初めに言っておきましょう。私は、超が十個つくほどのずぼらな人間です。年の暮れも押し迫って、そろそろ掃除に取りかからねばならない時期になっているのですが……私の部屋はどこから片付ければ良いのか分からないくらい散らかっています。年賀状も、まだ一枚も書いておりません。 この話に登場する奥様とは、まさに正反対の人間です……
第三話 几帳面人間
自分で言うのもおかしな話だけれど、私はとても几帳面な性格だ。
幼い頃から、私は厳格な両親の元でしつけられてきた。ちょっとでも部屋が散らかっていたらすぐにぶたれ、ご飯粒をテーブルの上にこぼしただけでも大激怒。テレビを点けたままにしていようものなら、家の中が文字通り地獄と化す。
そんな教育を受けてきて……私もすっかり几帳面が板についてしまった。
十年ほど前に愛する人と結婚して以来、両親とは離れて生活している。そして、現在は二児の母。
でも……三つ子の魂百までという事なのかしら?私の中に深く根を生やした、几帳面という言葉は決して消える事はない。
今日はクリスマスイブ。子ども達もこの日が来るのを楽しみにしていた。
午後八時に主人が帰宅。親子四人で、いつもよりも二千円ほど奮発した夕食をとる。そしてその後、いよいよケーキを食べる事になった。
尤も、我が家ではクリスマスケーキを食べ始めるまでに莫大な時間がかかるのだけれど……
深夜一時。日付が変わり、子どもは二人とも寝てしまった。
食卓の上には未だ誰にも手がつけられていないケーキが乗っている。
「………………」
私は真剣な面持ちで、蝋燭を手に取った。
「これで、1249本目」
クリームに覆われたスポンジケーキに蝋燭をさす。
「あと、756本……もう少しよ」
「……いい加減に食わないか?」
正面にどっかりと腰を下ろした主人は、何故か呆れたような視線を私に向けてくる。
「そんな事やってたら夜が明けちまうぞ。子どももみんな寝ちゃったし……早く、ナイフで切り分けよう」
その言葉に、私は憤慨せずにはいられなかった。
「何を言ってるの、あなた?」
信じられない。こんないい加減な事を言う人だったなんて。私は真っ向から主人を責め立てた。
「いい?クリスマスって言うのはね、イエス様の誕生日なのよ。だから、クリスマスにはそちらのお祝いもしないといけないの。
今年は西暦2005年。イエス様が生まれてから2005年が経つわ。今でも生きていらっしゃったら2005歳。だから、ケーキの上にも蝋燭を2005本立てなくちゃいけないのよ」
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