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ノストイ〜帰還物語〜第4部 作者:紫苑璃苑

第9回   XIII-20
○○○

 三日後、ウィズダムの港に着いた。行きと違って馬車だからちょっと早い。
 船着場に行くと、この寒空の下、ランニング姿の不精(ぶしょう)ヒゲの目立つ三十代半ばの男がいた。こっちこっちと手招きをしている。
「あの……あなたが?」
「そう」
五分刈りのその人は短く答えると、また言葉少なく案内した。特徴も合っているし、彼がディムロスの言っていた船頭なんだろう。
「ん」
先に小舟に飛び乗った彼が私たちに手を差し出す。質素だが、しっかりとした造りの舟だった。
 よろしくお願いしますと飛び移る。船内はちょっと狭いけど、きれいに片付いていたし、三人が寝るには十分だ。
 荷物を船室に入れていると、すぐに出航したようだ。甲板に出て徐々に遠ざかるウィズダムを見送る。
 ふわりと、風に乗って甘い香りが鼻先を掠めた。
「……さようなら……」
 気付くと、一筋の涙が頬を伝っていた。











〜短っ!!?〜
  ってことで、続けて次の章もアップしときます。

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