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こんなにも巨大な力を持つ者と戦うのは初めてだ。はたして勝てるかどうか・…
ラルクは火の属性。ならば、水に弱いはず。だが、少量の水ではすぐに蒸発させられてしまうであろうし、そんなにも多くの水を持っているわけでもない。
これは、全力で掛からなければ、命を落としかねないだろうか…
『ウェーアよ、アライオスが力、しかと見せよ。ゆくぞ!』 「来い!」 言った途端にラルクの口から紅蓮(ぐれん)の炎が吐き出された。 速い…! ギリギリのところで躱した俺は、ラルクとの距離を一気に縮める。すると、横手から素早く狙う何かがあった。俺はその尾に手をそえ、反動で上へと跳ぶ。と、同時にまだ追ってこようとする尾に、真空の刃を放つ。 『ぐぬぅ…。ソニックブレード!?その歳で…恐ろしき人間なり。されど――今だ甘し!』
「しまっ――!」
空中へ逃れた事により逃げ場を失った俺は、格好の獲物となってしまった。そして当然のごとく、噴射口から炎が繰り出される。俺は咄嗟に“力”で勢いを半減しようとしたが、あまりの速さに上手くいかず、少し足と手を焼かれてしまった。 どうにかしてこの巨躯(きょく)の死角へ回りこまなければ。このままでは丸焼きにされかねない。
俺はゴロゴロと転がるように地へ落ち、すぐさま反撃へと転じた。 上からは連続して炎の塊が降ってきている。それを躱しながらラルクのふところ懐へ潜り込み、
「喰らえ!」
剣に“力”を上乗せさせ、赤銅色の甲冑の腹を切り裂いた。
一拍遅れて、獣の叫びが鼓膜を打つ。
『ぬぅ…。我の力、炎だけにあらず!』 苦しみながらも発せられた言葉を全て認識する前に、俺は激しい衝撃を受け、吹き飛ばされていた。 威力を減らそうとはしたが、あまりの強さにそれもままならない。 岩壁に叩き付けられ、肺の空気が無理矢理押し出された。一時的呼吸困難に陥るが、容赦なく襲い掛かる炎に素早く反応した―――つもりだったが、如何(いかん)せん、速すぎて対応しきれない。俺はついにその一つを足に喰らってしまった。
「まずいな…」 これでは動きが鈍る。向こうもそのつもりで狙っているのだろう。俺もだいぶ息が上がってきた。それに加えこの暑さ。そろそろ決着を付けなければ…
その時、
一瞬攻撃の波が止んだ。 俺は体中の痛みを無視して、ラルクへと肉薄する。
『終わりにしてくれようぞ!』
ラルクが口に炎を溜めていた。かなりの大きさだ。 それが鼓膜を打ち破る程の轟音(ごうおん)とともに打ち出された。 大きさの割に、恐ろしく速い。 巨大な炎の塊が対象に当たって弾け跳んだ。
だが俺はそこはいなかった。この時のためにラルクをできるだけ壁の近くまでおびき寄せて置いたのだ。 ラルクは俺の思惑に目敏く気が付き、こうべ頭を巡らせる。そこへあるものを投げつけ、短剣で割り砕いた。 『ぬぅ…み、水!?されどしょせんは少量。効かぬわ!』
それはわかっていた。水筒はただの牽制(けんせい)に過ぎない。ラルクが気取られている内に、俺は壁を足場に横手から跳躍していた。
「これで終わりだ!」
言葉と共に遠心力を付け、その首筋へと鋒鋩(ほうぼう)を吸い込ませ―――
『何故我、貫かん』 「質問を質問で返そうか。――なぜ手を抜いた」
剣の切っ先は、精霊の鱗の隙間に食い込んで、そこで止まっていた。
『はて、なんの事やら』
「ふざけるな!」
らしくもなく、俺は声を荒げていた。だが、すぐに自制をきかせて感情を押し込む。 「貴様、わざと手を抜いたな?今のは充分に躱せたはずだ。炎とてあんなものではないだろう」 精霊は押し黙っていた。 俺はもう、経験の浅い子供ではない。相手の力の大きさぐらい、大体把握できる。 「答えろ」 『むぅ…確かに、そちの言葉、真(まこと)なり。されど、さもなければそちが命、落としかねん。…そちにも同等たる事、言えつらんに』 痛いところを点かれた。確かにそうだ。 『連れ居る為、か?』 「それは…そうだが。お前が手を抜いていたせいでもある」 釈然(しゃくぜん)としない面持ちで答えると彼は、 『屁理屈を』 笑みを含む声(と言えるのだろうか)で、返してきた。腹黒いやつめ。 「あのなあ…まあいい。これで貸し借りなしだ。一応、条件は満たしたんだから、約束守れよ?」 『む。よかろう』
俺は礼を言い下へ降りると、足の痛みに思わず膝を付いた。
〜舞い上がり書き〜 ひゃっほーい!(壊) 戦闘シーン!くわぁーっっっっこよく思えた人にはありがとう!!(訳わかんねえ) もうちょっとかな?っと思った人は具体的に感想をのベて下さい。 もちろん、その他でも受け付けております。(ああ。だいぶ落ち着いてきた。正常になってきた) さあ、『新たな出会い』もあと少し!頑張って読んで下さい!!
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