理論ばかりが先立って本人の打撃レベルは高校生並・・・いや、それ以下らしいと聞いたことがある」

「なんで、そんな使えん選手をとったんかなぁ?」

「さあ?本当にあと何年かしたら打撃コーチにでもなってるんじゃないか?」

そんな話しをしているとなにやらアドバイスを受けた相沢がバッターボックスに入った。



『ワンポイントリリーフの相沢はこの回も代打を出されることなくバッターボックスに立ちます。普通に考えればバントが妥当ですが・・・』

バットを短めに持ち、やや後ろに引いた状態で構える。

「コンパクトに振ってポテン狙いか。ゲッツーさえしのげば1点は入るだろう」

清水のサインが出る。初球、様子見の外角ストレートだ。箕輪がボールをリリースする。制球力抜群の彼らしく、清水の構えたところに見事に収まるかに見えたが・・・

キン!

「打った!?」

『相沢打ちました!打球はセカンドの上空をゆるい曲線を描いて飛んでいきます!酒井、バックバック、追いつくのか!?』

酒井が飛びつき打球はグラブに治まった。しかし、外野のほうへ飛びついたので立ち上がってから投げるまでに時間を要する。その上酒井はそれほど肩が強くは無い。

「矢部!バックホームだ!」

「やんす!」

しかし、酒井のフォローのために走りこんでいた矢部がすぐさまボールを受け取り、ホームへ投げた。

「セーフ!」

だが、金子が一足速くベースを奪い日本ハムが同点とした。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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