『福浦内野ゴロだ!龍牙の剛球にバットを粉砕されセカンドへの平凡なゴロに仕留められてしまいました!』
龍牙は連投にもかかわらず、素晴らしいピッチングを披露した。
黒木も負けじと気迫の投球をする。
日本ハムが引き離せばロッテが追いつく。ロッテがチャンスをつくれば、日本ハムがピンチをしのぐ。
そして、6回に入った。
『千葉ロッテマリーンズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー黒木に代わって箕輪。背番号14。ライト箕輪に代わって矢部。背番号99』
箕輪が中継ぎでマウンドに上った。黒木が球を渡す。
「貴弘、俺はここで降りるが、気持ちはここに置いていく。俺と一緒に投げていると思って頑張ってくれ」
「はい!」
「おい、矢部出番だぞ」
「行ってくるでやんす」
元気良くベンチを飛び出す矢部だが、スタンドのプレートを見て怒り出した。
「【球界のヲタク矢部!】ってなんでやんすか?」
「は?矢部のことちゃうんか?」
「失礼でやんす!オイラヲタクじゃないでやんすよ!」
〈自覚ナシか!!〉
乾が心の中で突っ込む。どうやら、矢部本人は自分が球界一のヲタクだということを自覚していないらしい。
『さぁ、マウンド上箕輪。ロッテが1点リードで迎えた6回裏。先発黒木の勝ち投手を守りきったまま勝利、そして優勝に結びつけられるのでしょうか!』
打席には8番の野口が立っている。野口は2−2から外角のカーブに手を出しセカンドゴロ。9番の金子はショートへの当たりそこないだったが、これを小坂がファンブル。内野安打にしてしまった。
『ファイターズワンアウトでランナーを出しました。そしてバッターボックスには怖い怖い波川!今シーズン打率.323、本塁打34本と立派な数字で不動の3番でありつづけた波川は今日は1番です。これほど怖い1番バッターは近年類を見ません!広島の緒方や元阪神の真弓などと同じく俊足強打のバッターです』
〈ここで一発を狙うのは危険やな。ヒットを打てば十分や、しかし確実にツーベースをだ!〉
「波川さんのことだ、きっとスタンドではなく右中間を狙ってくるだろう。なら、ここは外角へ逃げるカーブで徹底的に引っ張らせない!」
『箕輪、セットから第1球投げた!』
サイドスローから繰り出されるカーブは綺麗に外角を通してストライクをとった。
「なるほど、サイドからのカーブか。しかも高津さんと同じテイクバックも最小限にしたフォームから投げてきたか。こうなると金子さんも簡単には走れないな・・・いっそ狙ってみるか」
2球目、3球目を見送ってカウント2−1とした波川。そして、第4球目。
カシィ!
『打った!外角のカーブを流し打ちました!しかし、打球はファールゾーンへ・・・い、いや、スライスしてフェアゾーンへ戻って来ます!』
レフトの春日が慌てて打球を追う。幸い回転が弱かった為、ランナーが生還するまでには至らなかったが、ランナー1・3塁と日本ハムにとって絶好のチャンスになってしまった。
そして、打席には相沢が入る。
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