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パワプロ 作者:mituki

第10回   守護神復活
8回の表、ファーボールでランナーを出しましたが後続を絶った神童。味方の逆転を待ちます』

8回の裏のマウンドへ箕輪が上がる。

「この回を無失点か・・・」

≪点を取られたら変則投法は禁止だ≫

監督に言われたことが気になる。しかし、審判の声が掛かるとそんなことはどうでもよくなっていた。


『さぁ、テンポ良くツーアウトまできた箕輪。対する谷も2−2と追い込んだ』

箕輪はこの回、一度も変則投法を使っていない。監督の言った事を気にしているのではなく、変則を使うことの意味をなんとなく理解してきたからなのだろう。

(ここ一番でのみ変則を使う)

そう箕輪自身が考えていた。そこへ清水からのサイン、スクリューだ。

『箕輪、第五球。これはサイドハンドからの変化球!』

サイドから投げ出されたスクリューは谷のバットから逃げる様に外角低目に決まった。

「スタライーク、バッターアウッ!」

審判の手が上がる。スリーアウトチェンジだ。

『箕輪、この回無失点。オリックスとロッテの点差は2点のままです』

箕輪がベンチへ戻る。監督が無言で頷く、よくやったと言う意味なのだろう。


『オリックス、どうやら選手交代のようです。小倉のようですが・・・小倉ですね、右の小倉を使うようです。神童は、8回でマウンドを降りました』

「小倉か・・・ヤツの武器は、サイドからのシンカーとシュート、そしてMAX148キロの速球だ」

春日が言う。それを聞いて箕輪が驚く。

「えっ!サイドなのにそんなに出るんですか?」

「あのなぁ、ウチの乾も、渚も左のアンダーで150キロを越えているんだ。右のサイドで148キロ出ても不思議じゃないだろう」

「あ、そうでした。でも、渚さんって人間ですよねぇ」

箕輪が苦笑しながら聞く。それを聞いた渚が

「じゃあなにか?怪しい博士にでも改造されたとか言いたいのか?」

「いえ、そんなわけじゃ・・・」

「改造されそうになったのは俺じゃなくて日向だな」

「そうそう、危なかったぜホントに。怪しい博士っぽい外人でよぉ、しきりにダイジョーブとか言ってくるの、それ以外の記憶がないんだけどな」

「えー、ホントに大丈夫なんですか?日向さんの体?」

ベンチが笑いの渦に包まれる。そんなことをしている間にロッテの攻撃もツーアウトになり、最後の打者である酒井をショートフライに打ち取りチェンジとなった。


『ロッテ選手の交代です。乾がマウンドへ上がります。昨年前半は絶好調でしたが、オールスター開け後の試合で5試合連続サヨナラHRを打たれるという不名誉な記録を打ち立てて以来、ウォーレンにストッパーを譲っていた乾がマウンドへ上がります。守護神復活となるのか!?』

投球練習を終えまで逆に被っていた帽子を被り直す。

乾の投球は守護神と呼ぶにふさわしい内容だった。球速、制球、変化球、どれをとっても去年の開幕直後のようなそんな感覚になる。

「ストラーイク!バッターアウッ!」

『連続三振!乾、オリックス打線を抑えこんでいます。去年のリリーフエースが帰って来ました!あと一人です。オリックス後がありません』

「残りは田口ハンや。この人は去年五輪にも出てる人や、こつこつ当ててくるけど気を付けんと一発をもらう時もある。」

慎重に攻める乾、田口も追い込まれてからはクサイ球をカットし続け、フルカウントとなった。

「ここまで粘られるとは思わんかった。しゃーない、箕輪やないけどワイも変則投法を使うか」

『マウンド上乾、これを最後とするのか?それとも田口、出塁して後に繋ぐ事が出切るのか・・・あっ!?』

乾がはじめた変則投法とはトルネードだった。腕を大きく上に上げて身体をひねる。バッターボックスから背番号の22が見えるほど上半身をひねったあと身体をすばやく深く沈める。トルネード投法からアンダースローへ移ったのだ。そして乾の腕から離されたボールはホップして真中高めに向かっていく。田口も懸命に当てようとするが、バットが虚しく空を切り三振してしまった。

『バッターアウト!試合終了です。乾、最後の球は自己最高の153キロをマークしました!ロッテ守護神完全復活です!』


ロッテはこの試合に勝ち、4位浮上したのであった。

この後勝ちが先攻しはじめ、3位まで上昇したロッテ。このまま連勝したいところだが、

日本ハムファイターズがそう簡単に勝たせてくれるチームでないことをこの時、気付いていた人間がこの中に何人いただろう。

時は進み5月25日 PM6:15

東京ドームでの日ハムとの三連戦の初戦・・・

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Novel Editor by BS CGI Rental
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