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ノストイ〜帰還物語〜第4部 作者:紫苑璃苑

第23回   XIV-13

□□□

 「全く、君のおかげで獲物が逃げちゃったじゃないか。大した力もないくせに、よくも邪魔してくれたね」
「へっ。オレァ人の邪魔すんのが趣味なんでね。今後、気を付けろよ?」

 俺が混乱の最中に駆けつけると、その中心で二人の男が睨み合っていた。一人は白い肌に俺と同じ絳い瞳を持つ男。もう一人は――

「レーシェルミルド!!」

背後でラズロが仲間に指示を飛ばす。絳目の男と対峙していた彼が、ゆっくりとこちらを振り返った。
「おやおやこれは……。お久し振りでございますね、ディムロス様?」
「レーシェルミルド……貴様、今自分が何をしているのかわかっているのか!?」
「ええ、充分に把握していますよ」
「エウノミアルの座を失う事になるぞ」
何故だ。何故、彼はこのような事を……。
「まさか。僕は何も失いません」
「何を―――」
何を言っているんだ。人々を導き、人々の生活を守る職に就いている人物が―――
「いえ、簡単な事です。刻印が消えても隠し通せばいい。次のエウノミアルが現れたとしても、消せばいい」
「正気か」
「いたって正常ですよ?が、強いて言うのならば、そうですね……僕にこんな感情を芽生えさせたのは―――」
周囲で松明が踊る。戦闘の声が遠い。俺と彼だけが取り残されたかのように……
「お前だ」
「…………」
「お前が……お前さえいなければ、僕は頂点に立つ事ができた。孤児だった僕が!盗みを犯してまで僕に勉強させてくれた義兄(あに)を犠牲に、やっとエウノミアルになれたかと思ったら何だ。僕より年下の奴が僕より先にその座を勝ち取り、何の苦労もしないでのうのうと暮らしているじゃないか。卑怯な手を使って!!」
「卑怯な……?」
「聖なる石」
「どこで……それを……」
「いろんな文献を読んだんだ。そうしたら石の事が書かれていた。お前がそれを持っていることもな!僕はお前よりも優れている!剣術も磨いた!がむしゃらに勉強した!人々の幸せを願って、いつかお前を抜いてやろうと精一杯やったんだ。しかし、その努力はムダだった。いくら勉強しても、いくら腕を上げても、聖なる石を持つお前に勝つ事はできるはずがない!手が届きそうになると、お前はすぐに先に行ってしまう」
「……っ私は………私たちは…………」
「お前にはわからないだろう!何年も屈辱を受けてきた僕の気持ちなど、わかりはしないだろ!自分が住む島でありながらも、聞こえてくる名声は、全て貴様なのだ!僕を称える声は数える程しかない!」
「私は……」
ほとんど仕事で“力”は使っていない。しかし、今言ったとしても、彼に届く事はないだろう。
「お前が許せない!正当な方法で勝つ事のできない自分が憎い!!」
高い金属音が鳴り響く。俺の目の前に、たくましい背中があった。
「おいおいおい!何ボーっとしてんだよ!それでも俺達の血ィ引いてんのか!?」
「お前は……?」
俺と同じ絳目を持つ男だ。
「オルコンだ。お前、リーズの一族だろ?こいつ、どうするんだ?」
「同属……?」
「モグラ君?僕の邪魔をしないでくれないかな。そんなに死にたいのかい?」
聞いた事のない冷たい声が、オルコンを押し返す。
「誰がモグラだ?この根暗長髪!さっき邪魔すんのが趣味だって言っただろうが!てめぇこそビビってんじゃねぇのか!?」
子供の喧嘩じゃないか、これでは……。
「悪いけど、君と話している暇はないんだ。さっさと―――」
「待て」
「何だよリーズ」
「ディムロスだ。彼は、私に任せてくれ。雑魚では不満だろうが、手を貸してくれないだろうか」
「ちっ、しゃーねぇな」
オルコンが大剣を担いで離れる。私の知らない顔が、面を上げる。
「貴方は……」
「僕は、お前を殺してエウノミアルの頂点に立つ」
「……本気、なんだな……」
どんな怪我よりも、酷い痛みを感じた。








 〜久々!!〜

  お帰りディムロス!
  出しちゃいましたよ彼。自分が気に入っているから(殴)
  それもあり、話しの展開にどうしても必要だったんで・・・。もやもやしたままでは終われませんから!いろいろとね?何についてかはご想像を働かせてください。次回まで。

  補足として、どうしてレーミルがここに来ると突き止められたかと言うと・・・
  ディムロスの家でセリナとナギがレーミルの話をしましたよね?その情報から、エウノミアルの“レーシェルミルド”という人物に似ていると思った訳ですよ。しかも、セリナたちのワグナー・ケイを狙っているという。(本来、エウノミアルは人々の代表として様々な仕事をしている訳で、犯罪を犯すことは断じて許されないんです。犯罪者になると、エウノミアルの証である刻印が消えてフツーの人になり、処罰を受けることになります。)
  レーミルが“レーシェルミルド”だという断言はできないので、密かに彼を見張らせたところ、何かを追って暗黒の島へ向かったという情報が入りました。嫌な予感がしたので、キーリスのラズロにも応援を頼み、今に至る・・・って感じです。

  こんな長い補足を入れなくてもいいような文章を作りたかった・・・。今の技術ではこれが限界です。申し訳ない。ボキャブラリーも少ないんでね。もっとがんばれたらいいなぁ・・・。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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