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俺の説得のおかげでチョー無駄な時間を省けれた俺達は、もしもの時のために町に残ったルレイと別れて、町の裏手にある森に分け入った。そこは、取り逃がした《深き者達》が向かった方向にあって、見るからにアヤシーィ雰囲気だった。 森の入り口には、警官隊が使う立ち入り禁止の黄色いテープが木と木を絡めるように張ってある。んで、月明かりで見える地面に打たれた杭には、 「“自殺するならこちらへ”って・・・おいおい」 『こっちには“早まるな”とあるのぅ』 頭の上に陣取ってるフェイが、隣の看板を指す。ちょっとずつ言葉を変えていろいろ書いてある見てーだ。ぜーんぶ真っ赤な字で。 「町の奴等さ、ここが危ないってわかってるって事は、《深き者達》がいるって事も知ってんだよな?なんで皆で潰しにいかねぇんだ?アハリアハルの支部もあるのに」 『一般人にそんなことはできぬじゃろうが!それに、前ここにいたアストラは態度が悪かったらしいから、それ以来担当者は受け入れないのじゃと言っておっただろうが』 「ふーん」 『ルレイが話してたじゃろ!まったく、いっつも人の話を聞いておらんのう』 「ぅるせーな!難しい話は頭に入んねーんだよ!!」 『どこが難しい話じゃ!あー!これだから単細胞は嫌なんじゃ!!』 「どぁーれが単細胞だ!?バカだぁ!?」 『おお?お前の事だとよぅわかったのう。少しは脳のシワが増えたか?』 「んだとー!?不思議生物に言われたかねーよ!!」 『誰が・・・やめじゃ。ルレイが居らぬのだから、言い争っていては時間がもったいない』 「逃げやがって・・・(−。−;)」 『ぶつぶつ言っとらんでさっさと入らんか!!』 「へいへーい(―“―;)」
森の中は意外と明るかった。誰かが手入れしてるみてーに、いい感じな感覚で木が生えてる。 (音が少ねぇな) 明け方近くっていうのもあるだろうけど、不思議なくらい静かでちょいと気味悪ぃ。 『さぁて、どの辺りにおるかのぅ。意外と広いようじゃし、のぅ?』 「なーんで俺を見るんだよ。知らねぇよ、そんなの」 『勘で探し出すとぬかしおったのは何処のどいつじゃ!!』 「まずは匂いからだろ!?嗅ぎ当てろよ。ここ掘れニャンニャンって!!」 『やるかボケ!!』 (使えねぇ奴!) (脳ミソ軽量型の大馬鹿者がっ!!) 「『ケッ(―“―)』
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(あの二人・・・無駄な言い争いで時間を潰していなければいいが・・・) 一人町に留まった私は、懸念を募らせていた。ホムラとフェイは絶えず喧嘩をしている。その割りに、意見が合うときはピッタリと意気投合するのだから不思議で仕方がない。 ベッドの下で思考を巡らせていると、もうすっかり日の昇った町中に、似つかわしくない悲鳴が飛び交った。 (来たか・・・) 私は仕方なく窓から飛び出し、 「何をしているんだあいつらは」 溜息と共に呟いた。
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「あ!見ろよフェイ。お前がちんたらやってっから、狩り部隊が行っちまったじゃねぇか!」 『ワシのせいにするな!それよりも、さっさと奴らが来た方へ行け!』 「え?あいつら追わねぇの?」 『何のために二手に別れた!ワシらはワシらのすべき事をするのじゃ!』 「わかったよ!」 俺は全速力で、でっけぇ蝶の群れが飛んできた方向へ走った。おかげで、5分もたたねぇ内にそいつらの巣を見つけることができた。そーっと物陰から中の様子を見る。思ったより静かだ。きっと、ご馳走の帰りをウズウズしながら待ってるんだろう。 「どーすんだ?」 周りに何の気配もないのを確認して、偉そうな司令塔に聞く。 『薪(たきぎ)を集めて来い。油のたっぷりのったやつじゃ』 「え?ここで野宿?」 『馬鹿者が!炙り出すんじゃよ、やつらを!』 「おお!焼き殺すんだな!?・・・まっずそー(; ̄д ̄)」 『全て食につなげるでないわ単細胞!一匹なりとも逃がすでないぞ!』 「了解!(`へ´)ゝ」
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幸い、朝早かったために住民の避難はすぐに完了した。閑散とした通りには私の姿しかない。頭上では数十匹のティエッフェが旋回している。そのうちの一匹が、逃げ遅れた少女を六本の脚で掴んでいた。 (どうやってこちらの攻撃を届かせるか・・・) 周辺を見渡し、使えそうなものを探す。壁を走るようによじ登る芸当を持つのはホムラだけだ。 と、いい具合に置かれている二輪製の荷押し車を発見した。瞬時に建物との距離を測り、ティエッフェに背を向けた。走る速度を上げる背後で、羽ばたきの音を耳にする。袖からタガーを取り出し、荷車の上に吊られていた塊を落とす。無論、シーソーのごとく反対側が跳ね上がった。すでに足を掛けていた私は、反動で持ち上がり、さらに板が上がりきったところで強く足場を蹴る。二度の跳躍を得て高く舞い上がり、上空にいるティエッフェの更に上から仕込み杖を打ち下ろした。 少女を掴んでいた一体は、半身に分けられ地に落ちる。ギリギリのところで少女を掴み、安全な建物の中へ運んだ。
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『用意はよいか?』 「いつでもOK!(+・`ω・´)b☆」 ありったけの乾いて油ののった薪を集めてきた俺は、洞窟ん中にいる《深き者達》にバレないように、なるべく奥の方に敷き詰めてきた。んで、導線代わりに酒を滲(し)み込ませたツタにライターを近づける。 「『3・2・1・ファイアー!!!\(`д´)/』」 ポンッと小さな爆発を起こした導線は、うねうねと這いながら洞窟の口に吸い込まれてく。 ジリジリ短くなる線。 ジリジリ狼煙(のろし)の上がるのを待つ俺ら。 ちょっとワルやってるみてーで楽しくね?これ。 そうこうしてる内に、薪に燃え移った火は、勢い付いて、大きくその体をくねらせ始めた。 「・・・・・まだかな?」 『そろそろ来ても良い頃だのう。構えておけ』 木の陰から抜け出して、腰に吊ってた愛刀を構えた俺は、もくもくケムリの出る洞窟に集中した。 『来るぞ!!』 フェイが叫ぶのが先か後か、バッサバッサ、ギーギー音を立てる《深き者達》が炎を突っ切って飛び出してきた。 「ぬおりゃぁぁぁあ!!」 記念すべき犠牲者第一号(?)を上段から叩き切って、持ち上げる反動で別の一体にも致命傷を与えた。俺の戦い方を見てルレイは“めちゃくちゃだ”って言うけど、そんな事ないだろ? ケムリで弱ってんのか、《深き者達》の動きは鈍くなってる。だから面白いぐらい簡単に切れた。けど、敵の数もだいぶ減って後もうチョイ!って時にあいつら逃げ出しやがった!! 「あっΣ(0д0;)!ちょ、まっ!?逃げんな!!」 俺は慌てて剣を振り回しながら追っかけた。
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