「…今日のデータは?」 「これです。ご覧になってください。」 「うむ…そう言えば、小浪の方はどうなっている?」 「あの囚人ですか?あいつならブラックバタフライズの2軍のレギュラーに定着して、真面目に練習しておりますが?」 「…久しぶりに顔を見るか。」 「はい?なんですか?」 「…もう良い!下がれ!」
あのテストから約一ヶ月…日に直すと35日ほどだろうか。小浪は野球囚人として生活を続け、試合で数々の功績を残しだした。ペラも600ほど溜まり、あと30日はすれば日本に帰れる予定を立てていた。 しかし小浪は気になっていることがある…あれから姿を見せぬ倉持。自分に気があると宣言した所長。 この一ヶ月間の中で姿を消した2つの気がかり…これがどういう意味を持つのかが気にかかっていたのだ。
「あの2人何を企んでるのかなぁ…って言うかあの2人何で俺なんかに絡んで来るん…」
ゴチィン!
「小浪君!何考え込んでいるでやんすか!ちゃんととってくれないと野球にならないでやんすよ!」 「あ、ゴメンゴメン!」
やれやれ、ミスしてしまったなぁ…まぁ、このツケはあの日に手に入れた“能力”さえあれば容易くかえせるものなのだが…。
『…ピッチャー、小浪の奴は今日も全打席打ってる。ここは奴の嫌いなインハイギリギリにはいるカーブを…』 『分かった。さすがの小浪も弱点を突かれれば打てるはずもないだろう…ンじゃ行くぞ…』 「ありがとう、インハイだな??」 『『!?』』
カキーン!
「小浪君でかしたでやんす!これでサヨナラでやんす!」 「やっぱ小浪はスゲーな?これで俺ら一軍への挑戦権をゲットしたわけだ!」 「小浪がいれば勝ちは確定だろ?」 「「な、何で配球が分かったんだ…?」
小浪はあの2軍に選出された日から人の考えが分かる“超能力”を手に入れたのだ。 最初は使い慣れなかったが今このテレパシー能力があればピッチャーとキャッチャーのサインが細かく解説付きで簡単に打てるとは…超能力者って結構いいモンだ。今日もみんなでパーッと飲みでもするか!酒はプレイルームで嫌と言うほど手に入るしなw
「さて、今日も酒飲みに行くぞーー!」 「「「おう!」」」
「…このたわけ者め。テレパシー能力が覚醒しただけで浮かれおって…奴らは挑戦権を得たようだからこれは倉持の出番も近いかもしれん。フン!頑張れよ小浪…」 『聞こえちゃってるよヘルガちゃ〜ん。最近顔見ねーな?ニキビでもできたか?』 『…アホめ、どうせ私も貴様も“超能力”が使えるではないか?それよりも今のこと、受けてくれるな?』 『まっかせろう!その日のために小浪につきまとってたもんだ♪…それより、万が一で小浪の奴が覚醒して俺を越えてしまったら負けちまうぜ?素質は俺より上だからな。』 『安心しろ、貴様はしあわせ草からとったエキスを毎日接種させているんだ。負けるはずが無かろう?アリが象に刃向かうようなものだ。でも負けなどしたら貴様は…』 『分かってるって!ちょっとジョーク入れただけだよ。ンじゃあオタク野郎とちょっと日本に行ってくっからな〜』 『…総帥と呼べと何度言ったら分かるんだ。』
しあわせ草とは何なのか?倉持とヘルガの真意は?そしてまだ見ぬBB団総帥とは? …小浪の知らない影でまた次々と暗闇が小浪に襲いかかろうとしていた。
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