皆様は本を読む事が好きですか?あるいは、本を読むのが好きだからこそ、こうした小説も読んで下さっているのかも知れませんね。 その中には「本を読むのが好き」というレベルに留まらず、「読書をする事が我が生き甲斐」とまで感じている人もいらっしゃる事でしょう。そう、この物語に登場する女の子のように。 彼女は所謂読書熱中症。一度何かを読み始めると、止まらなくなってしまう質のようですね。
第三話 読書熱中症
(『苦労をかけてすまんな、頼子(よりこ)。じゃが、儂もそう長くはないようじゃ』 ふぅっと溜め息をつくと、父は手にした湯飲みの茶に口をつけた。 そろそろと茶を啜る父を前に、一体どのような言葉がけをすれば良いのか。その事を知るには、頼子はまだ若すぎた。 空になった湯飲みを受け取り、あちらこちらに染みのついた布団をかけてやる。 『お父さん……』 頼子は父の手を強く握り締めた。そうする事が、彼女にとっての精一杯の親孝行だと思えたからだ)
私は血眼になって、紙面に書かれている活字を次々と追っていった。端から見たらかなりヤバい人に見えるかも知れない。でも、大丈夫。他人の目なんて気にしないもの。
私は物語を読むのがたまらなく好き。物語を読んでいるとついつい時間を忘れてしまうの。
さっきから、同じ場所を何度も何度も繰り返して読んでいる。気になるなぁ……一体この先どうなるんだろ?色々と想像しちゃう。本当はこんな事してる場合じゃないんだけど、気になるんだからしょうがないわよね。
あぁ……いけない。こんな事ばかりしてたら、また時間がなくなっちゃう……分かっているんだけど、でもやめられないわ。だって、私は自他共に認める読書熱中症だもの。一度何かを読み始めたら、自分でも止められなくなっちゃうの。
授業の合間の休み時間。教室の一角で、少女達が集い、こそこそと噂話をしている。中間テストが終わった直後という事もあり、彼女らは級友達の成績の事で専ら話に花を咲かせているようだ。
「おかしいよねえ、飯島(いいじま)さん」
「そうそう。あんなに本を沢山読んでいるのに、国語のテストの成績はいつも学年で最下位なんだよ」
「漢字テストならいつも百点とるのにね」
「なんか、文章問題解いてると、いっつも時間なくなっちゃうらしいよ」
「そう言えば、文章問題解いてる時の飯島さんって、いつも目が血走ってるよね」
「いつもあんなに集中してるのに、どうして国語の成績が良くないんだろ?」
|
|