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ノストイ〜帰還物語〜第三部 作者:紫苑璃苑

第6回   1500人突破記念!短いお話。
 〜断り書き〜
  この話はノストイとは関係ありません。
  訳のわからない話だと思う方が大勢出ると思われます。自分も訳わかりませんので(おい!
  ぼーっと電車に揺られている時に湧いて出てきた話です。
  のんびりした雰囲気が出ていればなぁと・・・・。
  また、感想お待ちしております。
  それでは、お楽しみください。







 生ぬるい空気のこの日、二つの影が水辺に佇んでいました。
 深い深い、息のできる池の辺です。
 足下には小さな花が咲き乱れ、空気は湿気を帯びてもや掛かっていました。

 「魚がいるね」ネコが言いました。
 「うん、たくさんいるよ」ウサギが答えました。
 「ここになら、月光石、あるかな」ネコはしゃがんで草の上に手を付きます。
 ネコが覗き込んだ池の水はとても澄んでいて、かなり深くまで見渡す事ができます。
 「あるかもね」ウサギが答え、ネコに袋に入った細長いものを手渡しました。
 「じゃ、行こうか」
 「うん」

 ザブンッと、服を着たまま二人は飛び込みました。
 魚に気を付けてさえいれば、いつまででも水中に居られます。魚は彼らの好物であり、天敵でもありました。人より大きい為に、飲み込まれてしまえばひとたまりもありません。
 ネコは岩陰に落ち着くと、楽しそうにつり上がっている唇に、袋から出した笛を軽く当てました。
 そこから、奇妙な旋律が紡ぎ出されます。
 ウサギは答えるように自らの口で似たような音階を奏でました。
 それは、魚には聞く事のできない、不思議な和音・・・。

 やがて
 遠くから近くから、新たな旋律が生まれてきて、小さな丸い光が漂います。それは、ふわりふわりと曲に合わせてダンスをしました。

 と、突然、ネコとウサギに近付いて来ていた月光石が、姿を隠してしまいました。演奏が中断されてしまったからです。
 ネコとウサギは素早く水草の中に身を潜めていました。
 頭上を巨大な影が横切ります。
 大きな大きなナマズでした。
 ナマズは好食な上に大食いでした。
 一日に自重の何倍もの食料を摂取するのです。
 様子を窺っていたネコが、何かを見つけました。
 ナマズは何かを追っていたのです。
 今にもかぶり付きそうな勢いでした。

 「人間だ!」ネコが叫びました。
 「人間だ」ウサギが答えました。
 二人は隠れていた水草の中から、同時に飛び出しました。

 ネコの笛とウサギの口から、攻撃的な曲が奏でられます。矛先はもちろん、ナマズです。
 ナマズは人間を追うのを止めました。
 売られた喧嘩を二つ返事で買ったのです。

 さあ、今度は二人が逃げる番です。ナマズがクルリと向きを変えるなり、ネコとウサギは回れ右をして全速力で逃げました。


「ふう」
「行ったね」

 しばらくの追いかけっこの末、ナマズを上手く撒く事のできた二人は、その場で再び月光石を おびき寄せました。
 ところが、月光石の他にも・・・

「ありがとう」

 人間がお礼を言って、握手を求めました。
「いえいえ」
「食べられなくてよかったね」
 二人は順に握手を返しました。
「これは何と言う石なんですか?」
 人間が尋ねるとネコとウサギは「それではあなたも一緒に集めませんか?」と、言いました。






 深い池の底から、四つの声がします。

 一つは笛で、一つは声。一つは歌で、一つは音。
 それは不思議な旋律で
 聞きゆくすべての生き物の心に響きました。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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