!注意!
ノストイの番外編です。 世界観は変わっていませんが、セリナがあちらの世界の住人という設定になっております。 言葉も、本来英語は使わずにいたのですが、面倒なのでフツーに使っています。(別の世界なのに) それでもオッケー!パラレルチックどーんと来いやー!!という、心の広い方はどうぞお進みください。
「セリナ〜?早く起きて。朝ご飯冷めてしまうわよ」 「ん〜……」 今日も双子の姉、ナギに起こされて穏やかな一日が始まった。 両親は研究者で、どこか遠い島で働いてていつも忙しい。だから、私たちは父さんの実家でもあるエナおばあちゃんの家で暮らしてる。エナおばあちゃんはおっとりしてて優しいから、大好き。ナギも、(時々恐いけど)しっかりしてるから頼れる存在だ。 「今日は子供達の所に行くのかぃ?」 「ええ。お昼、作っていくわね」 今日は今から、隣町の従兄弟やら近所子供達のお勉強会だ。って言うか、子守り。お金はもらえるからいいんだけど………。 「クロスケが来たー!!!」 「怪物だー!みんな逃げろー!!」 「うるさい!お昼作ってやんないよ!!」 これだからガキンチョは嫌だ。黒い髪の毛なんてそうないから、散々色々言われる。わたしは逃げ回る子供達を捕まえて、一緒に草原を転げ回った。うん、こういうのは悪くない。 ナギはそんな私たちを暖かく見守って、時々こわーい笑顔で叱る。ホント、双子なのになんでこんなに違うんだろ?
午前は紋章の書き方や計算を教えて、ご飯を食べ終わったら、広場へお散歩。うん、いい天気。 って………あれ?広場の林から煙が昇ってる。火事かな? 「何かしら?」 「行ってみる?―――ティワ、みんなをお願いね。ここで待ってて」 「えー。俺も行きたいー!」 「後でスダコあげるから」 「大船に乗ったつもりで任せとけ!」 スダコ好きなティワを言いくるめるのは楽なんだけどなー。 わたしはナギと二人で、煙の上がる林へ急いだ。もし火事なら、火消しを呼ばなきゃ。
「―――――?」 わらわらと、林から人が逃げてくる。しかも、みんな同じような白衣を着てる。 「科学技術研究所の人ね」 「白衣の印、ラービニのだったね………」 私たちはイヤーな予感がして、顔を見合わせた。何でかって?それは――― 「げーほげほっ!うぇっほ!――お、おい!何してやがる!!ちゃんと記録してるんだろうな!?」 ああ………イヤなだみ声が聞こえる。私たちの予想は当たったみたいだ。 いろんな色の煙の中から、恰幅のいいオッサンが出てきた。ラービニの科学技術研究所のユーン・ウィーゼルだ。 「なんだぁ?ガキ共。研究の邪魔だ!あっちいけ!」 「またあなたですか!いい加減、騒ぎを起こさないで下さい!」 「なんだー?この天才様に楯突くのか!?」 「まー、確かに騒動起こしの天才だよね」 「ぬぁにぃ!?いい度胸だなぁ、小娘ぇ!!」 ユーンは地団駄を踏んで、背中から、入るはずのない大きさのバズーカを取り出した。それを私たちに向けて、 「そーんな生意気なガキどもには、俺様の発明品、モクリン三号をお見舞いしてやるぅ!」 げげっ!もしかして、この騒ぎを作り出した機械かも! 逃げなきゃ!私はナギの腕をつかんでユーンに背中を向けた。 「なっなんだ貴様わ!!」 ユーンの悲鳴に、走り出していた足を止めて振り向く。
「あ………」
綺麗だなって、思った。 高い金属音と一緒に、ユーンが構えていたバズーカが火花を散らして両断された。深い緑のマントがふわりと落ちる。
「またお前か」
カチンと、バズーカを真っ二つにした剣を鞘に納めたその人が立ち上がった。そこまで背は高くないけど、すらっとした人だ。マントと同じ色の帽子を被ってる。その下から覗く髪の毛は綺麗な金色だ。 「んん〜?………あっ!お前、リーズのガキか!」 「ガキとは失礼な。18にもなれば立派な大人だろう」 またギャーギャー騒ぎ出したユーンを見事に無視したその人は、呆然とする私たちの方へ来る。 「怪我はしてないか?災難だったな」 アカい眼だ。深くて、髪の色と合ってて綺麗だった。 「た、助けていただいてありがとうございます。あの、失礼ですが、もしかしてあなたは……ディムロス・リーズさん、ですか?」 「ああ、よくわかったな。変装してきたんだが……」 「金髪に赤目だと聞いておりますので」 「ああ、そうなのか。――今度からどちらか変えるか」 ボソリと呟くその人を見上げながら、わたしはナギの袖を引っ張った。 「知ってる人なの?」 「北のウィズダム島のエウノミアルよ。日刊に載っていたでしょう?」 「見てないもん」 エウノミアル……初めて見た。ラービニのあるディバイン大陸にはいないけど、それぞれの島に住んでる大賢人だ。彼らは自分の島とその周辺、そしてディバインの一部を治めている。治安維持、災害対策、土地の管理と、なんでもやってるらしい。 「ん?どうした、エウノミアルが珍しいか?君らと何も変わらないんだがな」 「でも、頭いいんでしょ?」 「セリナ!そんな口のききかたを――」 「気にするな、その方が気楽でいい。セリナって言うのか。よろしくな」 ディムロスは嬉しそうに笑って、わたしの頭をぐしゃぐしゃした。 「しかし―――」
「ちょーっと待てぃ!やいガキども!俺様を無視して話を進めるな!寂しいだろ!?」
あ。忘れてた。っていうか、“寂しい”って……おじさーん?お幾つですかー?
