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| サンタさん、という言葉には誰もが胸を躍らせた事があるでしょう。まさにクリスマスの風物詩ですね。 真っ赤な服に身を包み、プレゼントがぎっしり詰まった大きな袋を携えて。サンタさんは、今頃子ども達の元を訪れているのかも知れません。
 ……おや?この物語に登場する人物も、サンタさんの到来を心待ちにしているようですよ。
 
 
 
 
 第一話 サンタが聖夜にやってくる!
 
 今年も遂にやってきた。
 
 十二月二十四日。クリスマスイブ。ボクはこの日が来るのをずっと楽しみにしてたんだ。
 
 クリスマスには、いつもサンタさんがプレゼントをくれる。それがとっても楽しみなんだ。サンタさんが来てくれるのはいつも夜中だから、ボクはいつも夢の中。サンタさんがどんな顔をしているのか、一回も見た事ないけど、それでもボクはサンタさんを信じてるよ。
 
 「今年はアニメのDVDが欲しいな」ってママに言ったら、サンタさんに頼んでくれるって言ってたんだ。明日の朝がとっても楽しみ!
 
 サンタさん、今年もボクんちにプレゼント持ってきてくれるかなぁ……?
 
 
 
 
 ひっそりと静まりかえった夜半。母親は、そっと息子の部屋に忍び込んだ。
 
 彼を起こさぬように注意してベッドに近づき、サンタクロースの絵柄のラッピングが施された包みを枕元に置く。
 
 今年も息子に気付かれなかった事を確認して、母親は安堵の溜め息を漏らした。
 
 「ボクちゃん。これが四十歳のクリスマスプレゼントよ」
 
 無精髭を生やした息子の寝顔を見つめ、年老いた母親はそっとそう呟いた。
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