蛇のような道だ。 光源もないのに、同じ暗さで周囲の影が動く。 断続的に続く柱。 寸分の狂いもなく開けられている間隔。 足裏に伝わる、ゴツゴツとした岩肌……。 私たちは周りの闇に呑み込まれないように、強く手を繋いで進んだ。 指から、掌から互いの温もりが伝わる。たったそれだけの事でも、恐怖や不安が緩和される。 人工的な光に照らされた、地下の街がかなり細かいところまで見えるようになってきた。 大きな町だ。 お椀型に窪んだ地面に沿い、中央に向かってキノコのごとく家が生えている。あれじゃあ、家が傾いてて住めないと思うんだけど……。 街の中心には高い五角柱の変った塔があった。五面全てに時計があり、針が今の時刻を指している――が、 「何?あれ」 文字盤に数字はなく、かわりに十二時の所に太陽が、六時の所に月のマークが描かれていた。今針は、太陽と月の、丁度真ん中をさしている。 「変った塔ね」 「うん」 けれども、ここの人達にとってはこれが普通なんだ。つくづく常識とは何なのか疑いたくなる。 さらに進んで、やっと街の入り口に着くことができた。―――で、すぐさま第一町人発見! 「あのー」 「――!?何だお前達はっ!?」 一目見て、何故だか拒否られた。素早く後退りして、ジロジロ見られる。 「……?うわぁ〜、ディムロスがいっぱいだぁ」 第一町人の騒ぎを聞きつけて、他の人達が集まってきた。彼らは皆、ディムロスと同じように肌が白く、絳い瞳を持っていた。 「お前達は何者だ?」 「肌の色が違うぞ」 「髪も。見て、あんなに闇色」 「外の奴らじゃないのか?」 「まさか。今までここに来た者はいないわ」
「じゃが、リーズ家の者は地上へ向かった」
老人特有の渋い声に、辺りが静まった。一人の青年に付き添われて、杖を持ったおじいさんが群集の中から姿を現す。 「リーズ家って……あのリーズ?」 「知っておるのか」 「ええ。あなた方と同じ絳い目をした金髪の方です」 群集の影がどよめいた。 「金髪絳眼はリーズ家の証」 「奴らだ」 「本当に外へ出たのか」 「恐ろしい。罰当たりな」 「バチ当たり?どうして?」 「掟じゃ」 薄暗いためか、町人が一つの塊に見える。モゾモゾと動いて、今にも襲い掛かってきそうな。 「奴らは掟を破った」 「我らが神への侮辱よ!」 「神?」 「そう、我らが神“ハーディス”様だ。神は我々に闇と安息を与えてくださった」 “ハーディス様”?この島の名前と同じ……微妙に違うか?この島には闇の精霊がいる訳だから、彼のことかな? 「その神にお会いになった事はあるのですか?」 「あるとも!!」 何人もの人が力強く頷いた。 「神は時折我々にお顔を拝見させて下さる。そして―――おお!!」 驚きと敬意のさざ波が沸き起こった。人々が次々に跪(ひざまず)いていく。 「あ」 肩越しに振り返ると、闇の精霊が相変わらずの無表情で立っていた。 「ハーディス様!ハーディス様、どうか我らをお導き下さい!この子らは地上から侵入した様子。我々には判断が付きかねます。ご指示を下され」 長老っぽいおじいさんが代表してお伺いを立てる。なんだか、リーズ家の人達がここから抜け出した理由(わけ)がわかる気がする。ディムロスの性格が遺伝的なものだとしたら、こんな所、すぐに出たがるはずだ。 「この子供らは……」 崇められる精霊は、口をほとんど動かさずに言葉を発した。町人は一言も聞き漏らすまいと顔を上げ、彼に注目していた。 「アルケモロスとその見届け人。我がワグナー・ケイをとりに来た」 「ルイラート・ケイをですか!?」 驚きと怒りの波が立った。チクチクと、痛い視線が突き刺さる。 「後はお前達に任せる」 言うだけ言ってすぅっと、闇の中へ消えてしまった。途端に、ザッと立ち上がった薄暗がりの塊は、ジリジリと迫る。 「我らが神の所有物を奪いに来たのか!?」 「えっと……」 「私たちは訳あってケイを譲ってもらいに来ました。けれども、決して奪いに来た訳ではありません!!」
「捕らえろ!!」
「「ええ!?」」
〜そして次回へと続く〜 てな感じです もうすぐクリスマスですね 新年も近付いてきましたね 休みも近付いてきましたね
休み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・たい、なー・・・・・・・・・・・・(遠い目)
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