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「ああ〜!!」 「あれ?」
町外れ。ロウちゃんとアルミスさんが待っている所までテーゼが見送りに来てくれた。アシュレイさんはお店の準備があるから、玄関でお別れしてきた。
そこまでは、良かったんだけど…。
「爽やか菌!それと、新手の赤眼菌!!」 ロウちゃんはウェーアとテーゼを指差して、ズサッと後退った。
「今日から頼むな、アルミス」
ウェーアはそんなロウちゃんを完全に無視した。ある意味、正しい選択かも。 「こちらこそ」 「爽やか菌か〜。悪くないですよね?」 テーゼは面白そうに、赤眼に振った。 「俺のは何だって言うんだ?」 「どっちも同じさ!ナギお姉様とセリナお姉様を陥(おとしい)れようとしてるんだから!!――ささ、お姉様達。男菌なんか置いといて、さっさと行きましょう!」 ロウちゃんは二人に石を投げつけて(見事にハズれた)、その隙に私たちの手を引いて男菌から遠ざけた。 「――ったく…。じゃあなテーゼ。あいつに、ちゃんと仕事しろと言っておいてくれ」 ウェーアは私たちの後を追って、彼に別れを告げた。 「バイバイ、テーゼ!」 「さようなら。アシュレイさんにもよろしくお願いします」 「わかりました。皆さん、お気を付けてー!」
なんとも慌ただしいお別れだった。
・・・
レイタムの周囲には、暴風のための木がぐるりと植えられていた。が、その木が今にも枯れそうなので意味を成していない。
「ん?なんだか…少なくないか?」 そんな木々に縛り付けられているクダラ(ラクダからコブを取ってあごにペリカンの袋をつけたような動物)を見て、ウェーアはアルミスさんを振り仰ぐ。
旅の一行は全部で五人+往復分の荷物。
そしてクダラは五頭。
「すみません、予備のクダラも急に病になって…」 アルミスさんは申し訳なさそうに説明してくれた。本当は一人に対して一頭で、乗せきれない荷物を何頭かのクダラに乗せるつもりだったのだが、昨日返してもらう予定のクダラが来なくてこれしか出せなかったらしい。 「仕方がありませんね。私とセリナが動きましょうか?」 「ぜひぜひ私のところへ!お姉様達!!」 「ロウ、さすがに三人は無理だよ」 「それでは――」 ナギがしばし考えて、 「私はロウちゃんと一緒に乗ります。セリナはウェーアさんと…。これでいいですよね?」 「だ、だめです!だめだめ!!セリナお姉様が男菌に感染しちゃう!!」 ぶーぶー言うロウちゃんを押し込めたナギに、なぜか上手く乗せられたような気がしてならなかった。まあ、ロウちゃんのテンションについていけそうにないわたしは助かったけれど。
皆手際よく荷物を積み込むから、すぐに荷造りは終わった。わたしはどちらかと言うと水面でジタバタしていただけ。
先にクダラに乗せてもらい、落ちないようにしっかりとタテガミを掴んだ。タワシの毛を長くした感じだ。 ウェーアは後ろにひらりと跨り、わたしの目の前で手綱を取る。
「ロウ、先に行きな」 「はいな」 アルミスさんの合図で、一行はゆっくりと歩き始めた。
さようならレイタム・ポート。
さようならアシュレイさん、トルア君、テーゼ。 そして――
こんにちは、恐怖の陸の船。 無事、ファタム・ゾウムに着ける事を祈ります。
〜一言〜 いよいよ砂漠へ向けてしゅっぱーつ!!!
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