Mission2 城下崩壊の真相を暴け?
1 フィズ「オヤジ、入るぞ」 クリマ「よお、フィズか」 フィズ「調べ物かい?慣れない事を頑張ってるねえ」 クリマ「ああ。俺が穿いても似合うルーズソックスがあるかどうか、カタログを開いて少し調べてたんだ」 フィズ「……絶対似合わないからやめとけって。変質者かよ、あんたは。 そう言えば、ヘルゼーラの姿が見えないな。スクールから帰ってると聞いてたんだが、どこだい?」 クリマ「ブルセラショップに買い物に行かせた。直に戻ってくるんじゃねえか」 フィズ「………………」 クリマ「ところで、何か用か?」 フィズ「あ、ああ。これを渡しに来たんだ」 クリマ「ん?」 フィズ「ジュエルだよ」 クリマ「ああ……そうかい。 ブルーに……レッド……クリアもあるか。はん、上等じゃねえか」 フィズ「簡単に言ってくれるよな。そんだけ稼ぐのに、俺やミレアがどんだけ苦労したか。 頭から覆面を被って、銀行を襲い、『ジュエルを出せ!』とでかい声を出して……」 クリマ「やっぱり今すぐ返してこい、このジュエル」 フィズ「冗談だよ。ちゃんと働いて稼いだものさ」 クリマ「働いてねぇ……まさか、悪事を働いて稼いだ、な〜んて言うつもりじゃねえだろうな?」 フィズ「うっ!オチを先読みされてしまうとは。流石は〈槍を尊ぶ者〉……」 クリマ「そんなどうでもいい事で、俺の通り名を出されても困るんだが…… まぁ何にせよ、若いうちに苦労は積んどかないといけねえぜ」 フィズ「いい加減教えてくれないか、オヤジ? 俺が渡したジュエルも、そろそろ結構な量になってるはずだよな。それを使ってどうしようってんだよ?」 クリマ「テメエは気にしなくていいんだよ」 フィズ「気になるっての。最近、オヤジの暮らしがやけに贅沢になってきてる様な気がするんだが……」 クリマ「ああ。少しばかり手間賃として、ちょろまかしているからな。こないだ食いに行ったステーキは美味かったぜ」 フィズ「オイ待て、クソオヤジ」 クリマ「心配するなって。必ず返してやらあ」 フィズ「信用出来ねえっての」 クリマ「ところで、フィズ。お笑いの調子はどうだ?」 フィズ「……順調だよ。今のところはな」 クリマ「そうか。 別に信用してないわけじゃないがな。もう二度と、下手なボケに呑まれちまうんじゃねえぞ」 フィズ(あんたといれば、嫌でも突っ込みの方の回数が多くなってくるよ……) クリマ「突っ込みの練習も毎日欠かさずやるんだぞ。手首の捻りをこう加えて、声高々に『何でやねん!』と……」 フィズ「へいへい、ちゃんと分かってますって。突っ込みの訓練も、毎日かかさずやってるしね」 クリマ「フッ、まだまだだな、フィズ・ライアスよ。今の会話にこそ、突っ込みが必要なのだぞ」 フィズ「何ぃっ! くぅっ、お笑いの世界ってヤツはとことん奥が深いぜ!」 ヘルゼーラ「……さっきから、二人で何をじゃれ合ってんだよ?」 クリマ「ム……ヘルゼーラ。帰ってきてたのか。随分と遅かったな」 ヘルゼーラ「牛歩戦術の練習をしてたんだ」 フィズ「……素直に道草をくってたと言えよ」 ヘルゼーラ「って、駄目じゃないか、兄さん!そんなストレートな言い方したらバレちゃうだろ! 干し肉、買ってきたけど……俺一人で食っちゃうからね」 フィズ「おゆるしくだせぇ、へるぜえらさま。あたまじべたにつけて、ひらあやまりにあやまりますから」 ヘルゼーラ「何か棒読みで全然感情がこもってないみたいなんだけど……何か可哀想になってきたから、あげるよ。 ところで姉さんは?」 フィズ「バイト先。何でも忙しいらしくてな」 ヘルゼーラ「そっかぁ……」 クリマ「なぁ、ヘルよ。俺への土産はないのか?」 ヘルゼーラ「頼まれたのは全部買ってきたよ。ブルマだろ。セーラー服だろ。それからマニアックなコスチュームが何着か……」 フィズ「……変態」 ヘルゼーラ「俺じゃないって!親父が買ってこい買ってこいって言うからさぁ! 恥ずかしいのなんのって……お陰で、もう俺お嫁に行けなくなっちゃったよ」 フィズ「多分、最初からお嫁には行けないんじゃないかと思うが……」 クリマ「なぁ、ヘル〜。俺へのプレゼントは?常日頃からお世話になってるお父さんに感謝を込めて『これ、僕の気持ちです。