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あくる日、目が覚めても夜より多少明るい程度の朝で、霧は全く晴れていなかった。むしろ、昨日より濃くなっている気がする。
「どうしようか」
バイルー号でもらった干し肉や魚介類で朝食を済ませると、独り言のように呟いた。 「これでは先に進むのは無理よ。霧が晴れるか、せめて薄くなるまで待つしかないわ」 「ん〜」 了解して、とりあえず食べれそうなものを集めておくことにした。
昼。 霧は一向に晴れる気配を見せないので、私たちはする事もなく時間を持て余していた。 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「暇ね」 「暇だね」 「・・・・・・・・・・・・地図、見てみましょうか?」 「う〜ん・・・そう、だね」
地面に、ディスティニーからもらった各島々の地図の中からキーリスを選び、広げる。 この地図に間違いがなければ、町や村は海岸沿い、もしくは海に近い森の中に点々とあるだけだ。それほど人口は多くない。 今、自分たちがいるのはどの辺なのか検討してみたけれど、まずどの辺りから上陸したのかはっきりしない。それでも、民家は見当たらなかったのだから、港とは離れた所にいるのだろう。
「ねえ、なんでここから色が違うのかな?」 森の部分を指した。同じ森、同じ名前なのになぜか半分ぐらいの所に色の境界線がある。向かって右が普通の色。左が黒に限りなく近い緑。 「さあ・・・?どうしてかしら」 「そういえば・・・ここの木の色、丁度こんな色だね」 ランプの明かりに照らされた木の幹は、地図と同じく黒に近い色をしていた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」
何となく沈黙して、 「黒って、大体嫌な言い回しが多いよね。“闇”とか“死”とか・・・」 「そ、そんなこと言うものじゃないわ!」 『そうだよ!何事にも、希望を持って挑まなきゃね』 「それもそうか。そうだよね。うん。さっきより現在地がしぼれたし――って、」 「ディスティニーさん!!」 『久し振りvv!』 びっくり。気付かないうちに会話に参加してた。
『ひっどいよねー。テンペレットからずーっと連絡くれないし、すっごく寂しかったんだよ!!いくらエナさんが話し相手になってくれてるとは言え、君達に色々してあげたこの僕に何の連絡も入れてくれないなんて酷すぎるじゃないか!!』 「あ・・・えっと、その・・・・・・」 「すみません、ディスティニーさん。私たちも色々とありまして、なかなか連絡をつけることができなかったのです」 『色々ね。確かに、色々楽しそうだったよねー。塔に囚われた悲しき宿命の青年を一人にしてさ、テンペレットのお祭り楽しんだりさ、乗せてもらった船の人達と仲良く遊んだりさ』 「あー、うん、だから・・・」 『僕も出られないかわりに色々細かい事聞きたいのにさ、なあーんにも話してくれなくてさ』 「ディスティニーさん、ですから・・・」 『おまけにオーケアニテスと悪者やっつけたりさ、まるで冒険者みたいじゃないか!近くにそういう友達がいるっていう満足感をもっと味あわせてよっ!!』 「わかった!わかったから、耳元で怒鳴らないでよ!ディスティニーが知らない事、話せばいいんでしょ?話すから、これからは定期的に連絡つけるから、そんな子供みたいに駄々こねないでよ」 『僕は子供じゃないよ!話してくれるんだね?これからちゃーんと、連絡入れてくれるんだね?約束だよ?』 「ええ、約束です」 やれやれと、彼には気付かれないように溜め息を洩らした。現在地がつかめず迷子になっている私たちに、大きな子供のお守りまで押し付けようとするんですか、神様・・・。 信仰心のカケラもないわたしが、珍しく慈悲を請うた瞬間だった。
『深ク濃ク、自分ノ足サエモ見エナイホドノ、ドコマデモ純粋ナ白ノ膜。迷イ込ンデシマエバ・・・』
〜ああ〜 ディスティニー久振りだ。この頃忘れられてる!!っという声を聞いたので、入れました。(よかったな、出れて。ディスティニー君。…声だけだが) まあ、そんな感じでちょくちょく影が薄くならない程度に出せれたら出させますので。期待しないで待っていてください。 それではまたノシ
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