戦争……いつになってもなくならないものですね。戦争を放棄したと言われるこの国の歴史を紐解いてみても、源平の合戦から太平洋戦争まで、実に様々な戦争が繰り広げられてきたわけです。 戦場に生きる兵士達も……殺伐とした生活を送る中、今日のこの日が訪れる事を心待ちにしていたのかも知れません。たとえ、戦場を離れる事が出来なかったのだとしても。
第四話 戦場のメリークリスマス
「なあ。今日って何の日だっけ?」
どこかぶっきらぼうな口調で、俺は隣の男に話しかけた。
「分かり切った事聞くなよ。俺達には関係のない話だろ」
彼もまた、嘆息混じりのやる気のない声で、返事をする。
「愚痴りたくもなるよ。だって……今日はクリスマスなんだぜ」
「……そうだな。まあ、気持ちは分かるよ」
いつの頃からだっただろう?俺達にとって、クリスマスが普段と何ら変わりのない、ありきたりな一日となってしまったのは。終わりなき戦争に参加し続けている俺達には、酒を飲んで騒ぐ事も、恋する人と共に聖夜を過ごす事も、許されてはいなかったんだ。
これが一年や二年であれば、まだ我慢の出来る話だ。だが、現実はそんな生易しいものじゃない。この戦争は、いつまで経ってもまるで終わりが見えないのだから。
「はあ……」
幾度目かの溜め息をついて、俺は再びシャープペンシルを握りしめた。
「今度こそは、合格してやる。終わりなき受験戦争に、ピリオドを打つんだ」
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