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聖なる夜の贈り物 2006  作者:殻鎖希

第6回   ある暗い女の話
 性格というものは、千差万別なものです。その人の人生の中で培われ、形となったものであり、その人自身の個性であると言っても良いでしょう。
 おや?このお話に登場する女性は、非常に暗い性格の持ち主のようですよ。



第五話 ある暗い女の話

 暗い女。その場にいた誰しもが、彼女を一目見た時にそんな印象を抱いたのも無理はない話だった。

 その表情には全くと言っていい程、明るさが感じられない。目鼻立ちが非常にすっきりとしており、顔立ちは整ったものであったが、異様ともとれるその雰囲気は、周囲の者を全く寄せ付けない程のものであった。

 俯いたままぶつぶつと独り言を呟く彼女に、近くの席に座った者はまるで化け物か幽霊でも見る時のような視線を投げかけている。

 ――そうして、どれ程の時間が流れた頃だろうか。

「それでは次の人、お入り下さい」

 スーツ姿の男に声をかけられ、彼女はのっそりと立ち上がった。



 彼女は部屋の中に入り、用意された椅子に腰を下ろした。その正面には、五人の男が並んでいる。

 男達は彼女に対して、幾つかの質問を行った。

「あなたの名前を教えて下さい」

「本社への志望動機をお聞かせ下さい」

「学生時代にはどのような活動をされていましたか」

 男達から投げかけられる質問に、彼女はぼそぼそと返事をした。その声はとても小さく聞き取りにくいものである。

「では、次に――」

 おそらくは意図的に渋面顔を作った一人の男が、彼女に対してこんな事を訊ねかけた。

「あなたは本社に就職した後、特にどのような事を心がけたいと思いますか」

 男の質問に対し、彼女は床に目線を落としたまま、もぞもぞと答えを返したのである。

「はい……いつも、明るく……元気に……笑顔を忘れないようにしたいと思います……」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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