それは置いといて、ユーンは地団駄を踏みながらまた新しい発明品を取り出していた。今度は手のひらサイズのボール。何をするつもりだろ? 「そーんな人を無視する悪ガキどもには、俺様特製の発明品をお見舞いしてくれる!食らえ!ネバネーバ!!」 叫ぶと同時に、両手のそれを投げ付けてきた。顔面直撃コースだ。わかっていても体は反応してくれなくて―――
突然、旋風が巻き起こった。
わたしの目の前でピンクのボールが押し戻され―― 「ぬぁぁああ!!?」 ユーンの体にぶつかった。ピンクのネッバネバの物体に包まれたユーンは、かなりキモチワルイ……。 「何が!?いったい、何が起きたんだこんちくしょう!リーズ!!お前の仕業だなぁ!?」 私たちを庇うように前にいたディムロスは、楽しそうに口の端を吊り上げてる。 「さて、そろそろ牢番人が来る。話を聞かれるのは面倒だから、退散しようか」
「って、答えろやリ――――ィズ!!!!」
従兄弟の家に戻った私たちは、とりあえず助けてもらったのでディムロスにお茶を出した。実際は頼んでもないのについて来たんだけど。 子供達には彼がエウノミアルだという事は明かさなかった。伏せてくれと頼まれたからだ。あまり目立ちたくないらしい。 三人で世間話をしながら子供達の相手をしていると、ティワの両親が帰ってきたので、今日のバイト代をもらってバイバイした。 「―――で、なんでついて来るの?」 「今夜の宿、決めてないんだ」 ディムロスは当然のように私の隣をついて来ていた 「まあ!では、よろしければ私達の家に――」 「待ってよナギ!そんな、急に………」 「あら、いいじゃない。人数の多い方が楽しいわ」 「でも、今日夕飯当番わたしだよ!?」 「それは楽しみだな」 ―――と、言う訳で結局押し切られて泊める事になった。
「お会いできて光栄ですわぁ。どうぞ、ゆっくりしていって下さいねぇ」 「こちらこそ。急な申し出を受け入れて下さり、ありがとうございます」 エナおばあちゃんも彼が気に入った様子だ。ニコニコ笑いジワを作っている。確かに顔は良いけど、中身はわからないじゃない。 「お部屋へ案内します。こちらへどうぞ」 空き部屋を片付けていたナギが戻ってきた。わたしは夕飯の支度に取り掛かった。作っている所を見られないだけましだ。 わたしはナギに文句を言われない内に作ってしまおうと、袖をぐいっとたくし上げた。
「恥ずかしがる事ないじゃないか」
夕飯は大不評。ただし、ディムロスだけは普通に食べてた。作った本人でさえもあんまり食べれなかったのに……。 「もしかして、味覚音痴?っていうか何でここにいるの」 「嫌いなものの味はわかる。いてはいけないか?」 夕飯の後、やっぱり断りなくついて来た。しかもわたしの部屋に。しかもちゃっかりベッドに居座って。 「お喋りしたいなら残ってればよかったのに。ナギもおばあちゃんもいるんだし」 「君とはちゃんと話していないから。それに、敬語はイヤなんだ」 「エウノミアルなんでしょ?聞き慣れてるんじゃないの?」 「だからさ」 ふうんと返事して、窓から見える塔――タイレイム・イザーを眺める。今日もてっぺんの球体はきれいに輝いていた。明日も晴れたらあっちに回ってみようかな。 「明日は何か予定があるのか?」 読心術でも心得ているの?ってぐらい良いタイミングだ。わたしはそっちを見ずに答える。 「予定は未定」 「一緒に昼食をどうだ?うまい店を聞いたんだ。無論、おごるよ」 「うーん………」 おごりかぁ。捨てがたいお誘いだ。どうしよう? 「何て言うお店?」 「×××。リドゥルという島だ」
―――ガタンッ
