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セリナが目を覚まさないまま、五日が過ぎました。 気持ちがやっと落ち着いてきた私は、セリナが目覚めるまでずっと、彼女の隣に居ることにしました。そうすればディムロスさんの安心してお仕事に戻ってくださると思ったのです。しかし、私の作戦は失敗してしまいました。ディムロスさんは、確かに仕事に手を付け始めてはくれたのですが、その膨大な量の書類をここに持ち込み、極力セリナの傍から離れないようにしていました。 「ディムロスさん、私が看ていますから、少しお休みになられては・・・・・・?」 「いや・・・・・・」 このような感じで、お返事はどこか上の空です。 私も、食欲があまりありませんでしたが、それでも彼よりは食べれるようになりました。睡眠も大分取れるようになりました。一方、他の方達はというと、とてもお忙しいようです。シビアさんは家事全般にセリナの世話(私もしています)。ウォルターさんはディムロスさんのお仕事のお手伝いをしていらっしゃいますし、トルバさんは事件の後処理に追われています。 なので、まるでこの部屋だけが外の時間から切り取られたかのように、ゆっくりと一日が過ぎていきました。
外は、今日も雪でした。 今までにない程雪量が多く、どんどん積もっているようです。“風がない”と、ディムロスさんが呟いていました。
世界は、日に日に白く染められてゆきます・・・・・・。
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九日目の夜。 頭に入りもしない書類に眼を通していると、突然慌しく叩かれる戸の音に静寂が破られた。 「ディムロス様!」 返事も待たずに扉を開けたウォルターは、血相を変えて飛び込んできた。 「ディムロス様、各地で積雪による被害が多発しております。それぞれの街や村で作業を行っておりますが、なかなか……」 「被害状況は?怪我人はどのくらいだ」 「あつ、は、はい。家屋が雪の重みに耐え切れず倒壊しているものが最も多いようです。怪我人は今のところ百数十名、行方不明者は五百を越えると……。死人が出たとの情報はまだ入いっておりません」 「そうか……」 俺は椅子から立ち上がりかけて動きを止めた。 ナギはセリナの隣でぐっすりと寝入っている。 そっと、離さなかったセリナの手を見た。彼女の手はまだ暖かい。だが、もしこの手を離してしまったら……。街の、この島の人々を救えたとしても、彼女を失ってしまったら……。
セリナか、より多くの人々か。
私(エウノミアル)か、俺(ディムロス)か……。
この手を離すか離さないかでどちらかが失われるかもしれない。それとも……。両方を、救うことはできないのだろうか。 「ディムロス様」 片方しか、選ぶことはできないのだろうか……。
「…彼女を、頼む」
俺は窓を開け、上着も持たずに飛び出した。
〜はい。〜 なんだかもう、大変なことになりそうなので、この辺で切っときます。 すみません、長々とだらだらと…。 ってことで、
次回から第四部へ〜ノシ
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