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パワプロ 作者:mituki

第2回   キャンプ
2月1日
全球団一斉に春季キャンプが始まった。今年のキャンプは長野で行われる。2月に長野でキャンプと言うのは誰が決めたんだろう、これなら地元の千葉でやった方がよっぽど暖かいと思うんだけど・・・・・。

「全員集合!」

2軍の選手全員が集まる。その中心にいるのが、このマリーンズの2軍監督。その監督が軽く咳払いをしてから口を開いた。
「あ〜、オレがこの2軍監督の美浜だ。今、ここにいるお前らはプロといってもファームにいる選手という事を忘れないように。お互い競い合い、実力をつけて早く1軍で活躍出来るようになれよ!」
「はい!」
監督の話しが終わると間髪いれずに選手全員が大きな声で返事をした。
「次に、各コーチの紹介をする。右から検見川投手コーチと川崎投手コーチ、船橋守備走塁コーチと幕張打撃コーチだ。で、最後に育成コーチの・・・・・おい、花山はどうした?」
監督が慌てている。育成コーチがいないらしい。
「おい、船橋。花山どこ行ったか知らねーか?」
「花山なら確かに途中まで一緒だったんですけどねぇ」
「ったく、また行方不明かよ。ホントあいつ使えねーなー」
(ま、また行方不明って・・・”また”ってなに!?ここの育成コーチは俳諧癖でもあるのか!?)
オレは、これからの選手生活が一気に不安になった。しかし、不安になっている暇もなく、監督から今日のメニューについての指示がでた。
「今日は、キャンプ1日目なのでストレッチをやったあと各自走り込みをしろ。それが終わった後の指示は各コーチに任せる・・・・・オレからは以上だ。解散!」
監督の話しが終わって選手が散っていった。
オレも他の選手と同じようにストレッチをやろうと思い相手を探す。
「誰かいないかなぁ・・・・・あ、いた!」
オレは選手の中から緑色の髪のおさげをした女の子に声を掛けた。
「ねぇ、あおいちゃん。一緒にストレッチやらない?」
「ぼく?うん、一緒にやろう」
オレとあおいちゃんはストレッチを始めた。
入寮時は口すら聞いてくれなかったけど、自主トレ中にキャッチボールなんかをするようになって今は大分仲良くなったっと思う。そんなことを考えながらオレがあおいちゃんを押していると。
「ねぇ、箕輪くんはストレッチやらないの?」
「え?あ、ああ。じゃ、押してくれる?」
「いいよ、じゃあ、いくよ」
(あぶねぇ〜、もう少しであおいちゃんをストレッチに誘ったのにやましい気持ちがあったのばれるところだった)
そんなことを考えながらストレッチをこなし、オレとあおいちゃんは、走りに行こうとした。すると後ろから
「まってくれでやんす〜!」
「あ、矢部君も走りに行くの?」
「オイラは、軽くランニングした後、舟橋コーチに言われて50メートルのタイム計らなくちゃいけないでやんすよ」
「この時期に50メートル計るの!?」
あおいちゃんが驚いている。当たり前だ、こんなクソ寒いところでダッシュなんかやったらアキレス腱切っちまう。
「とにかく早いところ走りにいくでやんすよ」
「ん、わかった・・・」
「ところで、あおいちゃんって長距離得意?」
なんとなくオレが聞いてみた。オレはあおいちゃんが投手って事くらいしか知らないから興味を持ったのだ。
「う〜ん、どうだろう。ぼくって中学、高校ってずっと中継ぎやってたから・・・・・箕輪くんは?」
「オレは先発一本で今までやってきたからそれなりに自信あるけど・・・でも普通、中学や高校で中継ぎって必要なの?」
オレはそう質問してみた。高校は普通先発の投手が投げきってしまうものだと思っていたからだ。
「そんなことないよ。結構出番あったしね」
「ふ〜ん」
そんなことを話しながらオレとあおいちゃんとオマケの矢部君が走ろうとした時に室内練習場から声がした。監督が呼んでいるのだ。
「おい、箕輪と早川は投球が見たいから室内練習場に来い!」
オレとあおいちゃんがキョトンとしていると、監督が怒鳴った。
「聞こえなかったのか!」
「は、はい!」
オレとあおいちゃんは慌てて室内練習場へ向かった。

「・・・・・ほう、アレが箕輪と早川ねぇ」
「何してるでやんすか?」
「うわぁ!なんや、おのれは!」
「オイラ矢部でやんす」
「ほう、ワレも新人か?」
「そうでやんす・・・・あ、その背番号22番は!」
「お、ワイのこと知っとんのか」
「知ってるでやんす、だって有名でやんすよ・・・・」
「ストッパーなのにいつも9回にホームラン打たれるストッパーがマリーンズにいるって。確か通り名が一発ストッパー・・・」
メキッ!
「うっさいわ、ボケ!それ以上言うと殴るでホンマ!」
「も、もう殴ってるでや・・・ん・・・す・・・」

続く・・・・・。


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Novel Editor