5 フィズ「こいつはまたひどいな…… 恥ずかしい話だが告白しよう。胃の中身を逆流させそうになった。ミレアはよく堪えてるよ。全く、感心しちまうな」 ミレア「んー、だってさ。 私こういうの馴れてるし」 フィズ「俺だって、ある程度なら馴れてるさ。でも、いくら何でも限度ってもんがあるぜ。 なあ、ミレアよ。一度確認させてくれ。ここは一体どこなんだ?」 ミレア「ターミアル城。この地域を治める国王が暮らしている場所よ」 フィズ「その通り!ここはいわば、一地区の主の居城とも言える場所なんだ。 なのに……この内装は一体何なんだ?」 ミレア「う〜ん……」 フィズ「窓にはピンクのフリフリカーテン。床には猫さん柄の絨毯。そして廊下一面に敷き詰められるように置かれた、テディベア。そして何より酷いのが壁や床に描かれまくった、数え切れない程のハートマーク! ああ、趣味悪っ!ここの主は一体どんだけ趣味が悪いんだよ?」 ミレア「可愛くていいんじゃない?」 フィズ「……可愛ければいいのか、お前は?なんかもう……脱帽します……」 ミレア「ちょっと、フィズ?平気?」 フィズ「平気じゃない……かもな。そろそろ脳みそが腐り出しそうな気がする」 ミレア「無理しないでいいよ。フィズも男の子だもんね」 フィズ「男とか女とかの問題なのかどうかは分からないが……こんな事なら、俺も女の子に生まれとくんだったな」 ミレア「キモいからそれはやめて」 フィズ「凹むような事をさらっと言うなあぁっ! ったく、真面目に情けねえ。プロが聞いて呆れるぜ。でも、こればっかりは駄目だ。この城の趣味だけにはついてけない……畜生!一刻も早く、下着ドロを捕まえないといけないってのによ!」 ミレア「いい加減に本題を思い出しなさいよ、貴方は……」 フィズ「参ったな。これじゃ、城の中をろくに調べる事も出来ないぜ。 今の状態の俺じゃ、現場を荒らすのが関の山だ……」 ミレア「よく分からないけど……とにかく、この城で調査なり、聞き込みなりをすればいいわけね(下着ドロのじゃなくて、廃墟の情報についての真偽とか、謎の二人の人物に関しての情報とかね)。 分かったわ、任せてよ。私が少しこの辺りで調査を進めてみるから。 その間、フィズは……」 フィズ「なんか疲れてきたんで、宿に帰ってふて寝します」 ミレア「よろしくない!」 フィズ「だって〜、何かこの城キモヤバって感じだし〜」 ミレア「一昔前の女子高生みたいな喋り方するなあっ! 回れ右してとんずらしたいのは山々でしょうけど、ここで歯を食いしばらないと、貴方はもう二度とプロの探偵を名乗れないわよ」 フィズ「クッ……痛い所を突くヤツだ。分かったよ、ちゃんと調査すりゃいいんだろ。 とりあえず、この辺りの壁でも調べてみるか」 ミレア「……何故そこで壁を調べる?」 フィズ「………………? おい、ミレア!ちょっと変じゃないか?」 ミレア「今度は何を言い出すのよ?」 フィズ「なあ、ミレア。あそこの扉を見てみろよ」 ミレア「あの扉がどうしたの? 見たところ、城の奥へと続く扉みたいだけど……」 フィズ「あの扉に描かれているクマさんの絵さ。クマさんなのにも関わらず、髭が生えてるじゃないか!」 ミレア「あ……本当だ。て言うか、この絵ってネコさんじゃないの?」 フィズ「いや、あれはどう見てもクマさんだぜ。 クマさんの絵の上から、ネコ髭を描くか。なかなか、いい趣味してやがる」 ミレア「……ねえ、本当に大丈夫?そんなシブい顔して、クマさんがどうのネコさんがどうのって言われても、リアクションに困るんだけど」 フィズ「問題は……何故、クマさんに髭が描かれているのか、だ」 ミレア「聞いてないし、この人」 フィズ「絵の状態から判断すると、単に描き損じただけという可能性は低い」 ミレア「……もう一回言うよ。そんなシブい顔して、クマさんがどうのネコさんがどうのって言われても、リアクションに困るんだけど」 フィズ「本当に一言一句、正確に繰り返しやがったな…… だが、とにもかくにも、調べる事がはっきりしてきたみたいだ。目を向けるべくは、この扉の奥だろう」 ミレア「……どうしてそう思うわけ?」 フィズ「怪しい所があるならば、徹底的に調べてみろ。探偵の基本だろ。この先に続くであろう、ネコ髭クマさんの間。まさに怪しさ大爆発だぜ」 ミレア「確かにそのネーミングは、メチャメチャ怪しいわね」 フィズ「そういうわけだから、俺は扉の向こう側を調べてくる。ミレアは、ここをもう少し調べといてほしい」 ミレア「……私が先を調べてくるから、フィズがここに残るってのはどう?(このまフィズを先に行かせると、もっと支離滅裂な事になりそうだし)」 フィズ「この趣味悪部屋に俺一人を残して行く気かよ。勘弁してくれぇ」 ミレア「……冗談よ。そんな、本気で涙浮かべなくたっていいじゃない」 フィズ「ウーム……どういうわけか、時々ミレアの方が年上と錯覚する事がある。精神的な年齢は、案外逆だったりして。 何か……複雑な気分だな」 ミレア「いや、私の方が絶対精神年齢高いって」 フィズ「……とにかく、行ってくる」 ミレア「うん。(変な暴走起こさないように)気を付けてね」 フィズ「そっちもな」 ミレア「貴方に心配されるのは納得いかないけど……とりあえず了解」 フィズ「よし。じゃあ扉を開くか」 『ギイイイ……』 フィズ「なっ!何だとっ……!」 ミレア「いきなりどうしたの?」 フィズ「……何てこった。扉の先に続いているのは、部屋じゃなくて長い廊下じゃないか。 まさか、ここはネコ髭クマさんの間ではなく、ネコ髭クマさんの廊下だったとでも言うのかっ……! 何という巧妙な心理的トラップ!だがしかし、俺は決してこんなものには屈しないぞ!」 ミレア「……もう放っとこう。この人」 フィズ「さあ、このネコ髭クマさんの廊下の先に何が待ち受けているのか。この目でとくと確かめてやる!」
フィズ「何かが飛んでくる? クッ!ここは横薙ぎを繰り出してやり過ごすか……ハアッ!」 死戯「『何でやねん!』でしゅ!」 フィズ「……しまったああぁぁっ!飛んできたのは攻撃じゃなくて突っ込みだったあ! クウッ!俺、格好悪っ!この剣に魔法耐性が備わっていようがいなかろうが、そんな事はお構いなしに最高に格好悪い!」 死戯「なかなかいいボケっぷりをしてるんでしゅねえ。相手に不足はない、でしゅか」 フィズ「……さっき突っ込みを入れた野郎か。 一体、何者だ?周囲を見回してみても、気配はないな。 今、俺がいる部屋は玉座らしき場所だ。そしてここはターミアル城の最上階。ここから先に部屋はない。そして、本来玉座にいる筈の王の姿も見あたらない。 で、ここを調べてみようとした矢先にこの騒ぎだ。 誰だってんだよ?出て来やがれ!」 死戯「おいらはここにいるでしゅよ〜。ほらほら、ここでしゅってばあ〜」 フィズ「……どうでもいい事だけど、お前のその喋り口調だけはパロディになっても全然違和感がないな」 死戯「いやあ、それは照れちゃうでしゅね」 フィズ「誉めてねえって。 ……この部屋の中には、確かに大きな大ボケ野郎の気配を感じる。 出所は……上?そうか、天井か!天井が喋っているのか!」 死戯「……あんたも大概な大ボケ野郎でしゅよ」 フィズ「安心しな。冗談だから」 死戯「あんたが言っていると、全然冗談に聞こえないんでしゅよねえ」 フィズ「そんな事はどうでもいいさ。 丸くてデカい鼻。真っ白に塗りたくった顔。そして、紫一色の衣装、か。まさか、ここで対面出来るとはな。この瞬間を待ち焦がれたぜ。 さぁ、いつまでも天井に張り付いてないで、降りてこいよ、青紫のピエロ!」 死戯「まあ、いいでしゅよ。今降りるでしゅ」 フィズ「よし、いい子だ。ついでにもう一つ頼みを聞いてくれ。 俺はあんたに用がある。だから一緒に来い」 死戯「それは嫌でしゅ」 フィズ「拒否は許さない。従わないのなら……手段は選ばない」 死戯「嫌でしゅよ」 フィズ「こっちは別に、今から目一杯ボケまくって寒い空気を作り出しても構わないんだぜ。