受け取って下さい』みたいなアレはないのか?」 ヘルゼーラ「お礼はお礼でも、お礼参りをしたい気分になってきたよ……」 クリマ「そうかい……」 ヘルゼーラ「落ち込むなって。ホントに落ち込みたいのは俺の方なんだからさ。。 まあ、土産はないけど……ちょっとした土産話ならあるよ」 フィズ「ホウ?」 ヘルゼーラ「あんまりいい話じゃないんだ。むしろ、ヤな話なんだよね」 フィズ「……自動販売機の下に五百円玉落として取れなくなったとか?」 ヘルゼーラ「それもかなりヤな話だけどさ。俺が仕入れてきたのは、ちょっと不思議な話なんだよね。 ターミアル地区の城下町、音信不通になってただろ。その事について、巷で変な噂が流れてるんだ」 フィズ「変な噂?」 ヘルゼーラ「スクールのマスターが、ターミアルに向かったんだって」 フィズ「……本当か?そいつは……確かに変だな。 〈魔を極めし者〉であるマスターか。〈槍を尊ぶ者〉とどっこいどっこいくらいの変人として知られている男が、何故ターミアルに?」 クリマ「待て、コラ」 フィズ「なぁ、オヤジ。何か知ってるんじゃないのか?」 クリマ「さあ……知らねえなあ」 フィズ「根に持つなよ。謝るからさぁ。 マスターの名前が挙がってるんだ。ともなれば、あんたが絡んでると考えるのが当然だろう?」 クリマ「マスターねえ。そういや、久しく会ってねえなあ。今頃、スクールで盗撮でもしてるんじゃないか?」 フィズ「クビにしろ、そんな校長。 ったく、このオッサンに訊ねたのがそもそもの間違いだったか。面倒臭えが、いつも通りにしようかな……」
フィズ「邪魔するぜ」 フェイカー「いらっしゃいませ」 フィズ「ここは、バー〈クルーヴ〉。俺がよく来る馴染みの店だ。食堂も兼ねているデカい酒場で、そのせいかちょいと値は張る。でも、ここの酒はなかなかいけるんだぜ。 そしてもう一つ。〈クルーヴ〉は情報の提供屋でもあるんだ」 フェイカー「何をぶつぶつと呟いてらっしゃるんですか?」 フィズ「いや、何でもねぇよ。 それよりアインの地酒、くれ」 フェイカー「まだ準備中です。 ついでに言うと、アインの村では人喰い花の鼾と寝言と歯ぎしりが五月蠅すぎて、全く湧き水が取れないそうです。よって地酒もありません」 フィズ「逞しく生きてやがるなぁ、あの野郎」 フェイカー「今度こそはきちんと依頼をこなしてきて下さいよ、ライアスさん」 フィズ「固えなあ。いつもの事だろ」 フェイカー「いつもの事なんですか……相変わらずですねえ」 フィズ「ついでに相棒返してくれよ」 ミレア「呼んだ?」 フィズ「うわ、ビックリした! いつからいたんだよ、ミレア?」 ミレア「何言ってんの、フィズ。私、最初からずっといたわよ」 フィズ「そうだったのか?」 フェイカー「この手の小説では適当なところで自己PRをしておかないと、完全に無視されたままで話が進んじゃうみたいですからねぇ……気を付けないと」 フィズ「いや、だって喋ってくれないとホントに分かんないし」 ミレア「ねぇねぇ、どうしたの?何かあった?」 フィズ「ちょっと気になるネタを仕入れたんでな。 別に仕事じゃないから、無理にとは言わないが……お前も付き合うだろ?」 ミレア「ゴメン、フィズ。今回パス」 フィズ「決断早っ!つ〜か、ちょっとは考えようよ!」 ミレア「だって、絶対ロクな話じゃなさそうだもん。この間だって『面白い物を見せてやる』って言うからついて行ったのに、フィズったらお箸が転げるのを見て一人で大爆笑してるんだもの。あの時の空気は耐えられなかったわよ」 フェイカー「箸が転げてもおかしい年頃を地で行ってるんですか……なかなか痛いですね、ライアスさん」 フィズ「しみじみ言うなああぁぁっ!恥ずかしくなってくるだろうが! いいもん、いいもん。俺、一人で調べるから」 ミレア「あ、いじけた」 フェイカー「お酒が飲める年の人が取る行動には見えませんねぇ……」 フィズ「いじいじ……情報を売ってくれよぉ、フェイカー」 フェイカー「いじけながら泣きつかれても困るんですが……どんなのがお望みで?」 フィズ「ターミアル地区に関しての新しい情報、売って売って〜♪」 フェイカー「………………」 フィズ「なぁ、フェイカー。