ズドン!
清水の構えたところとは若干違うが、いいコースにストレートが決まる。
「ふぅ。154キロも出してコースがずれると捕るのも精一杯だな」
2球目、内角低めのフォーク
「ちぃ!これもずれたか!」
清水がひざを落として構える。しかし球は清水のミットに収まることなく弾き返された。
『打ったー!ライト方向へのヒット!本城がホームを踏んでまず一点。続いてバルデスが突っ込む!しかし、これは暴走だぁ!』
「秀喜、バックホームだ!中継はいらん!」
「鈴原、どいてろ!」
春日の手からホームに向かって低い弾道で白球が飛んでゆく。ボールはワンバウンドして清水が捕球、バルデスはタッチアウトになった。
「セカンド!」
バッターランナーの城島がセカンドへ走っているのを見た鈴原が叫ぶ。清水も間髪居れずに送球した。
『セカンドクロスプレイだ!判定は・・・』
「アウト!」
間一髪で城島を刺した清水。その後ろでたった今自責点1が付いた渚が立っている。
『ベンチから選手が二人出てきました。どうやら箕輪と乾のようです。コーチは同伴していません』
「渚さん、交代です」
「俺はまだ降りないぞ、こんなところで降りられるかよ」
「交代や、交代。あとは箕輪に任せろや」
「絶対負けませんから」
「渚、お前はウチの大事な左のエースだ。優勝戦線に加わっている今、お前を無駄遣いできないんだよ」
小坂が渚をなだめる。
「せや、ここで無理に投げて疲労が残っても困る。来週すぐに日ハムとの3連戦があるんや」
「そうだな。箕輪、頼んだぞ」
「はい!」
約束通り、箕輪はDHのボムをキャッチャーフライで仕留め、チェンジにした。
「渚を負け投手にしないため、そして何よりダイエーとのゲーム差を一気に縮めるチャンスを逃さないためにも絶対勝つぞ!」
春日がベンチで叫ぶ。年齢的にもベテランと呼ばれる位置に達した彼はベンチの士気を保つように心掛けている。
「とにかく何でもいいから塁に出ろ」
「はい!」
小坂がバッターボックスに立ったその初球。
キンッ!
「!」
『小坂の打球が若田部を直撃〜!若田部立てません』
驚いたのはダイエーベンチだった。若田部の調子が良いと見て、投手を誰もブルペンで作らせていなかった。
「誰もブルペンにいないのか!?」
「いませんよ、7回までは若田部で行く予定でしたから」
「星空、お前行けるか?」
「5分下さればすぐ肩作ってきますが」
「よし、5分くらいならなんとかなるだろう。頼んだぞ」
「はい」
・ ・・5分後
『福岡ダイエーホークス選手の交代です。ピッチャー若田部に代わって星空。背番号20』
「スクランブルで使える投手か、ダイエーもいい選手をもってるな」
「監督、感心してる場合じゃないですよ」
山本監督が素直に感心する。
「練習球は7球だ」
「はい」
審判からボールを渡されマウンドへ登る大地。ダイエーのベンチ上では遥が驚いていた。
「お、お兄ちゃん!?」
「お兄ちゃんって、キミ星空選手の妹さん?」
「うん、そうだけど・・・って進くん!?」
「はい、そうです」
オリックスの捕手、猪狩進が遥の前に現れた。
「あ、すいません。私の方が全然年下なのに進くんなんて」
「あはは、別に気にしていませんよ」
「ところで、何でこんなところに」
「それは・・・」
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