今は突っ込み役もいないし、何の問題もないさ。 加減してやるつもりなんざ毛頭ない。下手な期待は今すぐ捨てな」 死戯「何を言ってるのか全然分からないんでしゅけど、て言うか今の段階で十分氷河期なんでしゅけど、とにかく嫌でしゅ。おいらにはやる事があるんでしゅ」 フィズ「俺から退く気はないね。 そういうわけで……勝負するしか道はなさそうだな」 死戯「仕方ないでしゅね……」 フィズ「だがその前に、道化」 死戯「それは、おいらの事でしゅか?」 フィズ「ああ。 あんたの名前を聞かせてくれないか?少し興味があるんだよ。通り名でない、あんたの本名についてな」 死戯「名前でしゅか?おいらの? ……シギでしゅよ」 フィズ「シギ……か。変わった名だな。かの有名な青紫のピエロのお名前が聞けて嬉しいぜ」 死戯「おいらの事を知っているみたいでしゅね」 フィズ「ああ、知っているさ。 伝説のお笑い芸人、青紫のピエロ。この道化現れる所に爆笑の渦ありと言われた程の男だよな。その優れた魔力をも、全てお笑いに注ぎ込むという、恐ろしい男だ」 エリ「って、また公式設定、メチャクチャにしてるし〜」 死戯「……何か、唐突に会話に割り込もうとしている人がいるでしゅよ」 フィズ「出たな。神出鬼没のひっしょり女」 エリ「ご主人様、ひっど〜い!それじゃあエリが変な人みたいじゃない!」 フィズ「みたいじゃなくて、変な人なんだよ、お前は。 とにかく、その名前……覚えといてやるぜ、シギ!」 エリ「なんか、ご主人様がすっごい偉そうだよ〜」 フィズ「やかまし。 さあ勝負だ、シギ!この俺のギャグの腕、とくとその目に焼き付けるがいい!」 死戯「……絶対聞かないでしゅよ」 フィズ「な、何いいっ!何故だ!」 死戯「今までの言動を見る限りでは、ロクなものじゃなさそうでしゅから。どうせ、自分の家の屋根の形が気に入らなくって『や〜ね〜』とか、そういう話をするつもりだったんでしゅよね?」 フィズ「……!何故、分かった?」 エリ「うわ、図星だったんだ〜。聞かなくて良かったよ〜」 フィズ「クッ。俺が徹夜で考えた、ギャグ四天王の一つを読み当てるとは、流石だな」 エリ「一応、気になる残り三つのギャグ(聞きたくないけど)」 フィズ「けれど……まだ、他のがある! 喰らいな!我が最高のギャグを!」 エリ「どこかの女剣士とキャラ被ってるし〜」 死戯「おいら、そろそろ帰りたいでしゅ」 フィズ「逃がすかあっ!聞けええっ!」 死戯「分かったでしゅよ……しつこいでしゅね」 フィズ「よし。では心して聞け」
(しばらくお待ち下さい)
フィズ「どうだぁっ!俺のギャグは!」 エリ「……あまりの聞き苦しさに、カットされちゃってるよ〜。シギちゃんも、何か床に倒れ込んじゃってるし〜」 フィズ「ちゃんをつけるな、ちゃんを。 まあ、立てる……はずもないか。俺のギャグをまともに受けたんだ。暫くは笑い転げて、起き上がる事すら出来ないだろうよ。どうやら、手も足も出ないうちに勝負がついちまったらしいな。 大人しくしてれば、もう少しは俺のギャグを堪能出来たんだろうがな。 ともあれ、こいつもこれで……」 死戯「……勘違いしないでほしいでしゅ。今のは受けてたんじゃなくて、あまりのしょうもなさに気絶してただけでしゅよ」 フィズ「なっ……!」 エリ「エリは〜、ご主人様といつも一緒にいるから免疫ついてるけど〜。初対面の人はキツいよね〜」 死戯「全く、おいらからしてみればまだまだでしゅよ。ギャグセンスゼロでしゅね」 フィズ「嘘だろ…… あのギャグを喰らって、何故笑い転げないんだ?最後の一発ギャグは、俺にとって会心の作だったのに。 はっ!まさか……耳栓してたのか? そんなの、反則だっつーの!」 死戯「そう言われても困るんでしゅがねえ。でも、あんたには少しギャグのお勉強をしてもらった方がいいような気がするでしゅ」 エリ「あ、エリもそれ賛成〜」 死戯「というわけで、今度はこっちの番でしゅ。たっぷりお返ししてやるでしゅよ。 今のはかなり寒かったでしゅからね。