■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

ノストイ〜帰還物語〜第4部 作者:紫苑璃苑

第15回   XIV-5

 蛇のような道だ。
 光源もないのに、同じ暗さで周囲の影が動く。
 断続的に続く柱。
 寸分の狂いもなく開けられている間隔。
 足裏に伝わる、ゴツゴツとした岩肌……。
 私たちは周りの闇に呑み込まれないように、強く手を繋いで進んだ。
 指から、掌から互いの温もりが伝わる。たったそれだけの事でも、恐怖や不安が緩和される。
 人工的な光に照らされた、地下の街がかなり細かいところまで見えるようになってきた。
 大きな町だ。
 お椀型に窪んだ地面に沿い、中央に向かってキノコのごとく家が生えている。あれじゃあ、家が傾いてて住めないと思うんだけど……。
 街の中心には高い五角柱の変った塔があった。五面全てに時計があり、針が今の時刻を指している――が、
「何?あれ」
文字盤に数字はなく、かわりに十二時の所に太陽が、六時の所に月のマークが描かれていた。今針は、太陽と月の、丁度真ん中をさしている。
「変った塔ね」
「うん」
けれども、ここの人達にとってはこれが普通なんだ。つくづく常識とは何なのか疑いたくなる。
 さらに進んで、やっと街の入り口に着くことができた。―――で、すぐさま第一町人発見!
「あのー」
「――!?何だお前達はっ!?」
一目見て、何故だか拒否られた。素早く後退りして、ジロジロ見られる。
「……?うわぁ〜、ディムロスがいっぱいだぁ」
第一町人の騒ぎを聞きつけて、他の人達が集まってきた。彼らは皆、ディムロスと同じように肌が白く、絳い瞳を持っていた。
「お前達は何者だ?」
「肌の色が違うぞ」
「髪も。見て、あんなに闇色」
「外の奴らじゃないのか?」
「まさか。今までここに来た者はいないわ」



「じゃが、リーズ家の者は地上へ向かった」



 老人特有の渋い声に、辺りが静まった。一人の青年に付き添われて、杖を持ったおじいさんが群集の中から姿を現す。
「リーズ家って……あのリーズ?」
「知っておるのか」
「ええ。あなた方と同じ絳い目をした金髪の方です」
群集の影がどよめいた。
「金髪絳眼はリーズ家の証」
「奴らだ」
「本当に外へ出たのか」
「恐ろしい。罰当たりな」
「バチ当たり?どうして?」
「掟じゃ」
薄暗いためか、町人が一つの塊に見える。モゾモゾと動いて、今にも襲い掛かってきそうな。
「奴らは掟を破った」
「我らが神への侮辱よ!」
「神?」
「そう、我らが神“ハーディス”様だ。神は我々に闇と安息を与えてくださった」
“ハーディス様”?この島の名前と同じ……微妙に違うか?この島には闇の精霊がいる訳だから、彼のことかな?
「その神にお会いになった事はあるのですか?」
「あるとも!!」
何人もの人が力強く頷いた。
「神は時折我々にお顔を拝見させて下さる。そして―――おお!!」
驚きと敬意のさざ波が沸き起こった。人々が次々に跪(ひざまず)いていく。
「あ」
肩越しに振り返ると、闇の精霊が相変わらずの無表情で立っていた。
「ハーディス様!ハーディス様、どうか我らをお導き下さい!この子らは地上から侵入した様子。我々には判断が付きかねます。ご指示を下され」
長老っぽいおじいさんが代表してお伺いを立てる。なんだか、リーズ家の人達がここから抜け出した理由(わけ)がわかる気がする。ディムロスの性格が遺伝的なものだとしたら、こんな所、すぐに出たがるはずだ。
「この子供らは……」
崇められる精霊は、口をほとんど動かさずに言葉を発した。町人は一言も聞き漏らすまいと顔を上げ、彼に注目していた。
「アルケモロスとその見届け人。我がワグナー・ケイをとりに来た」
「ルイラート・ケイをですか!?」
驚きと怒りの波が立った。チクチクと、痛い視線が突き刺さる。
「後はお前達に任せる」
言うだけ言ってすぅっと、闇の中へ消えてしまった。途端に、ザッと立ち上がった薄暗がりの塊は、ジリジリと迫る。
「我らが神の所有物を奪いに来たのか!?」
「えっと……」
「私たちは訳あってケイを譲ってもらいに来ました。けれども、決して奪いに来た訳ではありません!!」






「捕らえろ!!」







「「ええ!?」」












 〜そして次回へと続く〜
  てな感じです
  もうすぐクリスマスですね
  新年も近付いてきましたね
  休みも近付いてきましたね



  休み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




                             ・・・・・・・・・・・たい、なー・・・・・・・・・・・・(遠い目)

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections