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ノストイ〜帰還物語〜第4部 作者:紫苑璃苑

第30回   ノストイ物語XVI〜帰還〜


光               の海に    い  た



体の 中を   ふわふわ            通り過ぎ るものが  いる



 上も下も何も       ない……




  わたしは    独り―――いや、別の存在を感じる。
 左手から温もりが伝わってくる。

――どうしたいんだい?――

  ふわりと、頬を撫でるような声がした。

――選択するのは君だよ――

  周りから光りの粒が集まってきて、ディスティニーの形を作った。

  懐かしい、おしゃべりスズメ…。
――ナギと一緒に暮らそうよ――

  エナさん……。本当に、一緒に暮らせたら、どんなにいいだろう。


  光りが形を変え、今まであった人達になり、語りかけてくる……。
  そして―――

――行かないでくれ――

「…ディムロス…」





           バチンッ!






 何かに弾かれた。







 気付くと、今度は本当に独りだった。
 ポツリと光りの海に揺られている。さっきまで波ひとつ立っていなかったのに、今はうねりを上げている。

『心が残っている』

        「声の人……?」

『やはり、世界は滅ぶべきなんだ』

        「そんな事ない!!」

『だが、現に君の心には迷いが生じている。いくら強がりをしても、心の底の想いは変らない』

        「そんなの、当たり前だよ。こんな強い気持ち、そう変えられる訳がない」

『では、この世界に残るんだね?』

        「残らない」

『話が矛盾しているよ、アルケモロス』
        「セリナ!それはわたしの名前じゃない。決めたんだ。わたし、ここの人達が大好き。
ずっとここにいたいと思ってる。だから帰るんだ。ここと、あちらを守るために」

『心が残っていたとしても……?』

         「人間だもの。それに、少なくとも心は今まであった人達に残していける」



『……ならば、ゆきなさい……』



 光りの粒が霧散して―――





                      白濁とした世界






うた         が     聞こ え              る




   光          の 精      霊   が       うた     って   た……


流々と流れる 絶えぬ流れに実を任せ
様々な形に姿を変え 時に優しく 時に恐ろしく――

美しく恐ろしく 燃え上がる赤き出立ちは
烈火のごとく 全てを焼き尽くし――

それは全てを抱き それは全てを解し
何もかもを無に還す――

どこまでも自由で気まぐれで
どこから来るのか どこへ行くのか
ただただ優しく 頬を撫でる――

青々と多い繁る緑の小波
さわさわと語り掛け
癒しと安らぎを与え――

全てを染め上げる
入れば出られぬ 落ちれば上がれぬ
晦冥 常闇に錠を下ろさんがごとく――

初めに光あれ
永劫に続く闇を 切り裂くがごとく
全てのものを 射し照らす

          ああ            こ れ
  精霊達        を     表して
                         いた    ん     だ  …  …



 だ            れ          ?
                      そこにいるのは・・・

     
                               わ                 た    し・・・?



  小さな                 な     ん       で・・・

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Novel Editor by BS CGI Rental
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