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その夜、ガドガは疲れと満足感に浸りながら、心地良い眠りにつこうとしていた。
オーケアニテスのお姿を拝見できた事。 たまたま乗せた少女が大胆な、度胸の据わった行動を取り、それによって船員の意志が一つになった事。今日は嬉しい事がたくさんあった。
(久し振りに気持ちよく寝れるわい)
ニンマリと笑みを浮かべながら、吸い込まれるように夢の世界へと旅立った。
その眠りが妨げられたのは、まだ空の白みさえ見られない、真夜中の事。
何の前触れもなく自然に目を覚ましたガドガは、自分の足辺りに光の塊があるのを発見した。
(なっなんじゃいありゃあ。幽霊なんか!?)
じっとりと汗で体が濡れていた。無論、暑いからではない。冷や汗だ。しかも、寝台に括り付けられたかのように動けない。 そんな自由の利かない体の中で、唯一動く目でそれを確認した。
『すぐに、少女達の元へ行きなさい』
何かされるのではないかと、恐るおそる光を凝視していた彼の脳内に、そんな言葉が響いた。
(なーにを言っとるんじゃ?少女ってーと、あの嬢ちゃん達しかおらんよなあ)
『そうだ、その二人だ。いいですか?よく聞きなさい。――この船に裏切り者が乗っている』
(―――!?) 不思議な声は、口にしていないガドガの疑問に答えた。そればかりか、疑いながらもそうであって欲しくない、と願っていた事実を伝えた。 これは夢だと思いたかったが、どう言う訳かそう思うことはできなかった。実際に、現実に起きている事としか感じられない。
『誰が裏切り者なのかは、あえて言わない。あなたが絶対に信用のできる者達の助けを借りて、今すぐに少女を助けるのです』
(助ける?その裏切りモンからけー?)
『彼女達は狙われている。今言えることはそれだけ』
(んな、いきなり言われてもなー)
『早くなさい。時間が惜しい。――頼んだよ』
ふっと、光が消えた。 同時にガドガの目を開き、今の出来事が夢だったと悟る。
しばし彼は思考を巡らせていた。
だが、ついに意を決したのか、力強く腰を上げた。
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