■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

しあわせ島奇譚 作者:mituki

第4回   第4章
 しあわせ島で迎える初めての朝が来た。来たっていっても時間的にはとっくにあの二人との見ながら迎えていたのだが…頭をぼりぼり掻きながら外にある洗面台へと足を運んだ。
 他の囚人達の流れに任せて中央広場まで出てみると洗面出来そうな場所が見えてきた。少し並んで顔を洗う…。
「ぷはーっ!目が覚めたな…しかしこの時代に収容所があるとは聞かされてなかったのになぁ…現実社会に漏れていないのか?」
 改めて島を眺めてみる。国籍は使用されている言語が日本語だし,日本からそう離れていないことから…やはり日本と赤道に近い孤島だな。島の大きさは大体一つの街より大きく,施設は主なものが7つくらい…。
まてよ,それならそこら辺の孤島より目立つし,地図に載ってるはず何だけどなぁ…?
謎は深まるばかりだった。そこへ後ろから話しかけられた。
「アンタが新しい野球班の収容者でやんすね?」
この懐かしいマニアの声は…。
山田君だ!何でこれまで声をかけてくれなかったのだろう。小浪は振り返った。
「オイラは落田でやんす。仲良くするでやんす。」
そこに山田の姿はなかった。代わりに山田にそっくりな男が立ってる。メガネは割れ,無精髭を生やして不思議そうにこちらを見ている。
二人は互いに自己紹介を済ました。
「いまから仕事でやんす。小浪君は初めてだろうと思うから,オイラについてくるでやんす。」
落田に言われるままついていくと大きな工場が見えてきた。入り口には兵士が立っていて,中に入ろうとする収容者に紙を渡している。
「落田君,あのお金みたいな紙は何なんだ?」
「あれでやんすか?あれはペラというでやんす。きかなかったでやんすか?この島でのお金みたいなもので,1000ペラ集めるとここから出れるでやんす。」
落田は当然そうに答える。さらに小浪は聞く。
「仕事は幾らくらいそのペラってものがもらえるんだい??」
「じゃあ仕事について教えるでやんす。ここでの仕事は簡単,普通,危険なものと別れていて,危険なものほど多くペラがもらえるでやんす。大体…10〜50ペラでやんすね。でも食事もそのペラからださないといけないでやんすからそう簡単にはペラは溜められないでやんすよ。」
小浪は硬いもので頭を殴られたように錯覚を受けた。危険な仕事を続けて20日で出れると思ったのにさらに日曜雑費までそこから出さねばならないとは…いったいいつになったらこの蒸し暑くて衛生状態の悪い島から帰れるのだろうか。
「ちなみに聞くけど落田くんはいつからここに居るんだい??」
すると落田はさも可笑しそうに笑いながら答えた。
「ははは,そう簡単には出れないって言ったじゃないでやんすか。オイラはもうかれこれ…3年になるでやんすね!まあ,小浪君もたっぷり搾られるといいでやんすよ…って小浪君,小浪君!大丈夫でやんすか??」
小浪は目の前が真っ白になった。いつになったら帰れるんだ俺は…。
それを落田は心配そうに伺いながら二人は工場へ入っていった。

 工場内はもぁっとした蒸し暑い熱気と工場特有の機械音が鳴り響いていた。機械が大体作った部品をベルトコンベアーで運び,それを収容者が流れ作業で組み立てている…ってあれは銃!?
その横は手榴弾…どうやらここは軍事工場のようだ。
「落田君,ここは軍事工場みたいだけど,ここでできた武器はBB団が使っているのかい?」
 兵士に悟られないように小声で言う小浪を落田は不思議そうに見る。どうやらBB団は関係ないようだ…。
「ここの島のこと,世間にはまだ漏れてないでやんすか??道理で国連軍がここに来ないわけでやんすねぇ…」
 世間?国連軍?何のことだろう。まさかこの島はとても言えないような秘密を背負っているのだろうか。小浪は追求した。
「それはどういう事だ?ここでは漏らしてはいけないことでもあるのか!どう何だ落田君。」
 言おうか言わないか迷ってる落田。しかし,小浪の後ろを見るや逃げるようにその場を走り去った。
「お〜ぃ落田君!何処行くんだ…」
「まあ結果的には本部で拷問されるんだろうな…。」
その声に驚き,後ろに振り返るとそこには所長ヘルガの姿があった。ヘルガは兵士に命令をすると,小浪はたちまち4,5人の兵士に押さえつけられた。
「な,何をするんだ!!」
 そう答えた瞬間,小浪の頭は鈍器のようなもので殴られ,意識を失っていった…。
「全く,一個人の収容者のくせに島の秘密を探ろうとは良い度胸をしてるもんだ。」
「こいつなぞ拷問にかけて不慮の事故と言う事で処刑に…」
兵士達は小浪を殺した方がいいと言い出した。
「馬鹿か貴様等は!こいつは野球房囚人だぞ?そんなに簡単に殺すわけにはいかん…とりあえず…」
「とりあえず…??」
「私の部屋に運んでおけ。その後お前等は通常の勤務に戻れ…あとこのことはマコンデや団長に言うんじゃないぞ,良いな?」



← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections