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ノストイ〜帰還物語〜第三部 作者:紫苑璃苑

第25回   キリ番2500人突破記念!

 虫の声が鳴り響き、澄んだ空気が辺りを包んでいます。
 高く真っ黒な空には、明るく輝くまあるい月がポッカリと浮かんでいました。
 
 月明かりの下を、二つの影がてくてくとススキの原を歩いています。
 「明るいね」ネコが言いました。
 「うん」ウサギが答えました。
 ネコはお猪口(ちょこ)と酒瓶を大事そうに持っています。ウサギはお皿に乗せたお団子を、大切そうに持っています。
 「この辺のススキがいいかな」ネコがふと立ち止まって言いました。
 「そうだね」ウサギも足を止めて、道端に生えたススキに手を伸ばしました。
 そこへ、

 「こんばんは」

 小さな声が、たくさん重なって二人に挨拶しました。
 ネコとウサギは辺りを見回し、最後に足元を見ました。
 「ああ、ネズミのご夫婦とそのお子さん方。こんばんは」
 「こんばんは、ねずみさん方」

 「ネコさんとウサギさんも、お月見ですか?」ネズミのお父さんは、小さな小さな徳利を抱えて嬉しそうに笑いました。
 「ええ」
 「そうです」
 「それでは、ご一緒しましょうよ。その方が賑やかでいいですもの。ねぇ?」ネズミのお母さんがはしゃいで手を叩きました。その拍子に、お母さんの持つお団子が落ちそうになりました。
 「せっかくの団子を落とさんでくれよ。それに、お月見は賑やかにするものじゃあない。しみじみ飲むものだ」
 「僕達は構いませんよ」
 「一緒に行きましょう」
 二つの影に、小さな影が八つ、加わりました。

 湖へとやってきました。
 水中で呼吸のできる、あの湖です。
 水面はまるで鏡のように真っ平らで、高く昇った月が、きれいに映り込んでいます。

 お団子を持ったウサギと、ネズミのお母さんが水際にそれぞれ置きました。
 続いて、二本のススキを持ったネズミの子供達が、わあっとお団子の前に置いて、戻ってきました。
 最後に、お酒を持ったネコとネズミのお父さんが前に出て、ススキにお酒を振り掛けました。

 「私達の分もお願いできますかね」ネズミのお父さんがネコを見上げました。
 「ええ、いいですよ」ネコは頷き、一拍置いて、

 「おいしそう…」
 「だめ」
 
 耳ざとく呟きを拾ったウサギが、ハッキリと言いました。

 ちょっと残念そうなネコが力いっぱい、月の影目掛けてススキを投げました。
 すると、

 淡い月の光が空からと、湖からと、一本につながりました。
 月明かりの柱の中では、ふわりふわりと二本のススキが浮かんでいます。
 しばらく何も起こりませんでしたが、次第にススキの形が崩れてきました。それと共に、キラキラと光の粉が月光の柱から噴出してきました。
 「さあさ、たーっぷり浴びさせるのよっ!」ネズミのお母さんが、はりきってお団子を光へ近づけます。
 ネコとウサギは少し離れて見ています。

 「綺麗だね」
 「うん」

 月と粉の光に照らされて、ネズミ達の黒い影が楽しそうに踊っていました。
 「おいしそう」ネコが呟き、
 「だめ」すかさずウサギが止めました。

 
 やがて、ススキがなくなり光の粉も振るのをやめた頃、月光の柱もだんだんと薄れていきました。
 ネコとウサギとネズミ達は、月夜の景色を酒の肴に静かに飲み始めました。もちろん、子供達はジュースです。

 「たくさん掛かったね」ネコがお団子を一つ、つまみました。
 「うん」ウサギもお団子を手に取りました。
 「甘〜いvv」先に食べたネズミの子共が、満面の笑みでとろけました。
 「うん」
 「甘い」
ネコとウサギも同感して、もひもひとお団子をほおばります。この時期にしか食べられない、月光の砂糖のかかったお団子は、特別甘いひと時をくれました。

 「来年も晴れるといいね」
 「そだね」
ネコとウサギはそろってまんまるお月様を見上げました。そして、ちゅうちゅううれしそうにお団子をほおばるネズミ達を見て、

 「…ダメ?」
 「ダメ」

 ネコはウサギに怒られました。






 〜お詫び〜
  遅くなって申し訳ありませんでした。
  今回はキリ番記念ということで。ネコとウサギのお話です。
  このお話と共に、秋を感じていただけたらなあと…。くすりと笑っていただけたらなーっと……。
  
  はい?ええ、そうです。自分、今やる気0です。この文章も片手でぽむぽむ打ってますからね。

  ああっ!怒らないで!短編考えただけでも頑張ったと…思ってくれたらいいのになぁ。


  だらだらな自分でした。
  一旦スタジオにお返ししまーす。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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