クリスマス、と言えば皆さんは何を思い浮かべるでしょう? 煌びやかな装飾の施されたツリーや、闇の中で厳かな輝きを灯すイルミネーションでしょうか。あるいは、見ているだけで涎が出そうになるケーキや七面鳥かも知れませんね。そして、もう一つ。クリスマスと聞いて絶対にかかせない事……そう、それはサンタクロースです。 去年にお贈りいたしました『サンタが聖夜にやってくる!』に引き続きまして、今年もサンタクロースに関するお話を用意させていただきました。それでは、どうぞお楽しみ下さい。
第六話 僕の彼女はロマンチスト
僕には付き合って五年になる、麗子(れいこ)という彼女がいる。五年と言えば、なかなか長い付き合いだ。身近な友達の中には、付き合い始めて一週間もしない内に別れたなんていう人もいるけれど、僕にはそんな心配は要らない。僕は彼女を絶対に裏切らないし、彼女もまた僕の事を信頼してくれているからだ。
麗子はとても純情な女の子だ。だってそうだろう?もう立派な大人なのに、未だにサンタクロースを信じてるんだよ。そう、麗子は今でも、毎年サンタクロースにプレゼントをお願いしているんだ。
おそらく今頃も、何を貰おうかと考えているだろう。よし、今度会った時に本人に聞いてみよう。
「なぁ、麗子。今年は何をサンタさんにお願いするんだい?」
「そうね。今年はエルメスのバッグがいいな〜。あ、ほらほら、これなんか良いと思わない?」
差し出された雑誌を受け取り、麗子の指差すお目当ての品物に目を向ける。成程、上品そうなハンドバッグだ。お淑やかでロマンチストな麗子にも似合うだろう。だけど、問題はそこではない。
僕は写真の下に書かれている数字に目を通し――そして、絶句した。
「よ……四十万……」
高い。高すぎる。安月給の僕にはあまりにも負担が大きすぎる買い物になるだろう。
隣で言葉を失っている僕を尻目に、麗子は無邪気な笑顔でこう言った。
「今年もサンタさん、来てくれるのかなあ?楽しみにしているね」
「あ……あぁ……分かったよ。僕からきちんとサンタさんにお願いしておくよ」
額に脂汗をびっしりと滲ませながらもかろうじて笑顔を作り、僕がそう言うと、麗子は天使の様な微笑みを浮かべて僕の腕の中に飛び込んできた。
可愛い。それに、とても純真な彼女だ。そうさ、そんな麗子のためなら、エルメスだろうがヴィトンだろうが決して高くない。サンタクロースを信じているという彼女の夢を壊さないためにも、僕がプレゼントを用意してあげなければ。
彼女の要求するプレゼントが年々高価なものになっていくような気がするが……それもきっと気のせいさ。
僕の彼女はロマンチスト。今時珍しい程に素直で純情な最高の女の子だ……
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