おいらも怒り心頭でしゅ」 フィズ「クソ野郎が!」 死戯「心配しなくていいでしゅよ。おいらはボケとかよりも、突っ込みの方が得意なんでしゅ。今から、あんたの行動を逐一突っ込んであげましゅ。 というわけで、行くでしゅよ!」 エリ「わ〜い!突っ込み役の人がいた〜」 フィズ「チッ! まさか、こんなはずでは……くっそお!俺の野望がああっ!」 死戯「何で、そこでいきなり悪の大魔王みたいな台詞になるんでしゅか!(バシッ!)」 フィズ「……ッ!貴様、突っ込みに徹するつもりか。 話せ!もっと話しやがれ!」 死戯「あんたの場合、突っ込みどころが多すぎるんでしゅ!(ビシッ!)」 フィズ「グ……アウッ! あ、熱い……腕が灼ける!」 死戯「って、何でいきなり火傷のダメージ受けてるんでしゅか!(ビシバシッ!)」 フィズ「……!」 死戯「お笑いというのは、ただボケればいいってわけじゃないんでしゅよ。所詮は口だけだったって事でしゅかねえ」 エリ「……何だ、この展開〜?」 死戯「あらら。突っ込み役が二人になっちゃったでしゅねぇ」 フィズ「は……話せ」 死戯「んん?何でしゅか?」 フィズ「突っ込んでばっかりじゃなくってよぉ……もっとボケをあちこちに振りまきながら話しまくりやがれ!」 死戯「これ以上、ボケ役が増えると本気で収拾がつかなくなるでしゅよ」 フィズ「全くその通り……反則だぜ」 エリ「もう何がなんだか、さっぱり分かんないよ〜」 死戯「しょうがないでしゅね。次の突っ込みで決めてあげるでしゅよ」 フィズ「こいつ……一体、いくつのネタを操れるんだ?まるで、きりがないぞ」 死戯「おいらにここまで突っ込みをさせた人間は数少ないんでしゅ。だから誉めてあげるでしゅ。でも、それが限界みたいでしゅね。 覚悟はいいでしゅか?おいらの《業火灼熱無限大》ならぬ《豪華百烈大突っ込み》で、突っ込みまくってくれるでしゅ」 フィズ「クソ野郎が……て言うか、何だよ、その変な魔法は? クッ……もっとボケたいのは山々なんだが、すでに身体が言う事を聞いてくれない。 駄目だ…… 死戯「そこまでの様でしゅね……じゃあ行くでしゅよ。 豪華ぁっ!」 エリ「わ〜、何だか凄いよ〜」 フィズ「な……何て突っ込みだ……こんなの受けたら、ひとたまりもないぞ!」 死戯「次で決めるでしゅよ!」 魔危「そうは……左遷!」 エリ・死戯『……は?』 フィズ「『〜させない』という言葉と『左遷』をかけたというわけか。こんなくだらねえギャグを飛ばすヤツと言えば……」 魔危「話は後だ」 フィズ「……やっぱりあんただったか。 ともあれ、この女のボケっぷりは常識の範疇を超えている。あるいは、これで青紫のピエロにも対抗出来るかも……」 魔危「気を抜くな」 フィズ「何……?」 魔危「ヤツにもまだ次の手がある」 死戯「その通りでしゅよ。 て言うか、あんたは本編とキャラ違いすぎる上に登場が唐突すぎますから!百烈突っ込み!」 フィズ「うわ!いきなり突っ込んできた!」 魔危「フッ!私とて、エリ殿からの呼び出しメールを受け取らなければ、こんな所にまで足を運ぶ事もなかったわ!」 エリ「わ〜い!エリが送ったメール、見てくれたんだぁ〜」 フィズ「結局、アドレス交換したのかよ、お前ら…… あんたがここで登場するとは思わなかったが、成程そう言う事だったのか。 危機一髪で、俺を助けた(?)のは、昨日一戦を交えたばかりの女剣士だった。あれだけ無視してやったんだから、俺はまたてっきり泣きながら田舎に帰って芋でも育ててるんじゃないかと思ってたんだが……」 魔危「貴公が何を言っているのかはよく分からんが…… ともあれ、貴公らがこの地に足を踏み入れた以上、あの場でギャグを言い続ける理由もなくなったからな」 死戯「全く、またあんたでしゅか〜?おいらの邪魔をするなでしゅよ」 何なら、二人まとめて突っ込んであげてもいいんでしゅよ」 魔危「貴様風情が、よく吠える。 私に突っ込みを入れるだと?……入れられるものなら入れてみるがいい。