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ノストイ〜帰還物語〜第三部 作者:紫苑璃苑

第14回   二千人突破記念!!
 〜注意書き〜

  この話は、夏!!=怪談という安直な考えの元で書かれています。
  あまり恐くないかもしれません。
 
  ンが!

  チロッと流血モノが含まれていますので、そういうのが苦手な方、不快と感じる方はおやめください。

  それでも“どーんとこい!!”っちゅー方はどーぞ!!







 これは戦時中、日本国内によく出回った話だ。


 とある病院の中。
 
 院内は負傷した兵士で一杯だった。

 そんな中、一人のそこそこ重い怪我で入院した兵士が、肺を患(わずら)った重病患者と同室になった。
 彼は、他の同室者からとある噂を耳にする。それは、“遺体安置所から夜な夜な、奇妙な音がする”というものだった。

 ある日の夜。
 彼は夜中にトイレへ立った。そして、その帰りに―――

 遺体安置所で、奇妙な音を耳にしたのだ。

 それはピチャピチャとも、クチャクチャともつかない音で、汁気の多い何かを潰しているような音だった。
 背筋に寒気を感じながらも、彼は恐いもの見たさで部屋を覗き込んだ。

 すると―――

 彼と同室の、肺を患った重病者が、死体を貪り食っていたのだ。
 腹にかぶりつき、血をすすり……それは一心不乱に死体に喰らいついていた。

 彼は恐れ慄(おのの)き、慌てて病室へ駆けずりこんだ。
 布団を頭から被っても体の震えは止まらず、冷や汗が流れ出る。



 やがて



 ハァ ハァ と荒い息づかいが、廊下から近付いてくる。
 すっと戸が開けられる。

 病室に戻ってきた重病患者は、端から一人ずつ寝ている同室者の顔を覗き、“お前か お前か”と言いながら、ゆっくりと彼に近付いて来る。
 ひとり。また、ひとり…




 ついに―――



 バッと布団が引き剥がされた。
 口の端から血を滴らせた重病者はにやぁっと笑い、

 見たなァ



 翌日。その病室からは、彼の姿が消えていた。




 〜久々だぁ〜
  どうも。暑い日々をいかがお過ごしでしょうか?自分はバテております。

  さて。今回のssなのですが……これは自分の尊敬する『京極夏彦』さんの本の説明部分に載っていたお話です。自分なりに付け足したりしてあるので、ちょっと違うかもしれません。
  
  で、戦時中――あ、ネタばらしになってしまうかもしれませんので、構わない方のみ、先をお読みください。







  ――この話の時代、肺病には人間の生き血や、死にたてほやほや(あまりいい表現ではありませんね。丁寧に言うと“新仏”です)の死体を食べると病に良いという迷信があったそうです。そういう所から、このような怪談話ができたのでしょうね。

  時間が経つと、時代に合わせて少々設定が変わっているようです。墓地だったり、一人一人“お前か”と聞かなかったりと。それでも全体的には変わらず、落ちも同じようです。
 
  口で伝わって行くものには時代がわからなかったり、どれが元ネタなのかわからないものが多いですが、それを絶やさず後生に伝えいけたらなぁと思う今日この頃でした。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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