「ここは…」 わたしは真っ白な空間に立っていた。 「塔の中かな?何にもないね、ナギ」 「そうね。ここが塔の中なら窓があるはずなのに…」 周りを見回しても、突き当たりも壁も何もない所だ。 まるで処女雪のような、純白の世界。 それにしても、一体どうやって中に入ったんだろう。私たちはただ壁を触っただけなのに。 『こんにちは。ようこそタイレイム・イザーへ』 低い機械音がしたかと思うと、突然辺り一面から声が聞こえて来た。 「な、何!?」 「どちら様でしょうか?」 声の主が見えないことにうろたえていると、のんびりとした答えが返ってきた。 『僕はディスティニー。ここに住んでいるモノさ。君たちは?なんていう名前なんだい?』 優しそうな声だった。それにしても、どこかで聞いたことがあるような… 「私、私はナギです」 『ふむ。よろしく、ナギ。そっちの子は?』 「わたしは…セリナ」 なんだろう。どうしてこんなにも懐かしい感じがするんだろう。 『よろしく、セリナ。二人ともいい名前だね。―――さて、顔も見せずにお話しするわけにはいかないよね。悪いけど、君たちから見て左の方に来てくれないかな。ずーっと行くと扉があるからそこまで、ね』 声はプツリと途絶えてしまった。 「セリナ、セリナ?どうしたの?」 ナギの声にハッとしてごにょごにょと言い訳をする。どうやらぼーっとしていたみたいだ。 私たちは言われた通りに左へ道をとった。 いくら歩いても景色が変わらないので、どれだけ歩いたのか、本当に歩いているのかわからなかったが、 「うわっ!」 目の前に突然丸いドアが現れた。横から覗いても、真っ白な空間が広がっているだけ。ドアだけがそこに存在していた。 わたしとナギは視線を交わし、左右それぞれの戸に手を掛けた。 ―――が、開かない。押しても引いてもスライドさせてもびくともしなかった。 「何で開かないの?偽物?私たち、騙された?」 と、混乱していると、またさっきの声が相変わらずのんびりと言った。 『ごめんよ〜、言い忘れてた。その扉を開けるには合言葉がいるんだ』 「合言葉、ですか?」 『そ。大丈夫、君たちも知っているよ。――ヒントをあげようか。君たちは、重い扉を開けるとき、なんて言う?』 「あぁ」 「「――スマトバーズ!!」」 『大当たり〜!!』 すうっと、滑らかに扉が開かれた。 中から漏れる光に目を細めながら一歩入ると、そこには―――
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