興味本位のついでだ。くだらない事でもいいから、話してみな」 ミレア「って、いきなりシリアスに戻らないでよ。見てる方も戸惑うじゃない」 フィズ「いや、ここは原作に忠実に展開した方がいいかなぁ、と思って」 ミレア「どうせまた何の前触れもなくコミカルになっていくんでしょうに……」 フィズ「まぁ、そん時はそん時さ。 で、どうなんだよ、フェイカー?今は、平静を装ってるつもりだろうがな。俺は、はっきりと見たぜ。あんたの顔に浮かんだ動揺を。心の内を見透かされるなんざ、情報屋としては二流か三流だぜ。あんたが未熟だったせいじゃなく、俺が探偵として観察に長けていたにしてもな」 ミレア「分かった。単に自分の洞察力を自慢したくなったから、無理矢理シリアスに戻したのね」 フィズ「バラさないで……頼むから」 フェイカー「……流石ですねえ、ライアスさん」 フィズ「お、フェイカーもそう思うかい?」 フェイカー「ちょっとした合間にも自己主張を忘れぬ図々しさは誰にも真似出来ませんよ」 フィズ「……そんなとこ誉めんでよろしい」 フェイカー「これも宿命でしょうか。 まあ、いいでしょう。自分の聞いている限り、ターミアルについての情報を提供させてもらいましょう」 フィズ「何が宿命なのかさっぱり分からないんだが、出来れば洗いざらい聞かせてほしいもんだな。 ……で?情報量はいくらになる?」 フェイカー「後払いで結構ですよ」 フィズ「どういう事だ?基本的に情報料ってのは前払いだろ?」 フェイカー「報酬をお渡しする際に差し引かせて頂こうかと」 フィズ・ミレア『報酬?』 フェイカー「ターミアルを調査してくださるなら都合がいい。 仕事という形で結構です。報酬もお支払いします。ですから、一つ頼まれていただけないでしょうか?」 ミレア「ちょっと待って、フェイカーさん! まさか、こんなヘボ探偵に何か仕事を依頼する気なの?今からでも遅くはないから考え直して下さい!」 フィズ「お前、それでも俺の相棒かよ……」 ミレア「フィズに仕事を任せるなんて、神様への冒涜にも値する行為だわ!さぁ、悔い改めなさい!」 フィズ「そこまで言うか……」 ミレア「ねぇ、フェイカーさん!」 フィズ「……行くっきゃねえな」 フェイカー「交渉成立ですかね?」 フィズ「早いとこ仕事を引き受けないと、あんたがミレアに説得されかねないからな」 フェイカー「いえ。実はすでに九割方、他の方に頼もうかと考え直していたところなのですが……」 フィズ「駄目駄目!絶対駄目!」 ミレア「情けない探偵……」 フェイカー「何やら激しく不安を覚えているのですが…… まずは情報を提供しましょう」 フィズ「頼む」 フェイカー「ずっと連絡の途絶えていたターミアル地区の城下町ですが……現在、廃墟となっている事が判明しました」 フィズ「ま、そんなとこだろうとは思ったよ」 フェイカー「それともう一つ。 直接の原因と結びつくかは不明ですが、ターミアルにて大規模なお笑い合戦が行われていたらしいのです」 フィズ「それ、多分全然関係ない情報だと思うぞ」 ミレア「私もそう思う」 フェイカー「具体的に述べるならば、凄腕の剣士と魔法の使い手が、一対一で激しくボケて突っ込み合っていたとの事になります」 ミレア「何で凄腕の剣士と魔法の使い手がお笑い勝負をしなきゃならないんだろ……」 フィズ「つ〜か、闘えよなぁ」 フェイカー「とにかく! ライアスさんとタガーノさんにはターミアルの調査をお願いしたいのです」 ミレア「えぇ?私も? あの……こちらでのバイトは?」 フェイカー「当然!ターミアルに赴いている間のバイト料はカットです!」 ミレア「しくしくしくしく……世の中って理不尽なのね」 フィズ「そんな事で世の儚さを嘆かれても困るんだが…… ああ、とにかく!そうと決まれば早速ターミアルに行くぞ!ミレアもいつまでも草葉の陰でさめざめと泣いていないで、早く準備をするんだ!」 エリ「いよいよ仕事の始まりね。燃えるわ!」 フィズ・ミレア・フェイカー『って、誰だお前はぁっ!』
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