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ノストイ〜帰還物語〜第三部 作者:紫苑璃苑

第28回   XII-2

・・・

 キーリスは、島のほとんどを樹海が占めている。それだけに、海から180度景色を回転させるだけで、目の前に深い森がそびえていた。
 とりあえず道がなさそうなので、その辺の入りやすそうな茂みから森へ分け入る。

 しばらく道なき道を突き進んで、


「セリナ」
「ん?」
「私たち、どこへ向かっているの?」
「さあ?」
「“さあ?”って・・・あなた、適当に進んでいたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、なる・・・のかな?」
「そうよ!ああ、どうして“どこに精霊がいるのか知らない”って言わなかったの!?てっきり私は、オーケアニテスさんに聞いていたとばかり・・・。これ以上進むのは危険だわ!元の浜へ戻って、町なり村なり探しましょう!」
「うん、けど――」
ナギが反転したところで足を止め、顔だけ肩越しに振り返る。





「帰り道、わかる?」





ギーッギーッ と、高い鳥の声がこだました。











 「もう、どうしてこんな事になってしまうのかしら。――セリナ、あなたこの頃一人で突っ走りすぎよ。大体、私たちは二人で旅をしているのよ?これからは少しでも話し合って、それから道を決めましょう。ね?」
そう言う彼女は、怒りを撒き散らすように、木々の葉や草を掻き分けてどんどん進んでいる。もちろん、方角なんか決めてない。ただガムシャラに進んでいるだけだ。そんな投げやりなナギの後に、そうだねと相づちを打ちながら続いた。

やがて・・・

「・・・・・・なんか、霧が出てきたね」

徐々にだが、周りが乳白色に包まれつつある。ただでさえ視界の悪い森の中で、霧まで出てこられては立ち往生しかねない。このままじゃ、余計に迷子になる。
しかし、戻るわけにもいかず猶(なお)も草木を掻き分けて行くと、一メートル先も見えなくなってしまった。いつの間にか、森に住む生き物が全ていなくなったかのように、辺りはしん・・・と静まり返っていた。


 自分の足すら見えないほどの白の幕。

 異様な静けさの中に、わたしとナギは取り残されてしまった。


「・・・・・・・・・どうしよう」
「これ以上は進めないわね」
「・・・・・・・・・・・・ごめん」
急に申し訳なくなって、俯き加減に謝った。
「もう過ぎてしまったことでしょう?いまさら責めたっていたし方がないわ。それより、早く寝られそうな場所を探しましょうよ」


その日、心許無い明かりの元、木の根に開いた穴の中で一夜を明かした。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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