可能性は皆無に等しいが」 死戯「どうでしゅかねえ?おいらをあまり甘く見ない方がいいでしゅよ」 エリ「ふえ〜……何か、よく分からないけど、凄い展開になってきたよ〜」 フィズ「ああ……この場面では、オリジナル版でも超絶な死闘が行われている。果たして、こちらのパロディ版ではどの様な展開を見せるのか…… 微動だにせず、視線をぶつけ合う二人。 俺に言わせれば、どちらも常識外れの化け物だ。お笑いの定理そのものを根本から覆しかねないほどの突っ込み、シギ。東国の目にも止まらぬ一人ボケ突っ込みを操り出す達人、名も知らない女剣士。 ……今さらながらに震えが来た。別世界に迷い込んぢまったみたいな気がする。 でも、何故だ?そこまでの変人共がこんな所に何の用がある?」 エリ「うわ。はっきり変人って言い切っちゃったよ〜」 死戯「じゃあ、行くでしゅ。 そもそも、あんたは……」 魔危「襲い!……じゃなくて、遅い!」 死戯「クッ!なかなか出来るでしゅね」 フィズ「……………… やっぱり、よく分からん。この勝負」 死戯「でも、はっきり言って寒いでしゅよ!」 魔危「なかなか痛いところを突く……」 エリ「痛いんだ……」 フィズ「確かに痛いところだらけな気はするけどな。 やはりお笑いに関しては、シギが一枚上手なのか……」 死戯「いいでしゅねえ。やっぱりあんたは、おいらにとって最高の相方でしゅよ」 魔危「戯れ事をぬけぬけと……虫酸が走るわ」 死戯「そうこなくっちゃ、でしゅよ」 魔危「笑い倒れるのは貴様一人のみ。 許されがたき己が才能、死ぬ程笑い転げた時の、あの腹の痛みを伴ってこそ知るがいい」 死戯「何言ってるのかさっぱり分からないでしゅよ! 遊ぶのはここまででしゅ。本気で突っ込んでやるでしゅ」 フィズ「……今までの分でも、まだまだ本気じゃなかったのかよ。ふざけるのもいい加減にしろってんだ。これ以上、この場を寒くしないでくれ」 魔危「……『寝間着−パ』、だ」 フィズ「は?」 エリ「……あ、エリ分かったよ〜。 寝間着ってパジャマの事でしょ〜。『パジャマ−パ』だから、パジャマからパを取ったら……」 魔危「……邪魔(ジャマ)だ!貴公は、我々の勝負に邪魔だ!」 フィズ「俺らの事かああっ!最初っから、普通に言ええええっ!」 魔危「ここより先こそが真の笑い道。この場に残るならば、十二分に心するがいい」 フィズ「簡単に言いやがって……あんたの寒いギャグを聞くのはもううんざりなんだよ!」 魔危「貴公の選んだ道だ」 フィズ「選んでない選んでない」 死戯「何だか、おいらそっちのけでしゅねえ。まあこういうのも、暇でいいでしゅよ。 で、次はどうするんでしゅか?」 魔危「こうだ……」 エリ「幸田さ〜ん、マキちゃんが呼んでるよ〜」 死戯「って、人の名前と違う!」 魔危「なっ!今のボケっぷりは……っ! エリ殿、なかなかの腕前と見た」 エリ「えへへ♪それ程でも〜」 魔危「貴殿ならば、このお笑い合戦に参加する資格がある。私と共に、奴を笑わせてはくれぬか?」 エリ「いいよ〜。一緒に頑張ろ〜」 フィズ「何てこった……エリまで一緒になりやがったか……」 魔危「そういうわけだ。 我ら二人で、天駆けるボケを己が身に刻んでくれるわ」 フィズ「どんなボケだよ?天翔るボケって」 死戯「そうくるでしゅか。なら、こっちもでしゅよ」 フィズ「奴の源は、突っ込みの力……か。 そう言えば、さっきの変な名前の魔法にしてもまさに突っ込みの塊だ。 化け物共が……こいつらのネタは底なしなのか……」 死戯「終わりにしてやるでしゅ」 魔危「このボケをもってな」 フィズ「ボケの力と突っ込みの力。二つのネタがぶつかり合う。 いけない……あまりの寒さに気が遠くなる。クッ……寝たら駄目だ。寝たら……こんな、ギャグ合戦を聞きながら遭難するなんて、末代までの笑い者だ…… でも、もう、限界だ……」
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