〜断り書き〜 この話はノストイとは関係ありません。 訳のわからない話だと思う方が大勢出ると思われます。自分も訳わかりませんので(おい! ぼーっと電車に揺られている時に湧いて出てきた話です。 のんびりした雰囲気が出ていればなぁと・・・・。 また、感想お待ちしております。 それでは、お楽しみください。
生ぬるい空気のこの日、二つの影が水辺に佇んでいました。 深い深い、息のできる池の辺です。 足下には小さな花が咲き乱れ、空気は湿気を帯びてもや掛かっていました。
「魚がいるね」ネコが言いました。 「うん、たくさんいるよ」ウサギが答えました。 「ここになら、月光石、あるかな」ネコはしゃがんで草の上に手を付きます。 ネコが覗き込んだ池の水はとても澄んでいて、かなり深くまで見渡す事ができます。 「あるかもね」ウサギが答え、ネコに袋に入った細長いものを手渡しました。 「じゃ、行こうか」 「うん」
ザブンッと、服を着たまま二人は飛び込みました。 魚に気を付けてさえいれば、いつまででも水中に居られます。魚は彼らの好物であり、天敵でもありました。人より大きい為に、飲み込まれてしまえばひとたまりもありません。 ネコは岩陰に落ち着くと、楽しそうにつり上がっている唇に、袋から出した笛を軽く当てました。 そこから、奇妙な旋律が紡ぎ出されます。 ウサギは答えるように自らの口で似たような音階を奏でました。 それは、魚には聞く事のできない、不思議な和音・・・。
やがて 遠くから近くから、新たな旋律が生まれてきて、小さな丸い光が漂います。それは、ふわりふわりと曲に合わせてダンスをしました。
と、突然、ネコとウサギに近付いて来ていた月光石が、姿を隠してしまいました。演奏が中断されてしまったからです。 ネコとウサギは素早く水草の中に身を潜めていました。 頭上を巨大な影が横切ります。 大きな大きなナマズでした。 ナマズは好食な上に大食いでした。 一日に自重の何倍もの食料を摂取するのです。 様子を窺っていたネコが、何かを見つけました。 ナマズは何かを追っていたのです。 今にもかぶり付きそうな勢いでした。
「人間だ!」ネコが叫びました。 「人間だ」ウサギが答えました。 二人は隠れていた水草の中から、同時に飛び出しました。
ネコの笛とウサギの口から、攻撃的な曲が奏でられます。矛先はもちろん、ナマズです。 ナマズは人間を追うのを止めました。 売られた喧嘩を二つ返事で買ったのです。
さあ、今度は二人が逃げる番です。ナマズがクルリと向きを変えるなり、ネコとウサギは回れ右をして全速力で逃げました。
「ふう」 「行ったね」
しばらくの追いかけっこの末、ナマズを上手く撒く事のできた二人は、その場で再び月光石を おびき寄せました。 ところが、月光石の他にも・・・
「ありがとう」
人間がお礼を言って、握手を求めました。 「いえいえ」 「食べられなくてよかったね」 二人は順に握手を返しました。 「これは何と言う石なんですか?」 人間が尋ねるとネコとウサギは「それではあなたも一緒に集めませんか?」と、言いました。
深い池の底から、四つの声がします。
一つは笛で、一つは声。一つは歌で、一つは音。 それは不思議な旋律で 聞きゆくすべての生き物の心に響きました。
|
|