オルコンの家を出て、勘を頼りに穴の外を目指すが、また迷ってしまった。 しかもその間に地下都市の住人に姿を見られてしまい、また走り回るハメになった。 「もう!出口はどこなの!?」 ナギが苛立ってる。方向がわからないし、迷路のように入り組んでいる道だから仕方がない。んー……でも……
「おかしいよ」
「何がおかしいの?また、ラルクさんの時のように道から出られないような細工でもしてあるって言うの?」 「そうじゃなくて……。私たち、正しい事してるんだよ?この世界の人達を助けようとしているのに、どうして逃げなきゃいけないの?」 「それは……言いたい事はわかるけど、現実を見てよセリナ。あの人達が私たちの話を聞いてくれると思うの?ここの人達にとって、闇の精霊の存在は絶対だわ」 「でも、ディムロスの親戚でしょ?きっとわかってくれるよ」 「もう…・・・本っ当、言い出したら聞かないのね」 「うん、ごめん。わたし独りでも大丈夫だから、ナギは隠れてて」 「お断りします。私はあなたと一緒に行くの。たとえ、何が起ころうと、ね?」 「……ありがと」 すごく嬉しくて、申し訳なくて、わたしは彼女に抱きついた。
通路の隅に並んで座っていると、すぐに町人に見つかった。 「なんだ?諦めたのか?」 今まで必死になって逃げていた相手が、こうもあっさり捕まるとは思っていなかったのだろう。それもそうだ、こちらの意図を知らないのだから。 「長に会わせて」 男の一人を見上げて言うと、彼は当惑しながらも“始めからそのつもりだ”と言って、私たちを後ろ手に縛り上げた。
長は町の中心、五角柱の塔の前に佇(たたず)んでいた。さすがは長とだけあって、威厳がある。知識の高さも彼の方が上だ。けれども、全く勝算がないわけではない。 「さんざん逃げ回っていたくせに、いったいどういった心変わりかな?」 「うん。逃げても意味がないって思ってね。貴方と―――って言うか、町の人全員と話したいんだけど、いいかな?」 「話?命乞いならば無駄じゃ。我らが神に背き、あまつさえ神の所有物を盗もうとした族(やから)だ。たとい女子供でも容赦はせぬ」 「命乞いに聞こえるかもしれないけど、わたしが―――」 「私たちは、あなた方に理解していただきたいのです」 ナギが突然割り込んで先を継いだ。本当に、どこまでも付いて来るみたい。 「理解じゃと?」 「ええ。今、地上は様々な異常現象に見舞われています。私たちはその異常を止めるために旅をしているのです」 「ハッ!お前達のような子供に何ができると言うんだ?」 私たちを連れて来た男の人が嘲る。まあ、普通はそう思うよね。 「けれども現に、私たちは五つのワグナー・ケイを集めた。ケイを全部集めれば、世界の崩壊は防げるんだ!あなた達がケイを渡してくれなかったら、この地下都市にも異常が訪れる。そうなる前に私たちは全てのケイを集めたいの。だから、協力してくれない?」 「世界の崩壊だと!?ふざけるのも大概(たいがい)にしろ!!お前達の方が禍の元なんじゃないか!?お前達が消えれば異常も止まるんじゃないのか!?」 そうだ、そうだと賛成の声が上がる。それだけに留まらず、刑を執行しろだとか、生きて帰すなとか・・・・・・。ちょっとどころか、かなりヤバイ。 「ちょ、ちょっと待って下さい!どうしてそうなるのですか!?」
『外には外の、中には中の考え方がある』
どこからか、ハーディスの声がした。 「ハーディ―――」 「連れてゆけ!裁きを下すのじゃ!」 いるんなら助けてと言おうとしたのに、私たちは虚しく引き立てられた。
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