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パワプロ 作者:mituki

第36回   展開
『波川、タイムリーツーベースで日本ハムいきなりの得点チャンスです!』

この後、石本がしっかり送りワンアウト3塁となった。今日は3番に入っている小笠原は内野フライに打ち取られたものの、4番、金剛寺に打順は回る。

『さぁ、初回から黒木がピンチに立たされます。今リーズン既に46本の本塁打を放ち、近鉄・中村と本塁打ランキング同率3位の金剛寺が打席に入ります』

『鋼の腕が打球を運ぶ 大空高く舞い上がれ いざ行け隆 金剛寺隆』

スタンドからは金剛寺の応援歌が流れる。歌詞が指す通り、鍛え上げられた腕は4番にふさわしいものだった。そして、黒木が投げたその初球。

『打ったぁ〜!打球はライナーで左中間へ飛んでいく〜!ランナー波川は悠々とホームイン。先制は日本ハムファイターズだ!』

盛り上がるライトスタンド。しかし、黒木も負けていなかった。今年一年チームを引っ張ってきた人間の強さというのか、その後のオバンドーを三振に仕留め1回を終えた。

「さて、先制されたのはしょうがないとしても、なんとかして相沢を引きずり下ろさないとな・・・」

そう言い残し、打席に向かうのは春日。スタンドでは日本ハムに負けじとホームランコールが起こる。

『右投手の相沢に合わせ、左打席に入る春日。ロッテの主砲は彼を打ち崩せるのか!?』

しかし、春日も切れ味抜群のシュートに詰まらされ、内野ゴロにされた。続くボーリックも三振。簡単にツーアウトにされ、打席には箕輪が入った。

『選手登録は投手ですが、今日はライトでスタメン起用の箕輪。彼の打撃には定評がありますが、春日・ボーリックを手玉に取った相沢を打てるのか!?』

帽子を目深に被っている相沢と同じくメットを深く被り、何かを考えているような箕輪。そしてバットを高々と上げ、そのまま止まった。

「なんやアイツ。ホンマに新庄さんの構えみたいやな。あんなんで打てるんか?」

「どうだろうな。まあ、アイツなりの考えがあるんだろう」

「はいはい。そんなら、静かに見守りますか」

と乾がブルペンのテレビに目を向けた瞬間―



ズダン!



『は、入った・・・入りました!箕輪、今季2本目のホームランが飛び出しました!しかもバックスクリーンに飛び込む完璧なホームラン!ロッテ同点!』



「な、なんだって!?あんなフォームから打った打球がスタンドに入るなんて・・・」

「完璧なフォームね」

「完璧?アレが完璧だっていうのか!?」

驚愕する守とさも当然のように言う氷坂。

「相沢投手のライズボールを打つ為の絶対条件、それは―」

「ダウンスイング・・・だろ」

「輝星さん、知ってるんですか?」

不意に口を開いた輝星に今度は氷坂が驚く。

「まあな。漁太から聞いたんだが、アイツは中学までソフトボールをやっていたらしい」

「ソフトボール?」

「そう、ソフトボールにおけるライズボールってのは、野球でいうところのフォークボールと同じだ。決め球として使う投手が多く打ちづらい。だが、ライズボールにも弱点がある。それが―」

輝星が氷坂を見る。

「ダウンスイングよ。浮いてくるボールに対して打ち下ろすスイングは効果絶大。ホップしてくるボールに芯が合えばどこまでも飛んでいくわ」

そんな氷坂の声が聞こえないフィールドではようやく笑顔を見せた箕輪がダイヤモンドを周っていた

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Novel Editor by BS CGI Rental
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