虫の声が鳴り響き、澄んだ空気が辺りを包んでいます。 高く真っ黒な空には、明るく輝くまあるい月がポッカリと浮かんでいました。 月明かりの下を、二つの影がてくてくとススキの原を歩いています。 「明るいね」ネコが言いました。 「うん」ウサギが答えました。 ネコはお猪口(ちょこ)と酒瓶を大事そうに持っています。ウサギはお皿に乗せたお団子を、大切そうに持っています。 「この辺のススキがいいかな」ネコがふと立ち止まって言いました。 「そうだね」ウサギも足を止めて、道端に生えたススキに手を伸ばしました。 そこへ、
「こんばんは」
小さな声が、たくさん重なって二人に挨拶しました。 ネコとウサギは辺りを見回し、最後に足元を見ました。 「ああ、ネズミのご夫婦とそのお子さん方。こんばんは」 「こんばんは、ねずみさん方」
「ネコさんとウサギさんも、お月見ですか?」ネズミのお父さんは、小さな小さな徳利を抱えて嬉しそうに笑いました。 「ええ」 「そうです」 「それでは、ご一緒しましょうよ。その方が賑やかでいいですもの。ねぇ?」ネズミのお母さんがはしゃいで手を叩きました。その拍子に、お母さんの持つお団子が落ちそうになりました。 「せっかくの団子を落とさんでくれよ。それに、お月見は賑やかにするものじゃあない。しみじみ飲むものだ」 「僕達は構いませんよ」 「一緒に行きましょう」 二つの影に、小さな影が八つ、加わりました。
湖へとやってきました。 水中で呼吸のできる、あの湖です。 水面はまるで鏡のように真っ平らで、高く昇った月が、きれいに映り込んでいます。
お団子を持ったウサギと、ネズミのお母さんが水際にそれぞれ置きました。 続いて、二本のススキを持ったネズミの子供達が、わあっとお団子の前に置いて、戻ってきました。 最後に、お酒を持ったネコとネズミのお父さんが前に出て、ススキにお酒を振り掛けました。
「私達の分もお願いできますかね」ネズミのお父さんがネコを見上げました。 「ええ、いいですよ」ネコは頷き、一拍置いて、
「おいしそう…」 「だめ」 耳ざとく呟きを拾ったウサギが、ハッキリと言いました。
ちょっと残念そうなネコが力いっぱい、月の影目掛けてススキを投げました。 すると、
淡い月の光が空からと、湖からと、一本につながりました。 月明かりの柱の中では、ふわりふわりと二本のススキが浮かんでいます。 しばらく何も起こりませんでしたが、次第にススキの形が崩れてきました。それと共に、キラキラと光の粉が月光の柱から噴出してきました。 「さあさ、たーっぷり浴びさせるのよっ!」ネズミのお母さんが、はりきってお団子を光へ近づけます。 ネコとウサギは少し離れて見ています。
「綺麗だね」 「うん」
月と粉の光に照らされて、ネズミ達の黒い影が楽しそうに踊っていました。 「おいしそう」ネコが呟き、 「だめ」すかさずウサギが止めました。
やがて、ススキがなくなり光の粉も振るのをやめた頃、月光の柱もだんだんと薄れていきました。 ネコとウサギとネズミ達は、月夜の景色を酒の肴に静かに飲み始めました。もちろん、子供達はジュースです。
「たくさん掛かったね」ネコがお団子を一つ、つまみました。 「うん」ウサギもお団子を手に取りました。 「甘〜いvv」先に食べたネズミの子共が、満面の笑みでとろけました。 「うん」 「甘い」 ネコとウサギも同感して、もひもひとお団子をほおばります。この時期にしか食べられない、月光の砂糖のかかったお団子は、特別甘いひと時をくれました。
「来年も晴れるといいね」 「そだね」 ネコとウサギはそろってまんまるお月様を見上げました。そして、ちゅうちゅううれしそうにお団子をほおばるネズミ達を見て、
「…ダメ?」 「ダメ」
ネコはウサギに怒られました。
〜お詫び〜 遅くなって申し訳ありませんでした。 今回はキリ番記念ということで。ネコとウサギのお話です。 このお話と共に、秋を感じていただけたらなあと…。くすりと笑っていただけたらなーっと……。 はい?ええ、そうです。自分、今やる気0です。この文章も片手でぽむぽむ打ってますからね。
ああっ!怒らないで!短編考えただけでも頑張ったと…思ってくれたらいいのになぁ。
だらだらな自分でした。 一旦スタジオにお返ししまーす。
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