「…ぅううん…,!!!」 激痛が走り,目を覚ます。そこはさっき倒れた場所ではなく,なにやら高級なアンティークが飾られた部屋のようだった。ベッド,古い置き時計,グラス…全てのものが未来では高級博物館などに展示されるようなものばかり…ここは誰の部屋なんだ?
「目が覚めたか?」
不意に誰かに声をかけられた。振り返るとそこには所長,ヘルガが椅子に座り,サバイバルナイフでリンゴを丁寧に剥いていた。
「何故俺をここへ運んだんだ?俺はタダの収容者のはずだぞ?しかも…」 「…だからだ。」 「聞こえないよ。何だって…?」 「…気に入ったからだ。何度も言わすな。」 「…はあぁ?」
突然の事態に訳が分からなくなる。気に入ったから?これがあって間もない囚人にかける言葉なのだろうか?否,何か特別なことを企んでいるんだ,そうに違いない。 一体何を…小浪が悩んでいるとヘルガはリンゴを剥き終え,小浪に差し出した。
「ヤパーナもリンゴを食べる習慣はあるのだろう?…失礼,小浪…だったかな?食べろ。」
な,何だこれは…つややかな甘みを保つ姿をどこへ隠したか,黒く変色したこの色。食べるところの減ったこのクレーター面状の形! 無言で受け取るとそのリンゴは少々食べる部分がえぐりとられ,食べるところが少ない…簡単に言えば下手くそに剥いたものだった。思わず小浪は苦笑する。
「な,何が可笑しい?」v 「…君にも面白いところがあると思ってさ…フフッ」 「ぅ,うるさい!」
先日の風景とは思えないくらい,というか文献で見ていた風景とは思えないくらい俺は所長と和んでいる。確か収容所では収容者は徹底的に迫害されるはずなのだが…本当に俺は惚れられているのか?…ホントまいっちゃうなぁーもう! そんなことを思っていると今度はヘルガが小浪を指さして顔を背けた。
「今度は何が可笑しいんだ?」
笑っているのかと思い,小浪は顔をのぞき込んでみるとハッとした顔になったヘルガを見た。その瞬間…
バチン!
部屋中に響き渡るほどのビンタの音。小浪は何故殴られたか呆然とした。それを見てヘルガは…。
「お前達日本人は裸で女性に接する習慣でもあるのか?それならなおした方がいいな。では治ったら部屋を出るがいい。従者がお前を元の場所に戻すからな…じゃあ私は行くぞ。」
あらためて自分を見ると服が全て剥ぎ取られ,全裸になっていた。驚いた小浪は飛ぶように早くベットのシーツを体に巻き,その場に座り込んだ。
|
|