〜前書き〜 もうすぐ連載回数50回になるので、『新たな出会い』までをノストイ物語第一部としまして、区切らせていただきます。 ここまで読んで下さった皆様方、ありがとうございます。まだまだ続く長い話ですので、これからもどうぞ、お願いします。 では、そんな皆様方に自分の見た、そして覚えている夢の話を……え?聞きたくない?まあ、興味のある方だけで結構ですので読んでみて下さい。
あれは…そう、小学校低学年の時・・・・・・・・・・
〜ある日の夢の話〜
夏の日だったと思う。 私は泳いでいた。それもプールではなく、教室でだ。そう、腰まで水の張った教室で私は泳いでいたような気がする。 私の隣には友人がいた。やはり彼女も楽しそうに泳いでいる。あと数人、パラパラとその教室のプールにいたのだが、彼らに水が届いている様子はなかった。ただ平然とそこに立ち、彼らで世間話をしていた。 私は彼らの方を見て――――
ふと気が付くと、わたしは走っていた。足下には草が青々と茂っていて、頭上からは熱く強い日差しが照り付けていた。 鬼ごっこではなかった。必死に走る私は決して楽しそうではなかったし、かといって鬼気迫ると言う感じではなかったのだが、とにかく私は追われていた。先程の友人も隣にいた。二人で必死に逃げていた。
肩越しに振り返ると、この暑い中黒い帽子に黒いサングラス、黒いスーツ、黒いネクタイと、何から何まで黒を着込んだ黒ずくめ達が私たちを追って来ていた。 彼らの表情は決して動かなかった。硬く結ばれた口元はピクリとも動かず、あんな長袖のスーツを着ているのにもかかわらず汗のひとつもかいていない。
私たちはさらにスピードを上げた。 地面がコンクリートに変わった。私の家の通りだ。そこを奥へと進む。そこに友人の家があった。
「こっちへおいで」
友人のお祖父さんが白い緩やかな坂の途中で、高く盛り上がった蒼いシートをめくり上げて手招きをしていた。私たちは何にも疑わずにそこへ逃げ込んだ。お祖父さんも中に入って青いシートをピッタリと下ろした。
中にはみかんの木が植えられていて、杉の木のように背が高かった。 シートの中は真っ暗だ。そのわりには人の顔の細かい所まではっきりと窺える不思議な所だ。 しばらくじっとしていると、私たちのすぐ横をあの黒ずくめの男達が走っていった。 足音が遠ざかって、シートの端から顔を覗かせる。私が見る限り誰もいなかった。 私たちはお祖父さんにお礼を言って、そこから這い出た。そしてまた走り出す。と、
「―――っ!」
さっき通り過ぎて行ったはずだというのに、また私たちの後ろから黒ずくめ達が追いかけてきた。
角を曲がる。両側に木の覆い茂る狭い道に出た。人ひとりがやっと通れるほどの狭さで、木の枝や葉が剥き出しの肌にピシピシと当たって痛い。だが、そんな事を気にしている余裕はなかった。
いつの間にか前を走っていた友人はいなくなっていたし、相も変わらず黒ずくめ達は追ってきていた。
途中、何かにつまずいて思いっきり転んだ。 すぐに起き上がってまた走り出す。 左足が痛んだ。だが、私は足を引きずるようにして必死に逃げた。
不意に、目の前が開けた。まぶしさに目を細めながらそこを抜けると、お座敷に父がいた。その隣には黒ずくめの男がいて、父となにやら楽しそうに話をしていた。
ふと父が私のほうを振り向いて口を開き―――
――――私はそこで目が覚めた。
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