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パワプロ 作者:mituki

第35回   最終戦
東京ドームでは両軍のスターティングメンバーが発表されていた。

驚いたことに両軍ともスタメンの打順がいつもと違った。特に異なるのは、日本ハムの1番に入っている波川とロッテの6番になっている箕輪。箕輪においてはライトで先発メンバーである。

「いつもならクリンナップにいる波川がトップバッターとはな」

「ですが、彼の能力なら1番打者でも十分に務まりますよ」

ベンチで山本監督とコーチが話している。一方、反対側の日本ハムベンチでも・・・。

「箕輪がライトで先発出場とはな。なに考えてるんだ?」

「多分、投手の節約の為じゃないですか?」

「なるほど。途中でDHを破棄すれば箕輪も投手として使えるしな」

両チームのとも意表をつくメンバーで試合は始まろうとしていた。



その頃、スタンドでは・・・。

「進じゃないか!」

「兄さん!?なんでここに?」

「日本シリーズの偵察だそうだ。僕は必要無いって思ったんだが、猿橋さんが付いてこいっていうからな」

「ああ、そういえば巨人はおととい優勝を決めていたんだったね」

進と来ていた神童が納得する。

「あ〜あ、あたしもセントラル行けばよかったかなぁ」

後ろから女の子の声がする。西武ライオンズの氷坂唯だ。

「あ、氷坂さん。偵察ですか?」

進が笑顔で聞く。

「ううん、今日はロッテが負けるところを見にきたのよ」

「って言うより、乾が打たれるのを見に来たんだろう」

「う゛・・・」

氷坂と一緒に(というか、保護者として)来ていた輝星が笑いながら言う。

「ほら、試合始まるぞ」

またしてもどこから現れたのか、渡島と本城が促す。このオールスター常連の二人は仲が良いのである。



「プレイボール!」

審判のコールが掛かった。

『さあ、始まりました。今年のペナントレースの勝利者を決める大事な試合。今日はディゲームと移動日が重なっているので、セパ共にこの2チーム以外は試合がありません。

その為か先ほどからスタンドで観戦している有名選手が見受けられます』

ロッテの1番は日向。2−2で迎えた5球目。

ズバーン!

「ストライーク!バッターアウト!」

球場が静まり返る。脅威のミート力を誇る日向が空振りをしたのだ。それもバットがボールの下を通ってでの。

「由伸がストレートを空振りやと!?」

驚く乾。それに対して冷静な箕輪。

「いや、乾さんあれはストレートじゃない。あれは―」

「ライズボール」

スタンドで氷坂が口を開く。

「ライズボールってあのソフトボールの?」

「進くん知っていたの?そうよ。ソフトボールで三振を獲りに行く常套手段として使われるライズ(上昇)ボールよ」

驚いた守が氷坂に聞く。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。あんなボールは野球で投げられるのか?」

「普通は無理ね。ライズボールは下から投げるからこそ投球できる変化球。野球のように、ましてや相沢投手のような上手投げの投手には到底できない芸当だわ」

そして、しばらく考えていた神童が口を開く。

「なるほど。確かにライズボールはシュートを投げる時と手のひねりが上下さかさまになる。普通なら投げられてもすぐに手首を痛めるだろうな」

「普通よりも異常なほどに間接が柔らかい・・・か」

腕組をしながら何度かうなずく猿橋。この連中が驚愕している間に相沢はあっさりと三者凡退に切って獲り、1回の裏へと進んでいた。



『今シーズンは開幕9連勝。その後も着実に勝ち数を重ね、現在17勝です。この試合で勝ち投手になると2位の龍牙を抑えて単独で最多勝のタイトルを手にすることができます』

打席には今日1番の波川が入った。黒木が投げた初球―

カシィ!

『打ったぁ〜!打球は右中間へ!今、箕輪が追いついて中継へ返します。波川初球打ちでツーベースヒット!』

ロッテはいきなりピンチを迎えてしまった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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