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聖なる夜の贈り物 2006  作者:殻鎖希

第8回   捨て駒の兵士達
 戦場。それは、人の命があまりにも無惨に、そして理不尽に失われていく場所です。数多の屍の果てに勝利を得たとしても、その勝利にどれ程の意味があると言うのでしょうか。そして、戦場に立つ兵士達は今際の際に一体何を思うのでしょうか。
 これからお話するのも、ある一つの戦場で死地に赴く戦士達の嘆き……そして葛藤を描いた物語です。



第七話 捨て駒の兵士達

 耳を劈いた断末魔の叫びは、しかしながらあまりにも呆気なく、儚いものであった。

 あれは俺の前に待機していた奴の声だ。奴は死んだ。そして、次は……俺が闘う番。助かる見込みはほとんどない。

 ガタガタと震える俺の肩を、後ろに待機している奴が小突いた。

「ほら、次はお前の番だぞ。早く行け」

 こうなっては最早恥もへったくれもない。大きく頭を振り、俺は半狂乱になって叫んだ。

「嫌だっ!俺はまだ死にたくない!」

「我が儘を言うな。死にたくないのは皆一緒なんだ。

 それに、必ず死ぬとは限らん。うまくいけば、助かるかも知れんぞ」

「そんなわけないだろう!これまで一体何人が死んだと思ってるんだ!」

 あぁ、これが喚かずにはいられるだろうか。この世界では、俺は自分の意思で闘う事すら出来ない。他人の指示に全てを委ね、自分の身体を動かすしかないのだから。

 あぁ、ここは何という理不尽な世界なのだ。俺が死んだところで、誰一人として涙を流す者はいない。駒を一機失った、所詮はただそれだけの事なのだから。

 必死の抵抗を試みたところで、それが功を奏する筈もなく――遂に俺は戦場に立たされる事になった。もう自分の意思で身体を動かす事も出来ない。どこからともなく、およそ戦場には相応しくない軽快な音楽が聞こえてくる。あぁ、この音楽こそ、まさに黄泉への旅路の案内人となる鎮魂歌に違いない……



「あ〜あ、またやられちゃったよ」

 少年はそう言って、手にしていたゲーム機のコントローラーを放り投げた。

 モニターには、ジャンプのタイミングを誤り、奈落の底へと落ちていくキャラクターの様子が映し出されている。

「へったくそだなぁ、お前。これでもう残り三機しか残ってないぞ」

 横でプレイを眺めていた友人が、見かねた様子で口を挟む。

「分かってるって。次は絶対クリアするから」

「お前の『絶対』はあてにならないっての」

 友人の野次にもめげる事なく、少年は床に転がったコントローラーを再び手に取る。



 そうして――次なる兵士の、絶望に彩られた闘いが始まった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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