「桜だね」 「春だね」
春うらら、春眠の季節。桜の木は大きな花を枝いっぱいに咲き誇らせ、甘い香りを運んでいます。ミツバチ達はせっせとあま〜い蜜を集め、孵ったばかりのオタマジャクシは気持ちよさそうに田んぼを泳いでます。
毎度おなじみのネコとウサギは、それぞれ大きなカゴを持って桜並木道をゆったりと歩んでいました。あちらこちらでわいわいと、楽しそうな声がします。
「楽しみ?」ネコが尋ねました。 「楽しみ♪」ウサギが答えました。 「僕も♪」 「うん♪」
二匹は、ざわめきから少し外れた川べりに来ました。立派な枝垂柳と枝垂桜のある川です。
「穴場、穴場♪」 「貸切、貸切♪」
二匹はいそいそと支度をしました。
「では」 「では」
カチンと、軽やかなグラスの音が静かに木霊しました。おちょこの中身を一息に飲み干します。
「美味、美味」 「甘露、甘露」 「絶景かな」 「絶景かな」 「まっこと、まっこと」
いつの間にやら二匹の間には、十センチほどの小さなお爺さんが座っていました。
「こんにちは。あんまり楽しそうなんで、お邪魔させていただきましたよ」
お爺さんは長いヒゲと眉毛に覆われた顔を、クシャリと歪めました。笑ったのでしょう。二匹は快く受け入れました。
風が優しく吹いて、ハラリハラリと花びらが舞います。 二匹とお爺さんは、ただただ静かにそれを眺めていました。 日が落ち始め、風も冷たくなってきました。二匹は上着をはおりましたが、お爺さんはそのままです。 「寒くない?」 「風邪ひかない?」
ネコとウサギが心配しますが、お爺さんは「慣れとるで大丈夫じゃよ」と、ほろ酔い加減で答えました。 「それよりも、昼の桜、黄昏の桜と見て、夜桜まで楽しむとは……どうしてなかなかよい趣向ですのぅ。お二人は毎年こちらに?」 「ええ」 「この場所を見つけてからは」 「そーですか、そーですか。それは、それは……」 お爺さんはもにょもにょと何かを言いましたが、聞き取れませんでした。
月が昇りました。 綺麗な三日月です。 杯に、桜の花びらが舞い込みました。 月の光が、杯に映り―――
「あれー?」 「ここどこ・・・?」 二匹は不思議な所にいました。 水面に映る大きな三日月。月の影にそって桜の花びらが揺らいでいます。
『こんなにも楽しんでくれているのだから、少しばかりのお礼だよ。楽しんでおくれ』 どこからか、お爺さんの声がしました。 ヒラリヒラリと舞う花びらがキラキラ光り、まるで夜空の星が降ってくるようでした。 「これはなかなか…」 「運がいいねー僕達」 この世のものではない声が、高く、低く、歌っています。 それは常世の声。 それはかの地の声。 ゆるゆると 長く、長く……
〜ええっと…〜 載せようか迷ったのですが、せっかくなので載せました。中途半端な気がするのですが、悪しからず。即興は苦手です。区切りがこんなので申し訳ありません。次は頑張ります。
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