思わず派手な音を立てて振り返った。ディバインから遥か北西に位置する島だ。 「それって……お昼を食べに行くだけの距離じゃないでしょ!」 「それもそうだな。なら一双のこと、仕事の手伝いをしながら世界を回ってみないか?」 「………旅行?」 「いや、だから俺の仕事の手伝い」 ええっと?どういう事でしょう?食事に誘われたはずなのに、どーしてお手伝い?しかも、エウノミアルの……? 「あ―……説明するとだな、エウノミアルの仕事は幅広い。しかも素早い対応が必要だ。そこで、我々は各地に協力者を置いて情報収集、または仕事を手伝ってもらっている。で、他のエウノミアルと違って俺は自分で協力者を選んでいるんだ。ここまでは良いか?」 「う、ん」 「今回俺は担当ではないが、視察もかねてこの町に来た。そこで君達に会った。十代の協力者はまだいない。大人達に聞き出せない情報の引き出し、行動が君にならできると思ったんだ。だから、俺の仕事を手伝ってほしい」 「えっと……理解はできたけど、急に言われても、ねぇ?」 「もちろん、今すぐにという訳ではない。俺が帰る時までに決めてくれればいい」
―――数日後…… 「うわー!キレー!!」 ナギとエナおばあちゃんは反対どころか大賛成で、半ば強制的にディムロスの協力者にさせられてしまった。しかも、ディムロスに返事をしたのもこの二人。私は何も言ってない。せめてナギも一緒に………と思ったら、エナおばあちゃんを独りにしておけないからと、あっさらり断られた。
―――で、今にいたるって訳。
ちなみに今は航海中。船に乗ったのなんて小さい頃以来だから、看板で呑気にはしゃいでた。
透き通った深いブルー 空は晴天 風も心地いい。
「晴れてよかった」 ディムロスも手すりに寄りかかり、嬉しそうに目を細める。そして、どこからか調達してきた飲み物を手渡された。わたしはありがたく受け取って……… 「って、その髪……どうしたの?」 思わず二度見した。彼の頭は綺麗な金髪から茶髪に変わっていた。 「ん?あぁ、作ってもらったんだ。カツラだよ。“着脱が楽でずれにくい!”が、売りらしい。セリナの分も作らせようか?」 「えっ……い、いいよ。そんなのいつ使うの」 「変装には便利なんだがな」 「………趣味?」 「いや……でも、おもしろいと思わないか?別人になれるんだぞ?」 「うーん………」 見た目を変えても、自分は自分なんだから別人になる事はできないと思うんだけど……。ま、いっか。 そんな感じで船でさらに数日後の早朝、ウィズダムに着いた。リドゥルには行かないの?って聞いたら、予定変更と返ってきた。 ウィズダムは寒い。ラービニは今春で、昼間は汗ばむ陽気だ。反対にここは年中寒い。一年の3/1は雪が降っているほど。現に今もはらはら白が舞っていた。
港に降り立ち、すぐに馬車が来た。先に連絡しておいたらしい。なんでも、港からディムロスの家までは島の端から端へ移動するようなものだから、大変なそうな。馬車で丸一日、徒歩で3・4日かかる。たから、わたしのお尻が痛くなったのも当然の結果って訳。
夜中に彼の家に着いた。もう疲れ果てていて、家の大きさだとか、内装だとかを見ている余裕はなかった。たから、部屋に案内されてそのまま即行、即熟睡。わたしは深い深い眠りについた。
〜えーっと・・・〜
一ヶ月ちょいぶりの更新です。遅くなって申し訳ない。 今回、自分なんかと交流して下さっている桧頼秋榎様からのリクエストにお答えしまして、ノストイの番外編を書かせて頂いているしだいです。 しかも、番外編の癖にまだ続きます。 ・・・・・・ ・・・・・・・・・ ま、また次回もよろしく〜(汗
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